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第8回 青山 Buca Junta 石川淳太 第4章 人生ってこんなもんでしょう。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

現在、資生堂ビューティークリエーション研究センターでセンター長を務める平田賢一の40代はブイブイ仕事に邁進していた。SHISEIDO MENを誕生させて仕事は充実し、人生がさらに花開こうとしていたそのとき、突然、襲った脳出血で将来が真っ暗になった。しかしその状況でも平田は持ち前の不屈の精神で地道な努力を積み重ね、いまではセンター長を務め、オフには片手でゴルフを愉しむまでに快復している。会社の送り迎えの運転など奥さまのサポートに依るところも大きい。以前リハビリ病院に通っていたころ、ある日偶然にも野球の神様長嶋茂雄に会った。平田は子供のころから長嶋の大ファンであった。汗をかきながら懸命にリハビリに取り組む長嶋の姿をみた平田のこころは、少年に戻った。と同時に、おれも頑張らなきゃいけないと強く思った。リハビリを終えた長嶋は平田にいっぱいの笑顔で「おはよう」と声をかけてくれた。平田は感激して思わず涙が出たという。平田は長嶋とリハビリ病院が一緒だったことを神さまに感謝した。

平田:鹿児島黒毛牛は最高でしたね。

石川:ありがとうございます。うちの自慢のステーキです。コーヒーか紅茶を出しましょうか。

平田:エスプレッソをダブルでください。

石川:了解しました。

立木:そうだ、今日は男ばかりだから、シマジの得意なHできわどいジョークを聞かせてもらおうか。

シマジ:突然なにをいうんですか。

立木:食い物にまつわるジョークだったらこの対談にも相応しいんじゃないか。

石川:シマジさん、是非やってください。それを覚えて今夜のお客さまにさっそく披露してみたいです。

平田:開高健さんとシマジさんのジョークの名著『水の上を歩く?』は傑作でしたね。あれを何度も読めば座談の名手になれますよね。

シマジ:ありがとうございます。では食事に関するジョークに絞ってやってみますか。
「仲のいい老夫婦が金婚式のお祝いに、新婚旅行のときに行ったヴェネチアを再び訪れた。ホテルは超一流のダニアリだった。そこは外装も内装も50年前のままだった。
『こうなったらおれたちも50年前の新婚旅行のときやったようにやろうじゃないか』と夫が興奮していった。
『ダーリンたら、素敵!』と老妻はニッコリ笑った。すぐさま老夫婦は素っ裸になり、豪華なルームサービスの食卓についた。そして差し向かいの睦まじい食事がはじまった。スープを啜るうちに、老妻はポッと頬を紅く染めていった。
『ダーリン、なんだか、あたし、胸が熱くなってきたわ』
すると亭主が目をそらして陰気な声でつぶやいた。『それはおまえ、オッパイの先がスープに入っているからだよ』」

立木:あっははは。残酷だけど面白い。

シマジ:人生ってこんなものでしょう。

石川:あっははは。今夜さっそく使わせていただきます。

平田:あっははは。バストが垂れないボディローションをその老妻は使っていなかったのかな。

シマジ:ではもっと食べ物に近いジョークをやりますか。
「小型旅客機が南太平洋の無人島に緊急不時着した。生存者はパイロットと3人の女性だけだった。1週間もしないうちに、わずかな食料は底をつき、彼らは飢餓に苦しみはじめた。このままでは全員の死が避けられないと悟った勇敢なパイロットは、自分が犠牲になると申し出た。
『わたしが自殺しよう。あなたがたはわたしを食糧にしなさい。それで1,2週間は持ちこたえられるでしょう。そしてそのうちに助けがくるでしょうから』
パイロットは目をつぶり拳銃を頭に突きつけた。そのとき1人の女が叫んだ。
『やめて!脳みそをぶっ飛ばすのはやめてください。そこがいちばん美味しいとこなのよ』

立木:あっははは。その女は食通だったんだな。

シマジ:おれも狂牛病が流行る前はよく牛の脳みそを食べたけど、とくに延髄が最高だったね。生で食べるとほっぺが落ちるくらいの絶品だった。ご飯に乗せて延髄寿司にして食べるとフグの白子寿司なんて目じゃなかったですよ。

石川:シマジさんは悪食なんですね。

平田:でも美味しそうですね。

シマジ:では好評に応えてジョークを続けましょう。
「とある午後、裕福な弁護士が彼の事務所に向かうリムジンの後部座席に乗っていたとき、道端で草を食べている2人の男に出くわした。弁護士はドライバーに車を止めるように伝え、男たちはなにをしているのか調べようとリムジンから降りた。
『なぜ君たちは草を食べているのかね』
弁護士が2人の男に尋ねた。すると1人の男が答えた。
『おお、旦那さま、わたしたちには食べ物を買う金もないんです』
『そういうことならわたしと一緒にきなさい。食べさせてあげよう』と弁護士がいった。
『でも旦那さま、わたしには妻と2人の子供がいます。あいつらもわたしと同じように腹を空かせています』
すると弁護士は鷹揚にいった。
『それなら彼らも連れてきなさい』
すると2人目の男がいった。
『わたしにも妻と6人の子供がいます。わたしも妻と子供たちを連れて行っていいでしょうか』
『問題ない。彼らも連れてきなさい』と弁護士。
最終的に弁護士と2人の男、2人の妻、8人の子供を全員詰め込み、リムジンが走り出した。男の1人が感謝の言葉を述べた。
『旦那さま、あなたはとてもやさしい方ですね。わたしたち全員を連れて行ってくださるなんて、本当にありがとうございます』
すると弁護士は鷹揚にうなずいていった。
『ちっともかまわんよ。うちの庭は広いし、草はこの辺よりもっと伸びていて膝くらいまであるからね』

立木:あっははは。ブラックジョークだけど面白いね。

石川:あっははは。自然のサラダ料理ですね。

平田:人を人とも思わないヒドい弁護士ですね。

シマジ:平田さん、これはジョークの世界ですから。そんなにムキになって考えないでください。

立木:もっとほのぼのとしたジョークがいいんじゃないか。

シマジ:わかりました。こんなのはどうですか。
「ジミーが老人ホームにいる90歳の叔母さんを見舞いに行った。部屋に入ると叔母さんは昼寝をしていたので、ジミーは椅子に腰掛けて叔母さんが目を覚ますのを待つことにした。その間、持ってきた文庫本を読みながら、テーブルの上のボウルに入っていたピーナッツをボリボリ齧った。叔母さんが目を覚ましたときには、ボウルの中のピーナッツは全部なくなっていた。
『叔母さん、ごめんなさい。うっかりしてあなたのピーナッツを全部食べてしまって――』
『ちっとも構わないわよ、ジミー。それはさっき食べたチョコレートピーナッツの残りだから』

立木:あっははは、これは可笑しい。叔母さんは歯が悪いからチョコレートだけを舐めて、口に残ったピーナッツをボウルに出しておいたんだね。

石川:あっははは。面白いけど汚いですね。

平田:あっははは。げぇー。

シマジ:もう一つやりますか。

立木:もういい。げぇー。

新刊情報

Salon de SHIMAJI バーカウンターは人生の勉強机である
(ペンブックス)
著: 島地勝彦
出版:阪急コミュニケーションズ
価格:2,000円(税抜)

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Buca Junta
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2丁目3−30
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