家族写真の仕事に、雑誌の撮影とは違ったやりがいを感じているという大野さん。その理由をうかがうと、家族全員で写真を撮る機会の少なさにあると教えてくれた。
「僕自身、子どもの頃に家族全員で撮影した写真というのは、1枚ぐらいしか知りません。現在撮影しているのは、子どもがいるご家族が多いのですが、子どもだけや、子どもと母親・父親だけという写真はあっても、一家そろって写真に収まることって、なかなかないそうです。そういう背景を考えると、カメラマンとして使命感にかられますね。
僕は、家族写真イコール、家族を笑顔にするものだと考えています。家族って、毎日一緒にいるだけに、色々なことがありますよね。でも、写真を撮る瞬間には、みんなが笑顔になる。みんながハッピーでいる、“本来の家族の姿”が残せるんです。撮影した写真は家族の象徴として、部屋に飾って欲しいですね。そうすることで、なにかあったときにも、『そうだ、うちはこんなに素敵な家族なんだ』って再確認できると思います」。
そのほか、「その時期にしかない家族の距離感や雰囲気を残す」ことも、家族写真を撮影する大きな意味と語ってくれた大野さん。加えて、日々顔を合わせている家族に対し、新鮮な発見ができることも、写真の面白さとか……。
「静止画にすることで、普段は見落としている瞬間を見つけることができると思います。ふとした表情だったり、光の加減によって見えてくる美しさだったり……。実際、『子どものこんな表情、はじめて見た!』という声をよく頂くんですよ。
僕は、撮影した写真をデータだけでなく、フォトブックにしてお渡ししています。そうすることで、ストーリーが生まれ、撮影時の雰囲気がフワッと立ち上ってくるんです。ご家族でたくさん写真を撮ったときには、データで保管するだけでなく、ぜひ、アルバムにして欲しいですね。アルバムのなかの登場人物として家族を見ると、日常とは違った側面が見えてくると思います。家族というチームのなかの、自分の立ち位置も、見つめ直すことができるはずです」。
家族写真の魅力は、でき上がった画像はもちろん、撮影中にもある。大野さんはいつも、「撮影した一日が、家族みんなの思い出になれば」と願っているそうだ。
「撮影中は、家族のなかにカメラマンが入り、撮影のための指示をする。そうすることで、今までになかったコミュニケーションが発生したり、化学変化が起こるんですよね。家のなかにはない、空気感が味わえると思います。
撮影の前後も、家族みんなで食事をしたりして、いい時間を過ごして欲しいですね。写真とともに、時間や思い出もみんなで共有し、撮影の一日を楽しんでみてください」。