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第2回 神宮前 La Patata 土屋孝一氏 第1章 幸福な人生は、幸福な食卓から始まる。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

老舗のイタリアン「La Patata」のオーナーシェフ、土屋孝一(62)は誰もが認める名シェフであり、尚かつ、ファーマーである。ここで出される野菜のほとんどは土屋ファーマーが丹精込めて作った“作品”であり、「La Patata」では季節ごとのさまざまな“作品”が料理に使われている。
この素敵なイタリアンを最初に知ったのは、新宿伊勢丹のバー「サロン・ド・シマジ」の常連客モリタコウイチに招待されて行ったときであった。独身貴族のモリタは稀代の美食家である。わたしも大好きなヴェネチアの「イーヴォ」で食事をするためだけにJALでパリに飛び、乗り継ぎをしてヴェネチアへ向かうのだという。そのモリタが愛してやまない料理が、東京は神宮前の「La Patata」で、土屋シェフの“作品”によって作られているのである。
人生は出会いである。腕利きのシェフに出会えること、そしてそのシェフの手により大牢の滋味を口にできる幸福感が、その人の人生をより豊かなものにするのではないだろうか。

シマジ:土屋シェフ、今日はよろしくお願いします。

土屋:こちらこそ。おやまあ、立木先生ではないですか。

立木:ここは前にも来たことがあるような気がする。

シマジ:この店がオープンしてもう40年経つらしいですよ。土屋シェフがオーナーになってからでも、早23年が経っているそうです。以前は某有名アパレルメーカーが経営していたそうですが、土屋シェフは若かりしそのころから働いているそうです。

土屋:そんな昔の話はやめましょう。

シマジ:こちらは今日の資生堂からのゲスト、廣井あゆみさんです。

廣井:廣井です。よろしくお願いいたします。

立木:よろしくね。

シマジ:廣井さん、ランチは当然抜いてきたでしょうね。

廣井:はい。朝も昼も抜いてきました。

シマジ:それは感心、感心。

土屋:では早速作りましょうか。立木先生、料理の撮影はこのテーブルを使ってください。

立木:うん、いい感じだね。

土屋:最初の料理は、うちの畑で取れた野菜の盛り合わせのサラダです。

シマジ:マイサラダですか。

土屋:では、立木先生、ここに置きますね。

立木:これは凄い。野菜が活き活きしているね。正面はどっちなの。

土屋:先生がいいなと思う角度でご自由にお撮りください。

立木:ルッコラの葉が大きいね。枝までついているんだ。お嬢、撮影が済んだらすぐそちらに回すから待っててね。朝も昼も抜いてきたとはいい心がけだ。はい、撮影終了!シマジ、早く彼女の前に持って行ってあげな。

シマジ:廣井さん、お待たせしました。どうぞ。土屋シェフ、どんな野菜が入っているか、説明していただけませんか。

土屋:こちらがウイキョウです。

シマジ:ルッコラの葉っぱも大きいけど、ウイキョウも大きいですね。

土屋:そしてこれがキャステル・フランコで、これがラトゥガ。それからトマトです。トマト以外はすべてわたしが種から植えて育てた野菜です。

廣井:いただきます。うん、パリパリしていて美味しいです。香りも強い。とっても新鮮ですね。

土屋:こちらがシマジさんの分です。少し量を少なくしてあります。

シマジ:白ワインが欲しいですね。なにかハウスワインでいいですから、廣井さんの分とわたしの分を1杯ずついただけませんか。

土屋:かしこまりました。

立木:土屋シェフ、次はなんですか。

土屋:フランス産のホワイトアスパラをボイルして網で焼いたものを、酸味のあるドレッシングで和えたものです。温泉タマゴを添えて、羊のチーズ、ペコリーノ・ロマーニャ、黒トリュフをかけています。はい、どうぞ。

立木:見るからに美味そうだ。これは今がシーズンのものなの。

土屋:ホワイトアスパラは最初にフランス産が出回って、そのあとイタリア産が出てきます。段々大きくなってきます。

立木:おれも予約したくなってきたな。ホワイトアスパラの撮影はOK。

シマジ:廣井さんはすでにサラダは平らげてしまいましたね。

廣井:すみません。あまりにも美味しくて、すぐに食べ終わってしまいました。

シマジ:謝ることはありません。では今度はホワイトアスパラの料理です。これは白ワインと相性がいいはずです。どうぞ。

廣井:いただきます。香りが堪りませんね。温泉タマゴはどのように食べればいいんでしょうか。

土屋:ホワイトアスパラを絡めるようにして召し上がってください。シマジさんの分も用意してあります。

シマジ:わたしはこれで今年のホワイトアスパラは3回目かもしれませんね。この美味さは何度食べても飽きませんね。

廣井:ホントに美味しいです。驚きました。歯ごたえがあって、この歯触りがまたいいですね。今日は感動です。

シマジ:まだまだ本番はこれからですよ。土屋シェフ、次はなんですか。

土屋:シマジさんの大好物のヤリイカのソテーです。レモンとペッパーで味付けしています。立木先生、どうぞ。

立木:うん、絵になるヤリイカだ。また香りが凄いね。

シマジ:このヤリイカはあまり焼かないで、これくらいの半生で食べるのが堪らないですね。

立木:これはおれじゃなく、誰かがスマホで撮っても十分美味そうに写るね。

シマジ:そこを巨匠、プロらしくさらに美味そうに撮ってください。

立木:うん、芯を食ったような写真が撮れた。ヤリイカの撮影は終了。

シマジ:レンズの向こうに神と悪魔が降りてきましたか。

立木:そんな気がする。

シマジ:では廣井さん、お待たせしました。どうぞ。これも白ワインが抜群に合いますよ。

廣井:本当に、見るからに美味しそうです。いただきます。うん、このヤリイカの歯ごたえも堪りませんが味が凄いです。レモンの香りと酸っぱい味がアクセントになっています。

土屋:ちゃんとシマジさんの分も用意してあります。どうぞ、召し上がってください。

立木:そこに一緒に並んで仲良くカップルで食べているのを撮ろう。シマジ、顔が怖い。恋人と食べている気持ちになってくれ。

シマジ:そう言えば、パリの老舗「タイユバン」のレストランに行ったとき、カップルが入ってくるとこうして並んで座らされていましたよ。ほかのお客への見せしめのような感じでした。日本は向かい合わせが普通ですから、驚きました。

立木:おれはこんな美人と食事しているんだ、と自慢したいんじゃないの。ところで土屋シェフ、最後の料理はなんですか。

土屋:これもシマジさんが近頃必ず召し上がる、サクラエビとサルディニアのカラスミを乗せたパスタです。では立木先生、行きますよ。

立木:これも絵になるね。赤いサクラエビと黄色のからすみと白いパスタがよく合っている。このサクラエビはどこのものなの。

土屋:これは静岡県の由比産です。香りが凄いでしょ。

立木:うん、それに美しい盛りつけだね。今日はいい写真が撮れた。ではみんなを撮ろう。

シマジ:では廣井さん、最後の締めでサクラエビのパスタを召し上がってください。

廣井:今日はわたし、幸せ者です。サクラエビパスタ、いただきます。カラスミもかかっているんですか。豪華ですね。うん---。言葉を失いました。

シマジ:サルディニアのカラスミは日本の和食で出るものよりしょっぱいのが特徴です。わたしは以前サルディニアに行ったことがありますが、いわゆるボッタルガのパスタの美味さに驚き、ランチでもディナーでも食べたほどです。もちろんサクラエビはなかったですけど。

土屋:廣井さん、もっとよくかき混ぜて召し上がるといいと思います。

廣井:わかりました。こうですね。

立木:ここは土日は営業しているの。

土屋:はい。月曜は定休日ですが、それ以外の平日と土日は昼も夜も営業しています。

新刊情報

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(ペンブックス)
著: 島地勝彦
出版:阪急コミュニケーションズ
価格:2,000円(税抜)

今回登場したお店

トラットリア ラ・パタータ
東京都渋谷区神宮前2-9-11 シオバラ外苑ビル 1F
Tel: 03-3403-9664
>公式サイトはこちら (外部サイト)

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