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第1回 六本木 ステーキそらしお 橋本聡氏 第2章 今日の異端は明日の正統である。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

エコール資生堂、ビューティーアカデミー3年生に在籍している加藤芳(かおり)さんは、現在ではビューティー・コンサルタントという肩書だが、彼女が資生堂に入社したころのその職務は美容部員という呼称であった。同期で入社したのは21名、現在も在籍しているのは彼女を含めて4名である。入社後しばらくして結婚し、出産・育児のためにやむなく退職したのだが、7年後に契約社員として資生堂に再就職した。どうしてももう一度資生堂で働きたいという思いが募っていたころ、同僚から声がかかったのである。そして2年後、晴れて資生堂の正社員に返り咲いた。主な仕事はビューティー・コンサルタントと、得意先の推進及び教育の担当である。さらなる高みを目指す加藤BCは3年前ビューティーアカデミーに入校した。将来的には海外に活躍の場を広げることも視野に入れ、現在プライベートの時間を使って英語教室にも通っているという大変な努力家である。

シマジ:加藤さん、最後に出てくる「そらしお」のガーリックライスはビックリするほど美味いですよ。

加藤:嬉しい。わたしはガーリックライスが大好きなんです。

立木:ガーリックライスは鉄板で作るんだね。

橋本:そうです。このガーリックはうちで醤油に漬けた特製のものを使います。

シマジ:その前にスパイシーハイボールを1杯いかがですか。

加藤:いただきます。これは食中酒としてもすぐれていますね。食事と合いますし、ビールよりお腹が膨れません。

シマジ:タリスカー10年とブラックペッパーの相性がいいんです。しかもこれはわざわざスコットランドのピートで燻製したブラックペッパーなんですよ。それにこの山崎プレミアムソーダもハイボールにぴったりなんです。

立木:撮影が終わったらおれにも1杯作ってくれよな。

シマジ:もちろんです。

橋本:立木先生、ガーリックライスが出来上がりました。

立木:よし撮ろう。お嬢、ちょっと待っていてね。

加藤:はい。

シマジ:スパイシーハイボールを飲みながらお待ちください。このブラックペッパーは口のなかで粘膜とくっつくとそこから成分が吸収されて食欲を増進してくれるんです。

加藤:たしかに、そう感じますね。

シマジ:ところで加藤さんはエコール資生堂のビューティーアカデミーになぜわざわざ入学したいと思ったんですか。

加藤:ビューティーアカデミー入校の動機は、じつは2011年3月11日の東日本大震災なんです。わたしたちは震災で避難を余儀なくされた方々に様々な支援をしに行きました。あるとき避難所にいる女性のお顔をマッサージさせていただいたのですが、気持ちよさそうに目を閉じて明るく話をしていたその女性が、急にポロポロと涙を流されたんです。わたしの手のひらの温かさを感じて、それまで我慢していた気持ちがふと緩んだのだそうです。わたしも思わずもらい泣きをしてしまい、泣きながらマッサージをしました。そのとき思ったんです。もっと多くの人を癒してあげたい。幸せにしてあげたい。自分の出来る限界までしてあげたい。そのためにはわたし自身がもっともっと学んでいかなければいけないと思い、ビューティーアカデミーの募集に応募したんです。被災地の現場にアカデミー1期生の先輩がいらっしゃいました。常に前向きで明るく、行動力があり、太陽のようなその先輩に、励まされたり指導を受けたりしたんです。先輩のような人になりたいという強い気持ちが、その後のわたしを大きく後押ししてくれたんだと思います。

シマジ:いいお話ですね。

立木:はい、撮影完了。ああ、スパイシーハイボールが飲みたい。シマジ、光より速く作ってくれ。

シマジ:了解。加藤さん、どうぞガーリックライスを召し上がってください。

加藤:いただきます。

シマジ:どうですか。

加藤:お醤油の味が隠し味になっていて大変美味しいです。

シマジ:よかったね、橋本。

橋本:ありがとうございます。

加藤:こちらのお店にもまた伺ってよろしいですか。

橋本:どうぞ、どうぞ。お待ちしております。

加藤:先ほどからシマジさんの指先が気になっているんですが、ネールアートがとってもきれいですね。

シマジ:これはSABFA<Shiseido Academy of Beauty & Fashion>の矢野裕子先生にやっていただいているんです。わたしのネールアートを見て、伊勢丹サロン・ド・シマジのバーの常連たちも興味をもつようになりましてね。いまでは月に一度矢野先生に伊勢丹に来てもらっているんです。あそこからメンズ・ネールアートを発信しているんですよ。

立木:いくらでやってもらえるんだ。

シマジ:矢野先生は資生堂の現役社員ですので、ネーリストとしてお金を受け取ることはできないんです。そこでサロン・ド・シマジでSHISEIDO MENを1万円以上お買い上げいただいた方への優待サービスとして、ネールアートを無料で提供しているんです。

加藤:素晴らしい企画ですね。ツメをきれいにするとモチベーションがあがると言われています。ネールアートでしたら、さらにモチベーションがあがるんではないでしょうか。シマジさんは4本のツメにアートしていらっしゃいますね。この親指の黒っぽいのはなんですか。

シマジ:これは伊勢丹メンズ館を象徴するタータンチェックです。以前の緑×青×黒の3色に、去年の秋のリニューアルのときに赤が加わったオリジナルの「ブラックウォッチ/イセタンメンズ」というタータンなんです。ショッピングバッグでもおなじみのデザインをこうしてツメの上でアイコン化しているんです。わたしがいかに伊勢丹を愛しているかの証明です。大西社長にもお勧めしているんですよ。両方の親指に伊勢丹と三越それぞれの包装紙のデザインでネールアートをやってみてくださいってね。

立木:あの大西社長がそこまでやるかね。

シマジ:お洒落な方ですし、なんといったってサロン・ド・シマジの生みの親ですからやるんじゃないですか。モリマサという常連客などは資生堂のシンボルマークである花椿と、ロオジエのシンボルマークをツメにアートしてもらっていますよ。それもまた面白い。ともかく矢野先生の手にかかればなんでもリクエスト通りに描いてもらえます。

橋本:ぼくもやってみますかね。

シマジ:いいんじゃないの。高橋オーナーがオリンピック委員会の理事をしているから、五輪のマークを描いてもらったら、高橋は喜ぶぞ。

立木:いっそのこと高橋のツメにやってやればいいんじゃないの。

シマジ:アイツは意外にコンサバだからね。

立木:シマジお得意の「今日の異端は明日の正統」で説得すればいいんじゃないの。

シマジ:そういうタッチャンはどうなの。

立木:以前やったことがあるんだよ。でもおれは毎日機材を使うから、どうしても剥げやすくなってしまうんだ。

シマジ:じつはわたしは左足の親指にもネールアートをしているんですよ。

立木:へえ、ペディキュアまでやってもらっているのか。どれどれ、靴下を脱いで見せてみな。

シマジ:いや、たとえ大好きなタッチャンでもこれだけは見せられません。

立木:どうしてなの。シマちゃん、お願い。

シマジ:誰でも簡単に見られるものではないんです。つまりこれを見られるのは、わたしとわりない仲になった女性の特権ということになりますか。

立木:いったい、足のツメにどんな絵を描いているというんだ。気になって眠れなくなるじゃないか。

シマジ:それは秘密です。

立木:わかった。どうせまたドクロだろう。

シマジ:ご想像にお任せします。

加藤:立木先生、わたしが矢野先生にこっそりお訊きしましょうか。

立木:うん、それはいいアイディアだ。

シマジ:矢野先生には絶対誰にもこの秘密を明かさないように厳重にお願いしてありますから、それは無理でしょう。

資生堂ビューティースペシャリスト 加藤 芳

全国約1万1千人のビューティーコンサルタントの中から選抜され、高度な美容技術を学び、
2015年4月より資生堂ビューティースペシャリストとして活動。
>公式サイトはこちら

新刊情報

Salon de SHIMAJI バーカウンターは人生の勉強机である
(ペンブックス)
著: 島地勝彦
出版:阪急コミュニケーションズ
価格:2,000円(税抜)

今回登場したお店

ステーキそらしお
東京都港区六本木1-9-10 アークヒルズ仙石山森タワー 1F
Tel: 03-3505-5550
>公式サイトはこちら (外部サイト)

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