“うすはりグラスのできるまで

  • Part1 誕生秘話
  • Part2 職人技

Part1 誕生秘話

今回のプレゼントは、熟練の職人技で通常のグラスの半分以下の薄さに仕上げた「うすはり」グラス。お酒の口当たりをよくするグラスとして、生産が追い付かないほど人気の品。その誕生秘話をうかがった。

隅田川とともに繁栄した墨田区、江東区のガラス工場

大正11年(1922年)、電球用ガラスの生産工場として創業した松徳硝子。江戸時代に誕生したガラス製法を継承した伝統工芸品「江戸硝子」にも認定されている。電球がマシンメイドに代わってからも職人の手仕事にこだわり、製造品をガラス器に移行。電球づくりで培った、ガラスを薄く吹く技術に磨きをかけて昭和30年頃に「一口ビールグラス」を誕生させた。

「親父の代に一口ビールグラスをつくり、一部の料亭などで愛用されていました。お酌をする女性がお客さんから『君も一杯どう?』と言われて、一口でビールを飲み干せる粋なサイズというのが狙いだったようです。主力商品としては一時期観光地で販売するおみやげや伝統工芸品をつくっていたのですが、自分がビールを飲みたいグラスをつくろうと考えたら、一口ビールのようなグラスだったんです」

ガラス工場

お話をうかがったのは、職人としての経験もある3代目の村松邦男さん。ご本人は開き直りから生まれたマニアックな商品というが、お酒好きによるお酒好きのためのグラス。派手さはないが、じわじわと世間の注目が集まっていった。
「展示会でも主力の工芸ガラスの中に、うすはり用のスペースを細々と確保して、1日10人くらいの人とこのグラスの話ができればいいと思っていたんです。でもバイヤーさんが、『これは?』とうすはりに目を留めてくれるようになって、デパートやセレクトショップに置いてくれるようになりました」

村松邦男さん インタビュー

その後、「冷蔵庫で冷やした350mlの缶ビールを2、3回でつぐと丁度よく入るグラス」や「一缶を夫婦二人で飲むときのサイズ」など、お酒好きの心をぐっとつかむバリエーションを増やしていった。日本の食卓に合うようにと、脚を取り除いたワイングラスも傑作。
「もともとは脚のついたワイングラスもつくっていたのですが“1年に1度の記念日に高級ワインを飲むグラス”ならいいけど、毎日気軽にワインを楽しむなら、脚を取ってしまおうと思いました」

現在は生産が追い付かないほどのため、これ以上種類を増やすことを考えていないというが、ビールから日本酒、ワイン、焼酎、ウィスキーまで、サイズ展開を含めてお酒を楽しむには十分すぎるラインナップが揃っている。ビールに関していえば、グラスが薄いほど味がよくわかるのだとか。3代目によると、第二・第三のビールもワンランクアップするというから、試さない手はない。 「あくまで主役は中身で、グラスはわき役。うちのグラスは、中身を入れたらもったいないというような飾るグラスではありません。仕事から帰って風呂に入り、ちびちびとやる。そういうときのためのグラスなんです」

大吟醸

[大吟醸]
日本酒のプロである酒屋や蔵元が多く愛用していることでも知られる“大吟醸”のグラス。ワインのテイスティンググラスに発想を得て開発したグラスで、ほどよく空気がまわることにより、吟醸酒の芳醇な香りと味を堪能できる。3代目も、日本酒にはこのグラスを愛用。

[紅白ワイングラス]
特製の木箱に入ったうすはりはギフトにも最適。なかでも、通常のワイングラスと薄く紅をさしたグラスの2色セットで紅白を表現した「葡萄酒器」は結婚式の引き出物に重宝されている。形は口元を絞ったボルドーと花のように広がりのあるブルゴーニュが揃う。

紅白ワイングラス
プレゼント・取材協力

松徳硝子株式会社

大正時代からガラスづくりが盛んな墨田区は錦糸町に工場を構える。うすはり以外にも東雅夫氏監修による『本所七不思議/怪談ぐい呑み』シリーズなど多くの作品を手掛けている。
http://www.stglass.co.jp/

うすはりグラス 酒道具
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