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第11回 西麻布コントワール ミサゴ オーナーシェフ 土切祥正氏 第2章 シマジさんのアイデアは大助かりですよ。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

いまミサゴは真鴨を食べるお客で賑わっている。シベリアから飛んできた青首カモは土切シェフの奥さんの実家がある新潟の田んぼに舞い降りる。そこでは奥さんのお父さんが米を撒いて真鴨を誘っているのだ。しばらく飼い慣らしておいて網を張って一網打尽に捕獲すると、夫婦で働いているミサゴ宛にクール宅急便で送ってくる。土切シェフは奥さんの実家で真鴨が捕れるからという理由で結婚したわけでは決してない。たまたま結婚した相手の実家が農閑期に鴨を捕っていたのであった。
 ミサゴの野鴨は網で捕獲するから散弾銃の弾は入っていない。弾丸が入っていると小さくても歯で噛んでみつかるときがある。わたしは以前はそれを財布にお守り代わりにいれていたものだ。
 ジビエ料理を得意とするミサゴでは鴨以外イノシシ、エゾシカ、そしてヒグマを食べさせてくれる。これまで土切が自慢気に出してくれたイノシシは静岡の茶畑に1ヶ月も隠れ住んでいた強者だった。そのイノシシは大きな茶畑に隠れて部分的にちょこちょこと茶葉を食べていたのだが、ついに一ヶ月後茶畑の農夫にみつかり猟師に撃たれてミサゴにやってきたのである。運よくわたしが賞味することになった。ほのかなお茶の香りがした。あまりの美味さにわたしは3日間昼夜立て続けでミサゴに通ったものである。

シマジ 土切シェフ、鈴木さんにはまずサラダから召し上がっていただこうか。

土切 そうですね。それでは野菜がいっぱい入っているものにしましょうか。これはどうですか。

鈴木 まあきれいですね。せっかくですから土切さん、説明していただけませんか。

土切 サニーレタス、トレビス、これは別名レッドレタスですね。トマト、ニンジンのラペ。これは千切りにしたニンジンをマリネにしたものです。それから自家製の生ハム、生のキノコはフランス産のジロール、セップ、トランペットです。

鈴木 セップですか。フランスで生活しているときよく食べました。もういただいていいでしょうか。

シマジ どうぞ どうぞ。

立木 ちょっと待って。料理をカラーで撮影することになっているから、鈴木さん、ごめんなさいね。こちらに貸してくれますか。

シマジ あっ、そうだった。ごめん、ごめん。土切、どんどん作っていいよ。

土切 わかりました。スタッフのみなさまも食べられるように多めに作りましょう。

シマジ おれの分はいいよ。夕べもここで同じ料理を食べたばかりだからね。

立木 鈴木さん、お待たせしました。どうぞ召し上がってください。

鈴木 ではいただきます。その前にみんなに分けてもいいですか?

土切 ではこちらで分けましょう。

鈴木 美味しいですわ。セップは懐かしいです。生ハムも自家製って感じですね。

シマジ 次はスープです。このなかにフォアグラの切り身がゴロンと一切れ入っています。これをスプーンで粉々につぶしてください。すると白濁色にスープが濁りまるで西洋茶碗蒸し状態になります。そうだ。まずタッチャンに撮影してもらいますか。

立木 シマジ、こいつは美味そうだ。

シマジ いつでもご招待しますよ。

立木 お前とふたりで喰っても味気ない。別々にこよう。でもたまたま会ったら、おたがい知らん顔するんだよ。

シマジ もちろんですよ。その代わり勘定はおれがこっそり払って帰るというのはどうですか。

立木 シマジ、粋なことをいうじゃないか。ようし、約束だぞ。

シマジ こんなにお世話になっているセンセイのためならそれくらいのことは当然でしょう。

立木 今日はセオはいないのか。いたらあいつに証人になってもらえるところだが。

シマジ 残念でした。今日はネスプレッソの連載ではありません。

立木 これもOKだ。鈴木さん、温かいうちにどうぞ。

鈴木 フォアグラですか。フォアグラをどうしたのですか?

土切 はい、フォアグラをピューレして蒸し焼きにしたものです。

鈴木 この独特のスープの味は何ですか?

土切 よく気がついてくださいました。これは真鴨とエゾシカの骨と肉を3日間とろ火で煮込んだスープです。

鈴木 とても美味しいですわ。このキノコはポルチーニですよね。イタリアではポルチーニといわれどうみても同じキノコがフランスではセップといわれている、あのポルチーニですよね。

土切 さすがはパリの生活が長いからいろいろご存じですね。でもこれは生のポルチーニではありません。シマジさんのアイデアで乾燥ポルチーニを使っています。このほうが香りが立ちます。これにしてから一年中出せるようになりました。

立木 シマジもたまには役に立っているんだ。

土切 うちの店では大助かりですよ。結局お客さまから教わることが多いですね。

立木 オーナー面してシェフにいろんなことを命令しているシマジの姿が目に浮かぶ。

シマジ いよいよメインディッシュの真鴨のソテーがきました。タッチャン、お願いします。

立木 あいよ。

鈴木 凄い香りですわ。セーヌ川の畔にある鴨を食べさせるレストランを思い出しました。

シマジ これは新潟の野鴨です。というよりもシベリアから飛んできた野鴨です。フランス野鴨はスコットランドあたりから飛んでくるらしいですね。

鈴木 そうなのですね。寒いところからいくらか暖かいところに渡ってくるんでしょうか。

シマジ 究極はアフリカまで飛んで行くそうですが、途中で捕獲されてしまうんですよ。

立木 はい、撮影終わり。

土切 鈴木さん、この真鴨はソテーして赤ワインソースで味をつけています。付け合わせの野菜はブロッコリー、パプリカ、アスパラです。

鈴木 美味しいです。この焼き方が半生のところがいいですね。堪りません。今日は幸せです。

シマジ やっぱり赤ワインを一杯欲しいですか?

鈴木 いえいえ、さきほどからいただいているスパイシー・ハイボールが美味しいです。鴨の伴走にも合いますね。これは生まれてはじめて飲みました。

立木 シマジは行きつけの店にはマーキングのようにどこの店にもおいているんだ。おれにも一杯作ってくれる?きっとシマジはタリスカーからたんまり裏金をもらっているんだろう。

シマジ いや別に。伊勢丹のサロン・ド・シマジはついに全国のバーでタリスカー売り上げベスト5に入ったと昨日タリスカー担当のサカモトさんから報告を受けたばかりだよ。でも美味いから飲まれているんだよ。

鈴木 必ず今週末主人と子供たちを連れて伊勢丹のサロン・ド・シマジに伺いますわ。

シマジ ありがとうございます。コーヒーも紅茶もありますからお子さんがきてもサービス出来ますよ。それからSHISEIDO MENの全シリーズを売っていますから、そこの棚もみてくださいね。

鈴木 愉しみです。

土切 では最後にスッポンのリゾットを召し上がってください。これもシマジさんのアイデアで米から炊き込み米の芯を歯で味わえるように作っています。

立木 はじめに撮影するね。さあ、どうぞ。

鈴木 スッポンのリゾットは生まれてはじめて食べました。お米の感触がリゾットですね。これはスグレモノです。一度家族4人で食事にきたいです。

シマジ どうぞ、どうぞ。

土切 いつでもお待ちしております。

立木 おれもくるぞ。

シマジ いい女と一緒にきてよ。

立木 もしかするとまちがってセオとふたりできたりして。

今回登場したお店

コントワール ミサゴ
東京都港区西麻布4-17-22 アビターレ西麻布2F
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