Back to Top

第2回 赤坂レストランカナユニ 横田誠 第1章47年前、おまえの父親と大喧嘩したんだ。

<店主前曰>

1966年はわたしが25歳で編集者になった年である。その同じ年にカナユニはオープンした。そのころカナユニみたいな洒落たレストランは、東京広しといえどほかにはなかった。一応赤坂だが、あたりには飲食店はカナユニしかなかった。カナユニはなぜこんなに長く繁盛しているのか。もちろん味は出色で店の雰囲気がヨーロッパ的であるが、なによりも、従業員たちのこころ籠もったサービスに理由がある。オープンしたとき、オーナー支配人の横田宏はまだ28歳だった。それがいまやわたしと同じ70代である。バーマンの武居永治もシェフの高嶋正もホール浅見も中野もみんなバリバリの若者だったが、いまでは髪の毛が真っ白になったり、少々太ったり、額が禿げあがったりしていい味をだしている。月日は冷酷に流れて行ったが、彼らのもてなしと味は47年間変わっていない。そんなカナユニにイケメンの若者が新人として入ってきた。2000年のことである。それが横田宏の息子の誠だ。誠はカナユニの遺伝子をちゃんと継いでもてなしに徹している。そう、誠もレストランの最高のソースは”もてなし”だということをよく心得ている。

シマジ 誠はいくつになったんだ。

横田 34歳になりました。

シマジ でもカナユニではまだ小僧だね。武居も浅見も年を取ったが、まだ元気に頑張っているからうれしいね。あっ、そうだ。ここにいらっしゃるトレードマークの帽子をかぶっているお方は、資生堂の正社員で、ヘア&メーキャップアーティストの計良宏文さんだ。計良さんは、資生堂の宣伝広告モデルのヘア・メークはもちろん、世界のスーパーモデルのヘアとメークを手がけている。ニューヨーク・コレクションでもパリコレでも東京コレクションでも大活躍している。資生堂は世界のコレクションのサポートもやっているんだよ。

計良 ケラと申します。今日はよろしくお願いします。

横田 こちらこそ、よろしくお願いいたします。

シマジ 計良さん、ます誠の顔の肌をチェックしてくださいませんか。

計良 はい、結果が出ました。Eでした。

横田 Eはいいんですか。

シマジ ここに出る男性はほとんどEだね。そうだ、武居、こっちにきて測定してもらったらどうだ。お前は好奇心の塊の男だから、さっきからやってもらいたい顔をしているじゃないか。

武居 はい、はい。シマジさんのいうことは何でも聞きますよ。

計良 結果がでました。武居さんはDですね。

シマジ 武居、凄いじゃないの。Dはなかなかのものだよ。おれだってDだからね。若い誠より肌はいいんだよ。

武居 Dですか。シマジさんと一緒ならぼくは本望です。

シマジ おれがここの店が好きなのは、シガーが吸えることなんだ。一本吸わせてくれ。

横田 どうぞ、どうぞ。

シマジ 誠はいままで何にも顔につけたことがないんだろう。

横田 生まれてこのかたありません。

シマジ そういうことを”肌断食”っていうんだよ。ここに並んでいるSHISEIDO MENを明日の朝からつけることが肝心だよ。そうすれば2,3ヶ月でDかCになると思う。この男性化粧品は世界的にスグレモノなんだ。お前のうるおいをなくした肌にたっぷり栄養を与えてくれるはずだ。

横田 こんなに種類があるんですか。これを全部使うんですか。

シマジ 当然だよ。まずこのクレンジングフォームで顔全面を丁寧に洗い流す。それからトーニングローションを手の平に気前よく500円玉くらい注ぎ、肌を叩くようにつける。そしたら アクティブコンセントレイティドセラムを2プッシュ、手の平に出してぬる。次はスキンエンパワリングクリームだ。これはパール粒くらいを中指で掬うように取り出して両手を合わせてこするように顔にぬりこむ。そして最後はアイスーザーだ。目の上下の周りにつけるのだが、目頭から目尻に向けて数回往復させてなじませる。片目につき小さなパール粒1個分が目安かな。計良さん、こんな説明でよろしいでしょうか。

計良 パーフェクトです。

横田 ぼく、覚えられるかな。

シマジ 誠、これはお前が毎晩お客様の前で作っているクレープシュゼットより簡単だよ。

横田 でもこれを明日の朝から使えるとなると、なんかワクワクしてきました。

シマジ 普通、男はほとんど自分の顔をみないものだ。だから気がついたときには手遅れで、汚い爺になった自分を発見して落胆する。SHISEIDO MENを愛用すると、じっくり自分とみつめ合う時間が出来る。鏡は冷酷に自分を裁いてくれる。そこが精神的にいいんだよ。

計良 この店は大人の雰囲気がありますね。

シマジ もう47年もやっているから歴史の集積が感じられるんでしょう。

横田 ぼくが生まれる前からカナユニはあったんです。

立木 当たり前だよ。誠はまだ卵子にもなっていないし、精子にもなっていない。カナユニをオープンして宏パパが店も順調に走り出しているし、そろそろ子供でも作ろうかな、と君は34年前に仕込まれたんだよ。

計良 じゃあ、シマジさんは47年間もカナユニに通っているんですか。

シマジ そういうことになりますね。

計良 47年前にここにきたきっかけは何ですか。

シマジ 話せば長くなるけど、若い人たちの人生勉強にもなることだから、告白しますと、横田宏とはいまではおれは無二の親友だけど、最初会ったとき大喧嘩したんだよ。週刊プレイボーイの新人だったおれは、当時、プレイボーイでならしていた江口司郎に可愛がられて、女性を口説く極意を伝授してもらっていた。それには場所が大切だ、ということで、江口先生がカナユニを紹介してくれた。ここはヨーロッパ風の大人の店だから、一流のフルボティの女性が好む。おれははじめてきたときから気に入った。とくにカウンターのなかにいた塚本さんという当時80歳くらいの名バーマンがいたんだ。その塚本さんにおれは可愛がられた。話を聞けば、塚本さんは1920年代、ローリング・トエンティの時代にシカゴのアル・カポネの闇酒場で働いていたというではないか。おれはすぐ編集会議にテーマとして出して、早速取材して原稿を書いた。もともと塚本さんは日本郵船の外国航路のバーマンでもあったんだ。好奇心旺盛な塚本さんはニューヨークで客船から下りて、シカゴに行ってアルカポネの経営するスピークイージー<闇酒場>に雇われた。そのころのアメリカは禁酒法の時代でアルコールは全面禁止だった。コーヒーのカップで密造酒を飲ませていたんだ。キザな文章で週刊プレイボーイの4ページの特集を飾った。これは塚本さんも横田宏も喜んでくれるだろうと、悦に入っていたら、横田宏から大剣幕の電話をもらったんだ。記事を書いて何か面倒なことが起こったら、すぐ飛んで行って謝るところは平に謝るのが、その当時の週刊誌記者の鉄則だった。おれは光より速く昼間のカナユニに駆けつけた。
「シマジさん、この特集記事は1ヶ所を除いては、100点満点です。だが、うちとしてはどうしても許せないところは、塚本さんにグラスを洗わせている、というくだりです。わたしたちは塚本さんを大事にして働いてもらっているんです。これは事実誤認です。いま親しい弁護士に相談しています。」と横田支配人が炎のような剣幕で怒ってた。

横田 その話はいつか父に聞いたことがあります。

計良 それでシマジさんはどうしたんですか。

シマジ たしかにおれの筆が滑ってしまって「この輝ける塚本老バーマンは、今宵も静かにグラスを洗っている」みたいなことを書いたかもしれない。

立木 どんなことが起ころうとも、逃げないのがシマジのいいところだが、怒り心頭の横田をどのようにして治めたのか。それは来週のお愉しみってことにしたら。なあ、シマジ。

シマジ 紙面の関係上仕方ありませんね。

資生堂ビューティートップスペシャリスト 計良宏文

ファッションショーのヘアチーフを多数務めるなど、多岐にわたり活躍中。
> 公式サイトはこちら

今回登場したお店

レストラン カナユニ
東東京都港区元赤坂1-1 中井ビルB1F
> 公式サイトはこちら (外部サイト)

今回登場したアイテム

シマジ式SHISEIDO MENの使い方基本講座。
男に生まれて鏡で自分の顔をしげしげみることは、21世紀の男の正しい生き方である。

PageTop

Copyright 2013 Shiseido Co., Ltd. All Rights Reserved. Shiseido Men Special Project

このサイトについて

過去の掲載

Sound