HAIR TOUCH YOU のばせば届く。

INTERVIEW

ヘアドネーションカットをサポートする⽅

「選択肢を増やすことで、少しでも人生を豊かに」日本初のショート・ボブ専門美容師 大野道寛の、ヘアドネーションカットへの向き合い方

フィーノが医療用ウィッグをとりまくすべての方をつなぐプログラム【HAIR TOUCH YOU のばせば届く。】。インタビューを通し、医療用ウィッグを必要とする方、髪を寄付する方、支援する方など、360°の方々の想いをお届けいたします。今回は、日本初のショート・ボブ専門美容師であり、ヘアドネーションカットも多数行ってきた大野道寛さんにインタビューを実施。“カウンセリングだけでも受けたい美容師”と評される大野さんに、なぜ彼がドネーションカットを始めたのか、ドネーションをする方に対してどのようなカウンセリングをされるのかをうかがいました。気持ち的にも見た目的にも大きな変化をもたらす「髪をバッサリ切る」という機会において、お客さまとどのように向き合われているのでしょうか?

誰でも気軽にできるヘアカットでつなぐ、笑顔のバトン

まず、ショート・ボブ専門美容師として活動されるようになったきっかけについて教えてください。また、どのような経緯でヘアドネーションカットを始められたのでしょうか?

会社勤めのトップスタイリスト〜店長時代は1日20人くらい、色々な髪型の方を対応していました。当時から僕はショートヘアのカットを得意としていたのですが、いろんな意味でロングヘアよりも難易度の高いカットだと感じていたのでショートヘアを希望される方にはもっと時間をかけてあげたいと思っていたんです。そんなとき、一日ずっとショートヘア希望のお客さまのみで予約が埋まった日があって。その日は、自分自身が研ぎ澄まされているような感覚があり、クオリティの高いものがご提供できていると感じました。そのことがきっかけとなって、これからはショートやボブに特化し、一人ひとりにじっくり時間をかけられたほうが自分にとっても良いのではないかと考え、今に至ります。

ヘアドネーションというワードは昔から耳にしていたのですが、調べ始めたきっかけは、柴咲コウさんのヘアドネーションがニュースになったタイミングです。そこで「こんな取り組みがあるなら、自分もやってみようかな」くらいの感覚で、個人でヘアドネーションの予約を受け付けるようになりました。すると、たくさんの方がヘアドネーションカットをしに僕のもとを訪れてくれるようになったんです。今では月に10名ほどしか新規のご予約を受け付けていないのですが、その中でも、ヘアドネーションをご希望される方の割合はすごく多いと思います。また、長い髪をショートヘアにしたいという方に対し、ヘアドネーションについて僕からやんわりとお伝えすることもありますね。もちろん強制するわけではないのですが、まだまだ知らない人もたくさんいると思うので、こうして少しずつでも広めていくことが大事だと思っています。

大野さんはご自身のYouTubeやSNSでもヘアドネーションについて度々発信されていますよね。発信しようと思った背景と、投稿に込める想いについて教えてください。

僕自身、ヘアドネーションはとても尊いものだと感じています。髪の長ささえあれば誰でも気軽にできるヘアカットで、笑顔のバトンがつながっていく。その素晴らしさがより多くの人に伝われば良いなと思っています。とはいえ自分にそこまで大きな影響力はないので、まずは自分の周りの人やフォロワーの方々にヘアドネーションを知ってもらえたらという気持ちで発信しています。一方で、芸能人の方のヘアドネーションなどをきっかけに、検索で僕のYouTubeやSNSに辿り着いてくれる方も多くいます。自分の発信がさまざまな人に広まっているのは、素直に嬉しいですね。

不安を解消し、ショートヘアの扉を開けることこそが役目

ヘアドネーションをするにあたり、髪型が大きく変わることや、今まで通っていた美容院と違うところでカットすることに不安を抱く人も多いと思います。ショート・ボブ専門美容師かつ、ドネーションカット経験も豊富な大野さんはその点についてご自身のお取り組みの中でどう対応されていますか?

実は、僕としては不安な想いを抱いて来店される方のほうが、カットはしやすいですね。お客さまが何を不安に思っているかキャッチできれば、あとはカウンセリングでその不安を解消して差し上げればいいだけなので。できる限りご本人のイメージに添えるようにするために、僕はLINE予約制にして、事前に今の髪型の写真を送ってもらい、必要そうな施術を予め伝えるようにしています。そうすることで、来店されてからの驚きも少ないですし、例えばかかる時間などもお伝えできることから安心してお越しいただけると思うんですよね。

「シルエットが綺麗」とか「見た目が可愛い」とかは当然のこととして、その先にある「気づき」みたいなものを提供していくのが僕の仕事だと思っています。ショートヘアの扉を開けてあげる、というイメージですね。「私、ショートヘアが似合うんだ」と気付くことで選択肢が増え、それだけでも少し人生が豊かになると思うんです。ヘアドネーションカットであっても、ご自身の何かが変わるきっかけになればいいなと思い、仕上がりや体験そのものに満足いただけるよう、お客さまとじっくり向き合っていくことを心がけています。

ヘアドネーションをより良い体験にしていただきたいというのは、私たちも強く願っていることなんです。フィーノでも、皆さんが楽しく髪を伸ばし、ヘアドネーションをしたい!って思っていただけるよう「オリジナルドネーションキット」というものを無料でお配りしています。

これは素晴らしい取り組みですね。やはり、郵送って少し面倒じゃないですか。僕の場合、郵送はお客さまにお任せしているので、切った髪をそのまま封筒に入れて、帰り道にポストに投函するだけというのはとても便利だと思います。あと、封筒に付いているスケールも良いですね。今までは業務用の固いメジャーで測っていたので、自分の指を切りそうになったこともあって(笑)。これが美容院に置いてあれば、ヘアドネーションに興味を持ってもらえる人も増えそうですよね。

想いが繋がっていく様子を可視化 - 発信する大切さ

おっしゃる通り、ヘアドネーションキットを美容院に置いていただくための働きかけも、少しずつですが始めています。ただ、ヘアドネーションカットを行っている美容院や美容師はまだまだ少ないと感じています。これについて、大野さんはどのように思われますか?

正直、業界構造的に難しい部分が大きいのかなとは思います。最初にお話ししましたが、僕も以前は一日に20人ほどの予約を受けていました。その時の僕の場合ですと、一人につき、カウンセリングに1分、カットに10分程度しか時間をかけられなかったんですよね。だから、ヘアドネーションカットを受け入れる余裕がなくなってしまう。人気の美容師さんは、それくらい予定が詰まっていることがほとんどだと思いますし、リアルな面としては、会社の売上ノルマなどを考えるとそういう予約システムにせざるを得ないという事情もあるのかなと。そういった現状を踏まえると、業界全体を変えていくのは大きなことですし、それぞれの考え方があるべきだとも思っているので、まずは自分が変わっていこうと考え、今のマンツーマンスタイルに落ち着いたという経緯もあります。だから、フィーノさんの取り組みが広がって行けば、業界も新たな気づきが少しずつ増えていくかもしれません。

貴重なご意見をいただき、ありがとうございます。私たちとしてもこの取り組みをさらに広めていきたいと考えているのですが、どのようなサポートや工夫があれば、ヘアドネーションをより多くの方に知っていただけると思われますか?

成人式や結婚式で髪を伸ばす方が多いと思うので、「バレンタイン=チョコを渡す」みたいな感じで「成人式・結婚式=終わったらヘアドネーションをする」というように、、イベントとヘアドネーションを紐づけることができれば理想的ですよね。コンテンツの具体的な内容はすぐには思いつきませんが、ヘアドネーションをした方、医療用ウィッグを受け取った方の想いがつながっていく様子を映像などで可視化できたら、より多くの人の心を動かすことができるのかなと思います。

カウンセリングを実演!「お客さまの気持ちに応えるため全力を尽くす」

「ショートヘアの扉を開けてあげる仕事」と話してくれた大野さん。ヘアドネーションカットを希望されるお客さまとどのようなコミュニケーションを取られているのか、実際にカウンセリングの様子を見せていただきました。

カウンセリング体験者:Aさん(30代)
現在の髪の長さ…ギリギリ胸あたり

Aさん:よろしくお願いします。ヘアドネーションをしたいのですが、髪が広がりやすいのが悩みで、現在3~4ヶ月に1回縮毛矯正をかけています。ショートヘアにすると髪の重みがなくなる分、余計に膨張してしまうのではないかと心配です。あとはエラが張っているのがコンプレックスで、短くしたときに顔が大きく見えてしまいそうで……。

大野さん:まず「広がりやすい」というお悩みですが、これはカットのほかに、毎日のセットでもしっかり抑えていくことが可能です。ショートヘアの場合はスタイリング剤をかなり多めにつけても違和感がないので、オイルなどで重みをつければタイトに収まってくれると思います。よりボリュームを抑えたいのであれば、引き続き縮毛矯正はかけていただいたほうが良いですね。ご存知だとは思いますが、縮毛矯正をしていてもヘアドネーションを受け入れてくれる先は多くありますので。

次に「顔が大きく見えてしまう」というお悩みについて。これは本当によく聞くお悩みなのですが、実はロングヘアのほうが輪郭はハッキリ出てしまうんですよね。ショートヘアは顔周りを髪が隠してくれるので、「小顔カット」というのは、実はショートヘアのほうが取り入れやすいんです。だから、ショートヘアにすることで今よりもずっと小顔に見せることが可能です。

Aさん:なるほど……。ちなみに、ヘアドネーションをできるようになるまで、あとどれくらいかかりそうですか? 希望は、アナウンサーの宮司愛海さんのようなスッキリしたボブヘアなのですが。

大野さん:ちょうどフィーノのドネーションキットがあるので、この定規で測ってみますね(笑)。ボブヘアご希望だとまだ長さが足りないので、あと5センチくらいは伸ばしたいですね。大体半年くらいでしょうか。ヘアドネーションをする際に注意してもらいたいのですが、希望の長さがある場合、その長さからぴったり31センチ伸ばせばいいわけではありません。一回ヘアドネーション用に髪をカットし、そこから形を整えるためにさらにカットしていく流れになるので、3~5センチ以上の余裕はほしいです。Aさんは宮司愛海さんのようなボブヘアをご希望されていますが、先ほどエラが気になると仰っていたので、顔周りはもう少し長めでカットしたほうが安心だと思います。となると、唇から顎の間くらいまで長さがあると良いので、ここから35~36センチ必要になるわけです。

Aさん:自分で測れるかな……。

大野さん:皆さん、髪の長さを測るとき、少し顔を傾けてしまうんですよね。そうすると、本来の長さを測ることができません。直立で、髪は真っ直ぐおろした状態のまま、できれば誰かに測ってもらうほうが良いと思います。

どうしてもヘアドネーション後の髪の長さが足りず、お客さまのご希望されている髪型にできない場合はどうされるのですか?

大野さん:もちろん切る前に判断できるので事前にお伝えするのですが、残念ながらヘアドネーションを諦めてしまう人も少なくないです。ただ、中には「それでもいいので、ヘアドネーションをしてください」と言ってくれる方もいます。だから僕もその気持ちに応えるため、イメージより短くなってしまうことの注意点について説明した上で、全力を尽くします。最初にイメージしていた髪型とは違うかもしれないけれど、鏡に映る自分が素敵であればばちゃんと喜んでいただけるので。「似合うと思っていなかった髪型が意外と似合っていた」というのも、嬉しい体験になると思いますし。

Aさんは大野さんのカウンセリングを受けられて、いかがでしたか?

Aさん:大野さんは、一つひとつの悩みについてしっかり解説をしてくれたので、自分でもショートヘアにした後のイメージが沸きましたし、不安が和らいでいく感覚がありました。初めてのヘアドネーション、初めてのショートヘアでも、大野さんになら安心してお任せできると思います。

大野さん:ありがとうございます!

誰かの未来の笑顔につながるヘアドネーションであってほしい

カウンセリングの際に、心がけていることや気をつけていることがあれば教えてください。

「ヘアスタイルを作る上で必要なこと以外はあまり聞かない」というのは、意識しているかもしれません。特にヘアドネーションの場合、数年分の特別な想いを背負っていらしている方も多いと思います。だからこそ、ヘアドネーションをしようと思った理由などについて、僕のほうから聞くべきではないのかなと。カットする上で必要なことはしっかり聞いて、あとはご本人から話してくださるのであれば耳を傾けるといったところでしょうか。

大切にしたいからこそのご配慮ですね。最後に、医療用ウィッグをサポートするためにヘアドネーションを検討している方に向けて、メッセージをお願いします。

ヘアドネーションカットをすると、髪を切った方には笑顔になっていただけますし、それを見た僕ら美容師も自然と笑顔になれる。そしてもちろん、医療用ウィッグを使用される方も笑顔になってくれると思います。「ヘアドネーションをしてみたいです」という、その一言が未来の誰かの笑顔を作ります。ぜひ、そんな笑顔のバトンをつないでいただけると嬉しいです。

大野 道寛MICHIHIRO OHNO

日本初のショート・ボブ専門美容師。表参道有名サロンで10年勤め、独立。新規客は【ショート・ボブ以外はお断り】のスペシャリスト。圧倒的経験数から生み出した、独自のカット技術と似合わせ理論は【乾かすだけで形になって褒められるショート・ボブ】と全国の顧客から評判がある。特筆すべきは【内巻き縮毛矯正】とショートカットを融合させた技術で、髪質のせいでショートヘアを諦めていた多くの方の夢を叶えている。

「fino ウィッグBank」について

フィーノの医療用ウィッグプログラム【HAIR TOUCH YOU のばせば届く。】の中のひとつの取り組みである「fino ウィッグBank」では、現在ヘアドネーションを募っており、31cm以上であればどのような髪の状態の方でも、また年齢や性別も問うことなくご参加いただけます。寄付いただいた髪については、NPO法人「全国福祉理美容師養成協会(ふくりび)」にサポートしていただき、医療用ウィッグの販売のみならず、レンタルウィッグや医療用ウィッグ製作技術のための講義用として寄贈するなど、髪の状態と、その時々のニーズに応じて最適な活用法にて無駄なく生かしていきます。

ヘアドネーションをご希望の⽅は
必ずfinoオリジナルドネーションキットを
お申込みください。

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