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第4回 西麻布 ウォッカトニック 山田一隆氏 第4章 生まれながらの強運な晴れ男。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

山田一隆バーマンは生まれながらの強運の男である。
先日、同系列の「CASK strength」のオーナーバーマンであり会社の代表取締役である篠崎喜好と一緒にアイルランドとスコットランドへ約1週間の旅に出た。毎日四季があるといわれている彼の地に滞在中、朝夕は寒かったが、珍しく晴天が続いたという。これは滅多にない奇跡だろう。
目的は「ウォッカトニック」30周年を祝うためのアイリッシュウイスキーをボトリングしてくることだった。その銘柄は「ティーリング」。酒歴も24年熟成のものだ。そのうちお店に勇みな姿を現わすだろう。

シマジ:アイルランドやスコットランドでは、一週間ぶっ通しで晴天が続くって凄く珍しいことだよ。おれも相当の晴れ男だけど、そんな経験は一度もない。

山田:はい。わたし自身驚きました。アイルランドに3日滞在して首都ダブリンの近くのティーリング蒸留所に行ったのですが、晴天のなか大歓迎されました。それからスコットランドに移動し、今回はアイラ島に3日間滞在して、アイラ島の各蒸留所を隅から隅まで見学してきました。その足でジュラ島にも行ってきました。

シマジ:じゃあ、山田たちはジュラ島のあのオッパイ山(Paps of Jura)をもろに見たんだね。

山田:はい。幸運にも雲のブラジャーで隠れてはいませんでした。

シマジ:おれが行ったときは残念ながら、スッポリとブラジャーをつけていたけどね。

立木:ジュラのオッパイ山は、シマジだけには見せたくないと必死にブラジャーをつけていたんじゃないの。

シマジ:また来てね、初回はダメよ、とでも言っていたのかしら。ところで山田バーマン、おれはアイリッシュウイスキーはよく知らないが、むかしオールドブッシュミルズはよく飲んだものだよ。

山田:またどうしてですか。

シマジ:冒険小説の大傑作、ジャック・ヒギンズの『鷲は舞い降りた』を読むと、しょっちゅうジェムソンとかオールドブッシュミルズというアイリッシュウイスキーが登場するんだよ。

多胡:『鷲は舞い降りた』ですか。シマジさんの推薦本は何冊も読みましたが、すべて面白かったです。その本も読んでみます。

シマジ:まだ早川文庫で売っているはずです。この冒険小説でわたしは「ロマンティックな愚か者」という素敵な言葉を覚えたんです。多胡さん、きっと胎教にもいいと思いますよ。開高健先生もこの作品には太鼓判を押していましたよ。あっ、そうだ。多胡さんは、ウイスキーはどこの国で発明されたと思いますか。

多胡:それはやっぱりスコットランドではないですか。

シマジ:そう思うでしょう。ところが人類が最初にウイスキーを作って飲んだのは、なんと中国なんです。

多胡:えっ、そうなんですか。

シマジ:それがアイルランドに渡り、スコットランドで大きな華が咲いたんです。

山田:そうですか。中国がウイスキーの発祥の地だとは知りませんでした。初耳です。

シマジ:中国って凄い国なんですよ。日本が重宝して使っている漢字を作ったのも中国だし、火薬や印刷技術を人類最初に発明したのも中国です。ですからいま爆買いに夢中になっている中国人の血のなかには凄い遺伝子が流れているんです。決して侮れない人種なんです。

立木:でもせっかく発明したものがどうしてほかの国に持って行かれるんだ。

シマジ:たぶんむかしから中国は戦乱の時代が多かったのと、もともと飽きっぽかったんじゃないですか。でもじつに勿体ないことをしたものです。ウイスキーと火薬と印刷の専売特許を持っていたら凄いことになったのにね。漢字のことにしても、そのうち日本に使用料というかロイヤリティーを払えと言ってくるかもしれないですね。まあ、これはジョークですけどね。

立木:ところでシマジ、最近お前はおれに黙って一関の「ベイシー」に行って正ちゃんと毎晩飲んでいたろう。

シマジ:ドキッ!どうしてタッチャンがそのことを知っているの。

立木:おれの耳は地獄耳、おれの目は千里眼なんだよ。

シマジ:告白すると、先日一週間ほど一関に休養を兼ねて行ってきました。大丈夫、正ちゃんをタッチャンより好きになったりはしませんから。

立木:ホントか。じゃあ、許す。

山田:一関のジャズ喫茶「ベイシー」は全国的に有名ですものね。

シマジ:そこのマスター菅原正二がまたチャーミングな男で、彼を慕って男も女も全国から会いに来るんだよ。

多胡:だいぶ前ですが、このSHISEIDO MENの連載に登場されていましたよね。

シマジ:さすがは多胡さんだ。

多胡:シマジさんの連載はすべて目を通していますから。わたしもいつか「ベイシー」に行ってみたいなあと思っていました。

シマジ:よくタモリさんや鈴木京香さんが東京からフラッとやって来るらしいですよ。

立木:そうだ、思い出した。正ちゃんの取材のときは、「アビエント」のマツモトバーマンも取材したよな。シマジの人使いの荒っぽいのは有名だが、1日に2回も仕事をさせられたんだ。しかもあのときはたしか日帰りじゃなかったか。

シマジ:いえいえ、タッチャン、ちゃんと一関のいちばんいいホテル、ベリーノに泊まっていだだきましたよ。

立木:そうだったかな。記憶にない。

シマジ:今度人間ドックに行くときは、脳ドックもぜひ受けてください。心配になってきた。あと10年は一緒に仕事をしたいんだから。

立木:正ちゃんとなにを話したんだ。

シマジ:タッチャンはいい男だと何度も確認しましたよ。

立木:余計なことを言うな。もっと面白いことを話したんだろう。

シマジ:そうだ。面白いというか怖い話を聞きましたね。いま岩手や青森と県境の秋田県に人喰い熊が出没して、なんでも4人の犠牲者が出ていると正ちゃんが言っていました。いままで熊は人間を襲うことはあっても、食べたりはしなかった。月の輪熊はもともと温和しかったんですが、恐ろしい人喰い熊が現れて、しかもその熊はまだ射殺されていないと話題になっていました。

山田:普通の月の輪熊は主にクルミやドングリやクリなんかを食べるんじゃないですか。ホントに人肉を食べるんですか。

シマジ:正ちゃんの話によれば、月の輪熊が人肉の味を知ってしまったんじゃないか、ということなんだ。

立木:シマジは古くから“熊喰い人間”だけど、その人喰い熊は一頭だけなのか。

シマジ:それがよくわからないらしいんです。射殺した熊を解体すると、胃袋の中に人間の内臓が見つかるらしいんですよ。ほかの熊も人間の肉の美味さを知ってしまったのかもね。

立木:シマジが熊に食べられてもおれはこれっぽっちも同情しないぞ。お前はいままで何頭くらい熊を喰ったんだ。正直に白状しろ。

シマジ:わたしは月の輪熊はそんなに食べていませんが、北海道のヒグマは10頭くらいは食べましたか。

山田 多胡:へえ!10頭ですか。

多胡:ヒグマの左股のステーキが一番美味しいというシマジさんのお話は、美食家の間では有名ですものね。

シマジ:月の輪熊とヒグマでは断然美味さが違いますよ。いわゆる格が違うというやつです。

多胡:話が面白くてお肌のチェックを忘れていました。山田さん、ちょっとこちらにきていただけませんでしょうか。

山田:はい、はい。

多胡:判定が出ました。Dでした。

山田:Dはいい方でしたよね。

多胡:はい。これは限りなくCに近いDですから、今日お持ちしたSHISEIDO MENのセットを毎日使っていただければ、きっとすぐCになりますよ。

山田:頑張ります。今日はありがとうございました。

多胡:いえいえ、こちらこそ。

新刊情報

Salon de SHIMAJI バーカウンターは人生の勉強机である
(ペンブックス)
著: 島地勝彦
出版:阪急コミュニケーションズ
価格:2,000円(税抜)

今回登場したお店

WODKA TONIC
ウォッカトニック

東京都港区西麻布2-25-11 田村ビルB1F
03-3400-5474
>公式サイトはこちら (外部サイト)

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