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第6回 アトリエAirgead 須藤銀雅氏 第4章 人生は運と縁とえこひいきである。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

嬉しいことに、今月この連載が始まると同時に、ゲストの須藤銀雅が伊勢丹のサロン・ド・シマジのバーにやってきてくれた。そして居合わせたお客さまたちにチョコレートで作った名刺を渡していた。驚いたお客さまがチョコレートの名刺を大事そうにしまおうとすると、須藤は「どうぞ、ここで召し上がってください。代わりに紙の名刺を差し上げますので」と言って微笑んでいる。
ユーモアとは人間同士が親しくなるための潤滑油である。須藤は若いのにそのことをちゃんと知っているようだ。

立木:そろそろ今月の“資生堂のゲスト”を紹介したほうがいいんじゃないか。

シマジ:そうですね。保科さん、失礼しました。今度はあなたのお話を聞かせてください。まず、資生堂には何年に入社したんですか。

保科:わたしは2012年に現デパート営業本部に入社しました。ですから入社5年目です。2012年から3年ほどは、北東北の百貨店で営業担当をしまして、2015年4月から12月までは、北海道の百貨店で営業担当をしていました。そして今年の1月から、北海道・東北の百貨店のSHISEIDOコーナーの営業担当となって現在に至ります。

シマジ:立て板に水、という感じの答えかたが凄く気持ちがいいですね。しかし、どうして保科さんはあまたある会社のなかで、資生堂を選んだんですか。

保科:志望動機の最初のきっかけは、わたしが小学校6年生から高校2年生までの5年間、父の仕事の関係で住んでいた中国での体験です。

シマジ:へえ、そうですか。では保科さんは歴とした帰国子女なんですね。

保科:そういうことになりますか。中国に移り住んで数年が経ったころ、あちらの生活に慣れれば慣れるほど、日本との距離を感じてしまう時期があったんです。そんなとき、資生堂の「パーフェクトホイップ」という洗顔料が発売になり、中国在住の日本人だけでなく現地の方も買っているところを何度も目にしているうちに、日本が誇る資生堂という企業に強い憧れを抱くようになったんです。

シマジ:なるほど。資生堂の製品が中国と日本の距離感を縮めてくれたんですか。わかるような気がします。

保科:また上海のデパートに行くと「AUPRES」(オプレ・資生堂の中国専用高級化粧品ブランド)コーナーでたくさんの方が買い物をされていました。その光景を目撃したとき、日本人であることの誇りを持つと同時に、世界中で愛される商品を作り出している資生堂でいつか働きたいと思うようになったのです。

シマジ:なるほど。企業にとってはいい製品を作りだすことが、リクルーティングにも繋がっていくんですね。

保科:たしかにそうだと思います。実際に就職活動をスタートし、資生堂のことを知れば知るほど「資生堂で働きたい」という気持ちが募ってきたんです。美しさを通じて世界中の人々を幸せにしたい、また、日本ならではのおもてなしのこころを世界に発信していきたいと思い入社いたしました。

シマジ:現在は北海道と東北エリアのSHISEIDOコーナーを担当しているんですよね。

保科:そうです。主な業務内容はデパートの店頭のビューティーコンサルタント(以下BC)がスムーズに活動できるようにサポートしたり、お得意先さまに対して媒体掲載やイベントのときの会場確保の交渉をしたりしています。デパート営業本部のオフィスは東京にあり、入社以降ずっと出張エリアを担当しておりますから、週に2、3回は出張に出ており、長距離移動なので疲れも正直溜まりますが、店頭へ行きBCさんたちと話をしているうちに、驚くほど疲れが取れてしまいます。
BCさんたちと新製品の感想を語り合ったり、最近あった出来事を笑いながら話したりしているときはとても幸せを感じますね。そんなときわたしは、資生堂に入ってよかったとあらためて実感しています。

シマジ:どんな会社でも、ここに入って幸せだと思えるのがいちばんですよ。

立木:シマジも集英社に入社して幸せだと思っていたんだろう。

シマジ:そうです。しかも週刊プレイボーイを創刊するとき、新人はたまたまわたし1人だったんですから、恵まれていましたね。

立木:おれもその昔シマジと一緒に会ったけど、本郷さんは素敵な方だったね。

シマジ:75年間の人生を振り返ってみて確かに言えることは、「人生は運と縁とえこひいき」に尽きるんじゃないかということですね。入社試験の面接で本郷専務にお会いしたことが、わたしの編集者人生のすべてのはじまりです。

須藤:「人生は運と縁とえこひいき」ですか。いい言葉ですね。

シマジ:わたしが須藤に会う前に牧浦侑というバーマンに会っていたから、今日こうして須藤が立木義浩巨匠に撮影されているんだよ。

須藤:ありがとうございます。本当に光栄なことです。せっかくなので、この連載記事を弘前の両親に送ってあげようかと考えているんです。

シマジ:それはいいことだよ。親孝行になるかもね。

牧浦:絶対に親孝行ですよ。須藤君のご両親は、息子が東京で独立してちゃんとやっていけているかどうかを心配しているに違いありません。

須藤:牧浦さん、ありがとうございます。いままでぼくのためにプライベートな時間をどれほどつかっていただいたことか、本当に感謝しています。

シマジ:その気持ちが大切だよ。でも須藤は将来きっと成功するだろう。もう何年もしないうちに、タッチャンとおれが道端に立っていると、須藤がポルシェに乗って素通りして行く日がくるかもしれない。

須藤:そんなことはゆめゆめあり得ません。万が一、ぼくがクルマに乗っていて立木先生とシマジ先生をお見かけするようなことがあれば、クルマから降りて必ずご挨拶いたします。

立木:アッハハハ。須藤、その初々しいこころを忘れるなよ。おれも須藤は成功すると思うね。さっき食べたチョコレートひとつをとってもそう感じる。

須藤:立木先生、ありがとうございます。

シマジ:須藤のチョコレートは伊勢丹のサロン・ド・シマジのバーでも置くように努力するからね。愉しみに待っていてな。

須藤:ありがとうございます。

シマジ:うちのスパイシーハイボールには須藤の作る「スモーク」が合うし、おれのブレンドの紅茶には「レッドティーSHIMAJI」がピッタリだね。今月の12日でサロン・ド・シマジはオープンして5年目に入るから、ちょうどいいタイミングだと思う。

須藤:サロン・ド・シマジにはSHISEIDO MENも大量に置いてありましたよね。

シマジ:そうだよ。わたし自身12年間も、1日も休むことなくSHISEIDO MENにお世話になっているからこそ、この通りハリのある肌を保っていられるんだよ。

保科:あっ、そうそう。須藤さんのお肌チェックを忘れていました。ちょっとこちらにいらしていただけますか。

須藤:判定が気になりますね。

保科:判定が出ました。Dでした。

シマジ:たしか侑ちゃんはCだったよね。

牧浦:シマジさん、よく覚えていてくれました。そうです、Cです。須藤君の上でよかったです。

保科:でも須藤さん、Dでもご立派ですよ。

立木:シマジ、お前はジョーカーなんだから、1つチョコレートのジョークでも須藤へのはなむけにやってくれよ。

シマジ:おっと、急に振らないでくださいよ。でも、そう言われるならやりましょうか。
「ある老人がベッドの上で最期のときを迎えようとしていた。すると階下の台所から彼の大好きなチョコレートクッキーを焼いている甘い匂いが漂ってきた。老人はありったけの力を込めてベッドから起き上がり、這うようにして部屋を出て、必死の思いで階段を下りて、なんとかようやく台所に辿り着いた。
そこでは彼の老妻が焼き上がったばかりのチョコレートクッキーをオーブンから取り出すところだった。老人は歓喜の唸り声をあげながら、最後の力を振り絞ってチョコレートクッキーに手を伸ばした。すると老妻が彼の手をビシッと叩いて言った。「ダメダメ、触らないで!これはお葬式用なのよ」

立木:アッハハハ。即興にしてはよくできている。

須藤:アッハハハ。面白いです!

シマジ:そう? ありがとうね。

新刊情報

Salon de SHIMAJI バーカウンターは人生の勉強机である
(ペンブックス)
著: 島地勝彦
出版:阪急コミュニケーションズ
価格:2,000円(税抜)

今回登場したお店

アトリエ  アールガッド
東京都中野区中央1-20-34コート矢口1F
03−6318−0131
>公式サイトはこちら (外部サイト)

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