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第8回 恵比寿 パナセ 店主 羽崎修平 第2章 やっぱり『アカの他人の七光り』ですよね。

<店主前曰>

一流のバーマンとヘアメーキャップアーティストは類い希なるセンスの持ち主で、まず手先が生まれつき器用でないと務まらない。ハザキが作るフルーツカクテルは、毎朝築地の市場に買い出しに行って自分の目でみて手で触って仕入れてくるという。2月ごろの高知のトマトで作るブラッディーマリーは出色だ。ほとんどシングルモルトしか飲まないわたしが2杯もおかわりするくらいだから、その美味さは想像がつくだろう。ハザキは他にも季節ごとに旬の果物を使って驚きのカクテルを出してくれる。モヒートは1年中ある。このモヒートも現地のハバナのモヒートより繊細なのである。キューバンシガーを燻らせながらシングルモルト情報を仕入れるのもまた人生の至福のときである。
 そういうわたしも新宿伊勢丹メンズ館8階のサロン・ド・シマジでシェーカーを振っているバーマンなのだが、どうもハザキとは格がちがうようだ。わたしはグラスも洗わない横着なバーマンで、勘定もしなければお金もいじらない。すべて伊勢丹の社員任せである。だが驚くべきことに、週末は全国からファンが沢山やってきて、タリスカーだけの売り上げはMHD(モエヘネシーディアジオ)のサカモトによれば、最近全国のバーでベストテンに入ったそうである。先週などはタリスカーの新製品「ストーム」が売り出されたばかりだったのだが、毎日1本が空になった。タリスカー10年と合わせると2本空くのだから、瞠目すべきことだろう、と密かに自負している。

モヒート

シマジ 最近ハザキ特製のビーフシチューは出さないんだね。

ハザキ スミマセン。多忙にかまけて作っていないんです。でももうそろそろ涼しくなってきましたから、出そうかと考えております。

立木 ハザキが作るビーフシチューか。おれも食べてみたい。

武田 わたしも2年後にニューヨークから帰国しましたら、いの一番にパナセに参りますから作ってくださいね。

ハザキ 承知しました。

シマジ バーマンが作る料理って結構美味いんだよね。

ハザキ ありがとうございます。ところでシマジさんはスコットランドで何を取材されたんですか。

シマジ 話せば長くなるけど、いっていい?

立木 しゃべるなといってもシマジは話すだろう。

シマジ まずタリスカーのスカイ島にpenの担当編集者サトウと3日間も滞在してきたんだ。

ハザキ いいですね。ぼくも一度は行ってみたいところです。

シマジ 日本からは遠いんだ。グラスゴー空港からクルマで5時間はゆうにかかる。本土は晴れていたんだけどスカイブリッジを渡った瞬間、スカイ島はしっぽり雨のなかにあった。3日間ずっとそぼ降る雨に島全体が包まれていた。

ハザキ penの最新号でタリスカーの新製品「ストーム」の冊子を読みましたよ。写真もいいですね。

シマジ ウダガワというpenの連載でいつも一緒に仕事をしているカメラマンが同行してくれて撮ったんだが、雨に煙るスカイ島の風景に興奮していたよ。タリスカー蒸留所のマーク所長は友達甲斐のあるやつで、じつは同じ時期に「ストーム」のプレゼンで日本にくる予定だったんだが、キャンセルしておれを待っていてくれたんだ。

ハザキ そういえば伊勢丹のサロン・ド・シマジにマーク所長の写真を飾っていましたよね。

シマジ そうなんだ。伊勢丹にサロン・ド・シマジをオープンしたときマークはわざわざ表敬訪問してきてくれたんだよ。

立木 きっとマークはちょうどその時期たまたま日本にきていたんだろう。

シマジ そうだろうね。それにしても嬉しいことじゃないか。それでおれは得意のえこひいきの倍返しでスカイ島までわざわざ行ったというわけだ。

立木 お前とは何度も海外取材をして英語がまったく話せないことをおれは重々承知しているんだが、よくマークのこころを掴めたものだね。

シマジ それは気だね。

立木 また怪しいことをいう。

シマジ お前が好きだという気を精一杯込めて目から力強くその気を放つと、目力になって相手に伝わるんだよ。すると向こうからも気が満ちた目力が返ってくるんだ。

武田 それって凄いパワーですね。わたしもニューヨークで使わせていただきます。

シマジ どうぞ、どうぞ。

立木 でも武田さんが使うとニューヨークの男たちに誤解されるんじゃないの。

シマジ 大丈夫だよ。武田さんは英語が巧いんでしょう。

武田 にわか仕込みですけど。

立木 2年間もニューヨークで暮らしたらペラペラになって帰ってくるだろうね。

武田 頑張ります!

ハザキ ではタリスカーの蒸留所で、日本で発売する前に「ストーム」を飲んできたんですか。

シマジ そういうことだね。まあメーカー希望価格が5,800円にしてはスグレモノだよ。これはいま流行のノンエイジのシングルモルトなんだが、飲みやすくしかもタリスカー独特のピーティーな香りもするんだよ。

ハザキ うちも早速入れますよ。

武田 ノンエイジって何ですか。

シマジ それは10年とか12年とか、エイジングを表記しないで同じタリスカーの樽から年代別に5種類くらい混ぜてブレンダーが調合して作るんですが、これをバッティングというのです。一方いろいろな蒸留所のシングルモルトを混ぜることをブレンドといいます。例えばジョニーウオーカーやロイヤルハウスホールドやオールドパーなどはブレンデッドウイスキーといいます。

武田 今日は勉強になりました。

シマジ いってみればSHISEIDO MENは顔につけるシングルモルトでしょうね。SHISEDO MENのシリーズを全部使うと19種類くらいあるんでしょう。

武田 はい、そうですね。

立木 シマジはそれを全部使っているのか。

シマジ そうだね。最近ヘアワックスが製造中止になって困っていたんだが、熱狂的なSHISEIDO MENの信奉者ニシガタというお客さまから「シマジさんはその後どうなされているんですか」と訊かれたときにはおれは胸を張って答えた。「鋭い質問だね、おれはいまは資生堂プロフェッショナルのヘアワックスを使っているよ。」するとニシガタはさっそく伊勢丹ビューティーパークのSHISEIDO BEAUTY SALOONで同じものを買いに行ったようだ。

武田 ありがとうございます。

シマジ 資生堂プロフェッショナルは美容院だけなんだ。それでおれが親しい資生堂のマルヤマ役員に文句をいったら「スミマセン、SHISEIDO MENの新しいヘアワックスの発売を検討しています」と嬉しい朗報を教えてくれたよ。

ハザキ なにごとも善は急げですね。

シマジ また新情報としては来年早々目もとに塗るクリームが登場するらしいよ。

武田 シマジさんはわたしよりお詳しいですね。

立木 シマジは何たって資生堂の福原名誉会長と親しいから役得だよね。えこひいきされているよね。

シマジ 福原さんとは書友なんですよ。新刊情報はいつも福原さんに負けています。福原さんはゴルフもしない分、たっぷり時間があるんでしょう。

立木 再オープンした資生堂のレストラン、ロオジエには行ったのか。

シマジ ロオジエは12月早々福原さんのご招待で行く予定になっています。

ハザキ シマジさんはやっぱり『アカの他人の七光り』を地でいっていますね。

シマジ そうかもね。

ヘア&メーキャップアーティスト 武田玲奈

資生堂の宣伝広告のヘアメークを中心に、ニューヨーク、パリ、東京など国内外コレクションでも多岐にわたり活動。現在、資生堂メーキャップを担当し、ディック・ページ氏とコレクションや商品のカラークリエーションも行う。
> 公式サイトはこちら

今回登場したお店

パナセ
渋谷区恵比寿1-25-3 2F
>公式サイトはこちら (外部サイト)

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