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第11回 六本木 SPIGOLA 鈴木誠氏 第4章 資生堂は女性にやさしい会社である。

撮影:立木義浩

立木:ところでお嬢はどうして資生堂に入ったの。

シマジ:ああ、そうか。もうそんな時間になったんだ。わたしに代わってタッチャンが突然質問されたので、柏倉さんは驚いたでしょう。

柏倉:じつはわたし、その質問が出るのを、いまかいまかと気にしていたところでした。

シマジ:さすがは資生堂を代表してきた柏倉さんですね。堂々としています。ではわたしが改めてお訊きしましょうか。柏倉さんが資生堂に入社した動機はなんだったんですか。

立木:ほーら始まった!おれはこの紋切型の質問をもうかれこれ7年近く聞いているけど、なぜかこれが大好きなんだ。

シマジ:タッチャン、それはね、この質問が始まるとそろそろこの取材が終わるなって感覚があって好きなんじゃないんですか。

立木:そんなことはないよ。おれはお前の顔を撮るのはさすがに飽きて辟易しているけど、お嬢たちの表情をカメラで追いかけているのは愉しいし好きだよ。

シマジ:柏倉さん、そういうことですから、表情豊かにお答えくださいね。どうぞ。

柏倉:はい。資生堂は化粧品会社でありながら、生活、文化など暮らし全体の美の創造に貢献しているところに魅力を感じました。化粧品という事業以外にも、美容室、食品、レストラン、ギャラリー、文化誌等々、幅広い活動をしながら美の発信をしているところが好きなんです。

シマジ:たしかに東京で伝統ある高級フレンチ、いわゆるグランメゾンと言えば、“アピシウス”か資生堂が経営する“ロオジエ”か、というくらいですものね。

立木:“ロオジエ”はだいぶ前におれたちで取材したよね。

シマジ:やりました。懐かしい。あれこそ資生堂の余裕、そして誇りでしょう。銀座の一等地にあるのも魅力的ですね。

柏倉:シマジさんはよく“ロオジエ”に行かれるんですか。

シマジ:福原名誉会長のおみあしがお元気な頃は、あそこでしょっちゅうご馳走になりました。

立木:なになに、あのやんごとなき紳士の福原さんは、最近、銀座方面には出ていらっしゃらないのか。

シマジ:福原さんのダンディズムから想像するに、車イスでは許せないのでしょう。いまはリハビリ中らしいです。そのうちお元気になられたら、またスーパーランチの会を再開したいですね。

立木:そうか。それは愉しみに待つとしようね。

シマジ:柏倉さん、話が横道に逸れてごめんなさい。それで?

柏倉:資生堂は日本を代表するグローバル企業ということで、日本の文化を世界に発信しているところも興味がありました。

シマジ:そういえば、資生堂では、出席者に外国人が1人でもいるとその会議は英語でやるらしいですね。

柏倉:よく御存知ですね。その通りです。英語が苦手な社員たちには、どんどん短期留学を勧めて特訓を受けさせております。

シマジ:いずれ資生堂のなかの公用語は英語になりますかね。海外を相手にしている会社では、英語が公用語というところが既にあるようですからね。

立木:おれたちの時代と違っていまは、英語ができるかというのは、クルマの免許証をもっているかというくらいのレベルになっているんじゃないの。

シマジ:たしかにわたしが中学、高校で習った英語の先生たちは、読解力は抜群でしたけど、実際に英語を喋っているところを見たり聞いたりしたことはなかったですね。一関には外国人もいませんでしたからね。柏倉さん、また脱線してごめんなさい。柏倉さんはいつ資生堂に入社されたんですか。

柏倉:2006年に入社して3年間は九州営業本部に配属され、ドラッグストアの営業をサポートしていました。

シマジ:新入社員にはまず地方勤務をさせるという資生堂の方針がわたしは好きですね。新聞社などもそうですが、若いうちに地方の文化やそこで暮らしている人たちを知って親しくなることは、非常に大切なことだと思いますね。それから3年してどちらに異動されたんですか。

柏倉:はい、銀座オフィスに異動になりまして、企業文化部に配属され、ギャラリーHouse of Shiseidoの企画担当になりました。それから2年後、掛川の企業資料館に異動になり、創業140周年事業を学び企業文化の伝達の仕事を行ないました。

シマジ:それは資生堂の社員として貴重な、素晴らしい体験をされましたね。わたしは福原さんとのスーパーランチで、資生堂創業時のお話はたくさん聞いていますよ。それからどこの部署に行かれたんですか。

立木:シマジ、どうしてお嬢がまた異動になったとわかるんだ。

シマジ:柏倉さんくらい優秀だと、どこの部署でも欲しがるはずだと想像したまでです。

柏倉:いえいえ、わたしより優秀な社員はたくさんおります。でもシマジさんのご推察通り、2013年に中国事業部に異動になり、TR事業(トラベルリーテルの略称で免税店ビジネス)を立ち上げるためにオプレ(資生堂の中国専用の化粧品ブランド)のマレーシア導出の仕事をしました。

シマジ:オスプレイでなくてよかったですね。

立木:なにを間が抜けたことを言っているんだ。

シマジ:オヤジギャグっぽかったですね。ごめんなさい。

立木:オヤジギャグじゃない。それはジジイギャグだよ。

シマジ:そして?

柏倉:その後2015年から2017年まで、出産に伴い育児休暇に入りました。

シマジ:資生堂は女性の出産育児休暇制度が日本でいちばん整っている会社ではないでしょうか。日本の由々しき人口減少問題を食い止めている会社だと、以前から敬意を表しています。

立木:ははあ、それも福原さんからの受け売りだな。

シマジ:その通りです。

柏倉:そういえば、入社しようと思った動機としてもうひとつ、資生堂は女性にやさしい会社で、将来結婚や出産という可能性があるなかで、ワーク・ライフ・バランスを考えた働き方ができる企業だということもありました。

シマジ:資生堂は高級男性化粧品も作っていますが、やはり女性を味方につけている会社だというイメージをわたしは持っています。それも大きな企業としての売りではないでしょうかね。

柏倉:おっしゃる通りだと思います。わたしは育休から復帰後は販促品担当となり、ブランドSHISEIDOのサンプルやテスターを作る仕事をしていましたが、今年の1月からは、新しく設置されたブランドのカルチャー・アンバサダーを担当しています。

シマジ:それは具体的にどのようなものなんですか。

柏倉:「個の内なる美」を引き出す「日本の美意識」といったブランド価値を社内外に浸透させる役割となります。ですからわたしにとっては、これまでのキャリアが十分生かせるのではないかと大変わくわくしているところなんです。

シマジ:会社の仕事で、まだ誰の指紋もついていない、新しいことをするチャンスを得た人はラッキーですよ。編集者にたとえるなら、創刊雑誌に携わるような人です。柏倉さんは幸せな方ですね。

柏倉:はい、大変恵まれていると感謝しています。それからこれまでを振り返りますと、会社の創業140周年を祝して行われた、スイスやギリシャでの資生堂展を担当したことが最高の思い出です。海外で働く社員とも交流ができましたし、人を大切にする、伝統と文化がある資生堂を誇りにしている海外社員を大変頼もしく思いました。ですが、わたしの資生堂人生の原点はやはり福岡の営業時代にあります。美容部員の方やお店の担当者たちが誰よりも力になってくれたこと、わたしが去るとき本当にこころから温かく送り出してくれたことをいつも思い出して、日々の自分の気持ちを奮い立たせています。あっ、鈴木シェフのお肌チェックを忘れていました。すみませんでした。

鈴木:さっきからまだかまだかと、顔を洗って待っていたところです。

柏倉:生年月日を西暦でおしえていただけますか。

鈴木:1972年1月4日です。

シマジ:やっぱりシェフはおめでたい人なんだ。

柏倉:はい、判定が出ました。Dでした。

シマジ:鈴木シェフ、Dの判定はおめでたいよ。よかったねえ。

鈴木:ありがとうございます。

新刊情報

神々にえこひいきされた男たち
(講談社+α文庫)

著: 島地勝彦
出版: 講談社
価格:1,058円(税込)

今回登場したお店

SPIGOLA~スピーゴラ~
東京都港区六本木4-4-4
Tel:03-6804-3250
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