Back to Top

第5回 中野 モルトバー South Park 二方治・美紀夫婦 第1章 シングルモルトは夜の顔。

撮影:立木義浩

中野にあるモルトバー「サウスパーク」を初めて訪ねたとき、わたしがこれまで「サロン・ド・シマジ」のブランドでボトリングした13本のシングルモルトがすべて揃っていることにまず驚いた。しかも7月19日から8月31日まで、「salon de SHIMAJI FAIR」をやっているというのだから嬉しいではないか。
オーナーの二方美紀さんに頼まれ、13本の愛しいボトルすべてにわたしのサインを入れた。ボトルには1本1本にコメントとシングルのハーフ<15ミリリッター>の値段がついていた。13本のうちの最高点はグレンファークラス32年で95点の高得点がついている。1杯2500円とはこれまた安い。次に高得点の駒ヶ岳27年は94点で2500円。最初にボトリングした思い出深いイチローズモルト羽生26年は、93点で2500円。最も低い点数がバルブレア15年で、88点で1300円。どれもこれも的確な点数だと感心した。
最後に総評がこう書かれている。
「ほとんどがボトルスペックの最高レベルの味わいを出している。全体的に味の濃いものが多く、シガーに最適。開いた時の変化が大きく、2度、3度楽しめる」
わたしは自分の舌が見抜かれているような恥ずかしい気がしたと同時に、オーナーに脱帽し、感謝した。

シマジ:立木先生、こちらがこのバーのオーナーの二方美紀さんと旦那さんの二方治さんです。

二方夫妻:今日はよろしくお願いいたします。

立木:立木です。こちらこそよろしくね。えっ、親子ではなくてホントにご夫婦なの。

二方夫妻:はい。申し訳ありません。

シマジ:お二人はおいくつ違いなんですか。

二方治:わたしが55歳で、妻が38歳ですから、17歳離れています。

シマジ:それからもうお一人、こちらが資生堂の吉村智恵子さんです。

吉村:資生堂広報部の吉村です。今日はどうぞよろしくお願いいたします。

立木:よろしくね。

立木:じゃあ、最初に二方親子、ではなかった、二方夫婦を撮ろうか。

シマジ:タッチャン、ご主人は今日の取材のために、わざわざ会社を半ドンで切り上げて、ここへ駆けつけてくれたんですよ。

立木:えっ、ご主人はサラリーマンなの?

二方:はい。トヨタのスポーツカーのディーラーをしていまして、ネッツトヨタの社員です。毎晩、会社の仕事を終えてから、妻がやっているこのバーにボランティアとしてきています。

立木:そうなんだ。それにしてもモルトウイスキーが壮観に並んでいるバーだね。ではご夫婦、もっと近づいてくれない。シマジ、なにか面白いことを言って二人を笑わせてくれないか。

シマジ:へえ、二方さんはスポーツカーとシングルモルトがお好きなんですか。なんだかその2つは水と油みたいな関係に思われますが。

二方:よく言われますが、2つとも大好きなんです。

シマジ:ここは「サウスパーク」という洒落た名前ですが、謂われは何なんですか。

二方:WOWOWの放送を観て気に入ったのですが、子どもが主人公のアメリカのアニメなんです。7歳の悪ガキが性的興味を持って大人顔負けのことを言ったり、反政府運動をしたりするブラックアニメで、アメリカに住む友人などは「サウスパーク」は絶対に観ないと言っているくらいです。それとここのバーは、紅葉山公園の下側に位置していますので、その意味も含めて「サウスパーク」とつけました。

シマジ:いつオープンしたんですか。

二方:2012年12月29日にオープンしました。ですから今年の12月29日で丸5年になります。

シマジ:シェーカーを振るのは奥さんですか。

二方:いえいえ、夕刻から藤田というバーマンが出勤してきます。

シマジ:伊勢丹のわたしのバー、サロン・ド・シマジも今年の9月12日で5周年になり、その週の土日は盛大に周年記念パーティーをやるつもりです。でもちょうどここのバーと同い年なんですね。これもご縁かもしれませんね。

二方:先日、シマジさんのお店にお邪魔して、スパイシーハイボールを飲んでその美味しさに驚きました。ピートで燻製したブラックペッパーとプッシュミルをその場で買ってきて、早速ここでも売らせていただいております。

シマジ:それはありがとうございます。評判はいかがですか。

二方:大変評判がいいですよ。飲みはじめに必ずスパイシーハイボールを注文されるお客さまが増えているほどです。

シマジ:奥さんもアルコールには強いんですか。

二方:妻は下戸なんです。妻の家族全員とわたしの家族全員が下戸でして、わたしだけが飲めるんです。

シマジ:へえ、それは突然変異ですね。

二方:いえいえ、わたしも30歳のときに悪友にそそのかされて、忘れもしないマッカラン18年をクラッシュアイスで飲まされるまで、お酒が飲めるとは思ってもいませんでした。ビール1杯ですぐ赤くなりましたしね。でもそのときマッカランの味を知ったがために、それからマッカランを買い集めるようになったのが、そもそものシングルモルトコレクターとしてのはじまりなんです。

シマジ:へえ、30歳からですか。晩学ですね。でも教えてくれた方は悪友ではなく良友ですよ。

二方:そうかもしれませんね。でもそんなわけで、サロン・ド・シマジに行くとわたしはモルトを飲みますが、妻はコーヒーか紅茶を飲んでいます。

立木:二人のショットはOK。次は4人で撮ろうか。シマジ、彼女と重ならないでくれる。そうそう、みんなでいちばんいい顔をしてくれますか。レンズをみて、そうそう、OKだ。では今度は個人個人を撮るからおしゃべりしてていいよ。

吉村:立木先生に撮っていただくなんて光栄です。この写真は家宝にいたします。

立木:嬉しいことを言ってくれるじゃないの。じゃあ、腕に縒りをかけてさらにあなたを美しく撮ってあげよう。

吉村:ありがとうございます。感激です。

シマジ:しかし先程から見ていますと、奥さんは無口で可愛い方なんですね。

立木:シマジ、それはシャイといいなさい。

シマジ:お二人はいつご結婚なさったんですか。

二方:ちょうど10年前です。

シマジ:ということは治さんが45歳で美紀さんが28歳ですか。凄く訊きづらいことですが、お二人とも初婚ですか。

二方:そうです。

吉村:お子さんはいらっしゃるんですか。

二方:おりません。わたしたちの子どもはモルトウイスキーなんです。実際の話、マンションの部屋にボトルが収まりきらなくなってこのバーを開いたようなところもあるんです。妻は子どもたちを可愛がるように毎日ボトルを磨いてくれています。

シマジ:ここの棚には何本くらいあるんですか。

二方:1000本くらいですか。あと奥に500本はあります。自宅にも500本くらいは持っていますか。

シマジ:凄い!趣味が高じてモルトバーをオープンしたんですか。

二方:まあ、そのようなことになりますか。

立木:こんなにシマジのボトルが並んでいるんだから、これを撮ってくれとシマジが必ず言うに決まっている。はい、撮ってあげるよ。シマジ、このテーブルに運んできてくれ。お前の顔は毎月2回も撮って飽きているからちょうどいい。全部で何本あるんだ。

シマジ:ここにはわたしがボトリングした13本すべてがあります。嬉しいですね!:ありがとうございます。

新刊情報

神々にえこひいきされた男たち
(講談社+α文庫)

著: 島地勝彦
出版: 講談社
価格:1,058円(税込)

今回登場したお店

サウスパーク
東京都中野区中野2-1-2 宮園コーポ B1F
Tel: 03-3229-6133
>公式サイトはこちら (外部サイト)

PageTop

このサイトについて

過去の掲載

Sound