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第5回 赤坂Bar bridgeオーナー 八木公徳氏第1章 シガーへの愛が昂じてバーを開いた。

<店主前曰>

天現寺近くのシガーバー「Bar bridge」のマスター、八木公徳は27歳のころ、わたしの友人の彫刻家、脇田愛二郎が経営していた本格的シガーバー「ラファイエット」でバーマンとして働いていた。そこでわたしは八木と親しくなった。はじめ八木は「ラファイエット」のお客だった。脇田に乞われてバーマンになったのである。それまで八木は弁当配達人をしていた。稼いだ金のすべてを葉巻につぎ込んだようだ。若いのに葉巻に異常に詳しく、わたしはずいぶん八木から葉巻について教わったり情報を得たりした。だからわたしが料亭で宴会をしたときなどは、必ず八木に弁当を作ってもらい、それを運んだものだ。またスポーツクラブの帰り、デパ地下に寄って弁当を買って持って行ってあげたりもした。今度はわたしが八木専属の弁当配達人になっていた。
 シガーに対する情熱は並大抵のものではなく、ついに八木は自分がオーナーになり「Bar bridge」をオープンした。何度もハバナを訪れた八木はハバナ流のモヒートを作るのが得意である。このバーには珍しくジガーもシェーカーもない。だからワインやシャンパンを出してお客をもてなしている。さすがに葉巻は状態のいい超一流のものを出す。わたしはよく八木の個人的な貴重なシガーをわけてもらう。これは多分若いときわたしが弁当をせっせと運んだ謝礼なのだろう。

シマジ 八木、お前が葉巻を吸った本数と知識はタダモノではないよね。いま一日何本吸っているんだ。

八木 そうですね。5,6本ですかね。

シマジ 今日もらったこの葉巻は変わっているね。いままで吸っていたピッグテールよりテールがデカイね。

立木 ピッグテールって何だ?

シマジ 普通は葉巻の先端がただ丸くなっているんだけど、ピッグテールは豚の尻尾みたいな小さなヒモのように仕上げているタイプなんだ。これは相当に熟練したシガー巻きの職人でないと作れないんだ。

八木 これはホーステールというもので、ロンドンの葉巻好きがハバナで特別に手巻きで巻かせているものです。ピッグテールの10倍以上は大きいでしょう。サイズもロブストよりちょっと長いです。煙も比重が重く低く対流するようです。だから体に紫煙がまとわりつくんです。それから灰が白くキメが細かい。ロンドンには一般市場では売っていない葉巻がけっこうあるんです。

シマジ この葉巻はいつもうまいと思っているんだが、コイーバかトリニダッドの葉っぱを使っているのだろうか。

八木 わかりません。ロンドンの紳士はどこで作らせているのか教えてくれないのです。

シマジ この極上の葉巻を先日軽井沢に住んでいる作家の馳星周に持って行ってあげたんだが、喜んでいたよ。彼は酔っぱらってホーステールをポニーテールと何度もいっていたけどね。

八木 馳先生に喜んでいただいてうれしいです。

シマジ そうそう、八木、わたしの隣にいる美人は大阪梅田大丸のSHISEIDOの店頭でBCとして働いている土谷さんだ。わざわざ今日大阪からお前のために上京してくれたんだよ。

土谷 よろしくお願いします。まず八木さんのお肌のチェックをしましょうか。

八木 怖いですね。痛くないですか。

シマジ 簡単だ。痛くも痒くもない。

八木 いままでの連載をチェックしたら、皆さまお試しになっていらっしゃいますね。

シマジ このマシーンを導入したのはおれのアイデアなんだ。この前ここの近くにあるギャマンの木下シェフをチェックしたら、珍しくBの判定が出た。いままでの最高判定だよ。

土谷 判定が出ました。Eでした。

八木 Eはいいんですか。

シマジ いままでの感じでいうとだいたい10人中8人までがEだね。まあ普通ということだ。ところでここは何時までやっているんだ。

八木 お客がいれば明け方の4時ごろまでやっていますが、早いときは2時ごろには閉めますけど。

土谷 やはりお肌には睡眠が大切です。ご商売がら仕方ないでしょうが、12時前に寝るようにしたら、あっという間に判定はDやCになるでしょう。

シマジ Cは無理だろうけど、今日資生堂からもらうSHISEIDO MEN シリーズを丁寧に毎日使ったら、Dにはなるだろう。八木はいくつになったの。

八木 42歳です。さっそく明日からSHISEIDO MENを使ってみます。

シマジ お前も42歳になったのか。bridgeをオープンして何年になるんだ。

八木 14年目になります。

シマジ 店が繁盛してよかったね。もうおれが弁当を運ぶこともなくなったね。

八木 その節はお世話になりました。

シマジ だってお前はメシも喰わずに葉巻を吸っていたからな。

立木 ちょっと、3人一緒にレンズをみてくれる。そうそう、OK。

シマジ 土谷さんはお酒はイケルほうですか。

土谷 ほんの少しなら飲めます。

シマジ じゃあ、八木、彼女にベリーニを作ってあげたら。

八木 そうしますか。

シマジ あそこに架かっている軍服みたいな洋服は八木のものなのか。

八木 はい、そうです。去年ロンドンに行ったとき、サヴィロウのギーブス&ホークスで大枚叩いて作ってきたんです。

シマジ あそこは軍服を作る店として有名だものね。

八木 去年の6月に葉巻のオークションに出席するためにロンドンに行ったとき注文して、12月にまた行ったとき仮縫いをして、今年の5月に仕上がって送ってきたのです。

シマジ しかし凄く派手だね。

八木 はい、どうぞ。こちらが当店のベリーニです

土谷 いい香りですね。うん、おいしいです。

八木 マイケル・ジャクソンは舞台衣装のほとんどをギーブス&ホークスで作らせていたようですね。ぼくのは60万円でしたが、マイケルのは200万円はしたようです。

シマジ マイケルは金モールが派手な軍服みたいな衣装を舞台で着ていたものね。八木はこれをどこで着るんだ。

八木 明治屋にミントの葉っぱを買いに行くときも着ていきますよ。

シマジ そうだ、久しぶりに八木のモヒートを飲みたくなってきた。

八木 作りましょうか。

シマジ 頼む。タッチャンの分も一緒にね。

立木 シマジ、今日は気が利くじゃないの。

土谷 そんなにミントの葉を大量に入れるんですか。

八木 そうです。ミントの葉はスペアミントとペパーミントがあるんですが、うちはスペアミントを使っています。それからブラウンシュガーを入れて、3年モノのハバナクラブを入れてソーダで割ります。お酒はラムですね。

土屋 おいしそうですね。

シマジ 飲んでもいいですが、これはけっこう強いですよ。

八木 出来ました。

シマジ タッチャン、どうぞ。

立木 そこへおいといてくれる。いま撮影に忙しい。

シマジ これはハバナで飲んだモヒートとよく似ているね。

八木 はい、ハバナに行ったとき向こうで覚えてきたんです。

シマジ ホーステールの葉巻が吸いたくなってきた。売ってくれない?

八木 これは売れません。差しあげます。

シマジ 悪いね。ロンドンで買ってきた値段で買うよ。

八木 何よりも尊いものは友情だ、といつもシマジさんがいってるじゃないですか。

シマジ じゃあ、今度最高級のお弁当を買ってくるか。

八木 じつはシマジさん、最近、ぼくは糖尿病で食事制限されているんです。

シマジ そうだったのか、それは気の毒だね。

今回登場したお店

BAR bridge
東京都港区南麻布4-11-27 オリエンタル南麻布 102

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