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第10回 一関 ベイシー オーナー 菅原正二 第1章 「悪党はケータイを持たない。」

撮影:立木義浩

<店主前曰>

菅原正二は県立一関一高のわたしの1年後輩にあたるが、どうもショーちゃんのほうが一、二枚、格が上のような気がしてならない。それくらい敬愛してやまないチャーミングな後輩を持っていることにわたしは誇りを感じている。
 菅原正二がやっているベイシーは今年で43年目になる。蔵を改造して造ったベイシーは日本中のジャズ愛好家垂涎のジャズ喫茶である。いまをときめくジャズ好きの著名人が沢山東京からベイシーにやってくる。タモリもタッチャンもその一人である。わたしも一関に帰るたびに必ずお邪魔する。そのあとショーちゃんと食事をして長時間飲み明かすのが愉しいのだ。彼の話に刺激されてますます興をそそられる。彼の話柄の広さにはいつも驚愕する。
 7年後のオリンピックが東京で開催されることが決まってからすぐにベイシーを訪れたとき、ショーちゃんはニコニコしながら目を輝かせていった。
「先輩、これでわたしももう7年は生きてみようかなと張り合いが出てきたところです。オリンピック開催の年でベイシーはちょうど50周年記念を迎えるんです。いま死んだら犬死にですよ。先輩、こうなったら、おたがいますます年齢不詳になって意地汚く生きましょうよ」

シマジ ショーちゃん、今日は仙台から資生堂東北支社の美容統括部長、松田佳重子さんがいらっしゃいました。美人でしょう。

菅原 ドアから入ってこられたとき、一瞬、鈴木京香がきたのかなと思いました。

松田 仙台から参りました松田です。よろしくお願いいたします。

立木 じゃあ、こちらをみて。ちょっとみんな気取りすぎだ。もっとフランクに、そうそう。

松田 菅原さんのお肌は透き通るようにきれいですね。

立木 松田さん、菅原はおれのモノだから触っちゃダメだよ。たしかに松田さんは鈴木京香に似ているね。

シマジ 今日はアビエントからマツモトが助っ人にきてくれているんだが、あいつは役所広司にソックリだし、松田さんは鈴木京香ソックリだし、華やかでいいね。

菅原 先程から観察していると、シマジ先輩はカメラ慣れしていますね。レンズを向けられてそんな姿形が決まっているポーズを作るのは、素人にはなかなか出来ないものですよ。やっぱり人はみかけが大事ですよね。

シマジ たしかに三島由紀夫がいっているように、健康ではなく健康にみえるみかけが重要なのかもね。

立木 シマジは実際はちっとも金持ちではないが、一見金持ちそうにみえるのも大事なことなのか。

シマジ 貧乏にみえるよりは人が寄ってくるかもしれないね。

松田 先程のお肌測定の結果が出たようです。菅原さんはDでした。

マツモト ぼくと一緒ですね。菅原さんはぼくより約25歳年上なのにDは立派ではないでしょうか。

菅原 わたしはこの蔵のなかで43年間暮らしているみたいなものだから、日照時間が極端に短いんでしょう。シマジ先輩は何だったんですか。

シマジ ときどきDでときどきCだね。

松田 シマジさんの場合はゴルフ焼けしていながらDやCは素晴らしいですよ。お肌にいちばん悪いのは紫外線ですから。

シマジ なるほどモグラのような生活をしているショーちゃんがDだというのはわからないでもないね。

菅原 少年のころは、ひと夏、高田松原で暮らしていたこともありますが、あまり黒くなりませんでした。

立木 シマジとかおれは生まれながらにメラニン色素が多いんだよ。いつだったかこいつと四国の奥道後の露天風呂に一緒に入ったけど、シマジはスミからスミまで黒かった。

シマジ タッチャンだって凄かったよ。一緒に入った青木功プロが驚いていたからね。むかしだったらアメリカに行ったら、二人とも人種差別されるね、とアオちゃんがいっていたくらいだ。

松田 菅原さんはどのようにお肌のメンテナンスをなさっていらっしゃいますか。

菅原 石けんで顔を洗って以上終わりですかね。

松田 それでDを獲得されたのは凄いです。

菅原 だいぶ前の話ですが、JALの機内放送のジャズのセレクションをやったことがありまして、タモリと対談形式に語り合ったことがありました。そのとき資生堂の化粧品を山のようにいただきました。

シマジ JALのファーストクラスに乗るとSHISEIDO MENのセットをもらえるくらいJALと資生堂は仲がいいんだよ。だからもらえたんだと思うよ。

菅原 そのときは毎日ぬりましたね。

シマジ それがまだ効いているかもしれないよ。

菅原 先輩のエッセイを読むと何種類も毎朝つけているんですよね。

シマジ そうだよ。男が年齢不詳になるためにはかなりの努力が必要なんだ。おれはヘタな女に負けないくらい美容には金をかけているよ。

菅原 何か目の周りにも特別に塗るんでしょう?

シマジ そうそう、アイスーザーというものでね。老いは目もとからやってくるといわれている。ヨーロッパの男性はそのあたりが敏感でアイスーザーをよく使っているようだ。まあ、ショーちゃん、おれに騙されたと思って明日からSHISEIDO MENを使ってみてください。この袋にすべて入っています。また今回特別にリップトリートメントが入っています。これは冬の乾燥から唇を守ってくれるんだよ。

菅原 ありがとうございます。

松田 こんなふうにお酒を飲みながらお仕事するのは生まれてはじめてです。緊張しています。

シマジ お酒は緊張をほぐすために飲んでいるんですよ。

菅原 わたしは低血圧で昼間は100まで上がらないんです。どうしても100を越さないとエンジンがかからない。こうして昼間から飲んでいるとちょうどいいんです。

シマジ マツモト、じゃあ、そこにあるバランタイン30年をトワイスアップでシェークしてくれるか。もう一度正式に乾杯しましょうか。そろそろタッチャンの分も作ってくれない?

立木 シマジ、ありがとうサン。

シマジ それではスコットランド風に乾杯しますか。スランジ・バー!

立木 もう一度いってくれ。

シマジ スランジ・バー。これはゲール語であなたの健康を祝してという意味なんだ。

全員 スランジ・バー。

シマジ ショ―ちゃんも格言好きだけど、「悪党は携帯電話を持たない」はうまいと思うね。どういう意味で作ったのか松田さんに説明してくれますか。

菅原 あんなものを持っているのはお人よしの男ですよ。

立木 携帯電話は持っていないけどスマホは持ってたりして。

菅原 両方もっていません。わたしは線が繋がっていないと信用できないんです。あんな高性能のオモチャは薄気味悪いですね。原稿もこうしてモンブランの万年筆で書かないと安心出来ないんです。インクがなくなりまたインクを入れるこの行為に安堵を感じるんです。よく先輩はパソコンで原稿を書いていますね。

シマジ 編集者に万年筆で書いて送稿すると彼らがそれをパソコンに入れるために打つ。まあその手間を省いてあげているだけなんだけど、最初のうちは指のスピードと脳みそがうまく連動しなくて大変でした。まず200字の原稿用紙に万年筆で書いてそれをポツリポツリとパソコンで打ったものですよ。そのモンブランの149、マイスターシュテュックは古いようにみえますね。

菅原 これは70年代のものです。50年代、60年代のものを探しているのですが、なかなかいいものがなくて。

シマジ 50年代のモンブラン149のペン先を70年代のボディにつけている人を知っています。

菅原 すべてのいいものは50年代、60年代に作られておりますね。ジャズもそうですよ。天才が多く生まれたのもその頃です。ライカのM3もそのころでしょう。モンブランのペン先のクーゲルも50年代ですよね。

シマジ ああ、あの球状のペン先ね。やっぱり50年代60年代のものは素晴らしいものが沢山ありますね。

松田 わたしは1960年代生まれです。

立木 やっぱり資生堂の”鈴木京香”さんはステキなアラフィフだね。

松田 いえいえ、わたしには可愛い孫がもう二人いますよ。

シマジ えっ!ホントですか。松田さんにお孫さんが二人もいるなんて、そんな風にはみえませんね。人生は恐ろしい冗談の連続であるとはまさにこのことですね。

全員 シーン。

今回登場したお店

ベイシー
岩手県一関市地主町7-17

今回登場したアイテム

シマジ式SHISEIDO MENの使い方基本講座。
男に生まれて鏡で自分の顔をしげしげみることは、21世紀の男の正しい生き方である。

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