第7回 西麻布蕎麦たじま 店主 田島基行氏 第1章 その職人技は鋭いエッジが立っていた。

<店主前曰>

立木義浩先生も蕎麦好きである。蕎麦の専門雑誌「蕎麦春秋」でいろんなところの蕎麦屋を食べ歩く連載をやっている。そのタッチャンがわたしの大好きな「たじま」を知らなかった。灯台下暗しとはこのことだろう。蕎麦通のタッチャンにいわせると、通の客は店に入ってくるなり、「ぬる燗と盛り蕎麦」というそうである。たしかにわたしも「たじま」にはスパイシーハイボールセットは置いていない。やっぱり日本酒が合う。いつもわたしは「三千盛」の冷酒を飲んでいる。ここの蕎麦は田島基行の手打ちである。毎朝7時ごろ店に入り、蕎麦粉を水でこねて、はじめは麺棒で丸く平らに延ばし、それから角張った長方形に仕上げていく。そして専用の幅広包丁で切っていく。そのとき蕎麦の一本ずつにエッジが立っていないと一流の手打ち蕎麦とはいえないそうだ。「たじま」の蕎麦は十分エッジが立っている。その鋭いエッジが食べる人の唇と舌と喉の入口を心地よく刺激する。それが蕎麦職人の技であり、それがまた蕎麦喰いにとっての堪らない悦楽なのである。

田島 シマジさん、大がかりな取材なんですね。いつもそうなんですか。

シマジ いやいや、今日は「たじま」の手打ち蕎麦にひかれて、資生堂から関係者がいつもより大勢きているんです。だから取材が終わったら営業時間外ですが、わたしに免じて総勢7人分の蕎麦を作ってあげてください。それから写真家の立木さんが大の蕎麦好きなんです。これからしょっちゅうやってくると思いますが、よろしく、えこひいきしてあげてくださいね。

立木 立木です。よろしく。

田島 こちらこそよろしくお願いします。

シマジ それから今日の資生堂からの助っ人嬢は芝﨑さんです。芝﨑さん、まずは田島さんの肌の測定をやっていただきますか。

芝﨑 芝﨑と申します。よろしくお願いたします。

田島 今日はよろしくお願いします。わたしは蕎麦の職人ですので、化粧品は一度も使ったことがありません。

シマジ なるほど化粧品の匂いを蕎麦が嫌うんですか。それなら田島さんは朝ではなく、夜寝る前に洗顔してSHISEIDO MENを使ってください。本日、謝礼としてSHISEIDO MENの5アイテムを差しあげます。使い方はわたしがのちほど懇切丁寧にお教えしましょう。

田島 これはみるからに箱からして高そうな男性化粧品ですね。

シマジ 高いですがその効果は絶大です。わたしが保証します。

田島 たしかにシマジさんの肌艶はいつも健康そうでピカピカですものね。

シマジ わたしは毎朝使ってもう10年になりますか。お蔭で顔の雰囲気はますます年齢不詳になってきました。

立木 その年齢不詳の妖しさを撮るのが大変なんだ。お3人、一緒にレンズをみてくれますか。

芝﨑 田島さんのお肌の測定の結果が出ました。Eでした。

田島 Eはたしか普通なんですよね。

シマジ ちゃんとこの連載を読んでいますね。Eはまあ普通ですね。田島さんは毎日蕎麦を茹でていて、そのとき熱い蒸気がいつも顔にかかるのが功を奏して、いいところいくかなと期待していたんですがね。

田島 期待に応えられなくってごめんなさい。

芝﨑 今夜からSHISEDO MENをお使いになれば大丈夫です。3ヶ月したらどこのデパートでもいいですから、SHISEIDOの売り場に行ってチェックしてみてください。これはDに近いEですから、すぐDになると思います。

シマジ どうせなら新宿伊勢丹のSHISEIDOにきてください。そのあとサロン・ド・シマジに寄って一杯飲んでください。

田島 そうですね。そうしましょう。

立木 田島さんは一代でこのお店をつくったの。

田島 いえいえ、わたしの実家は千駄木で祖父の代から蕎麦屋をやっております。いわゆる実家は街の普通の蕎麦屋です。

立木 そうか、あなたが一念発起してこのお洒落な手打ち蕎麦の店を作ったわけだ。

田島 そうです。街のなかのごちゃごちゃしたところではなく、いくらか静かで空気感がきれいなところと思いましてここをえらびました。

立木 ここは有栖川公園も近いし、愛育病院も近くにあるし、東京では静かな場所だよね。こういう清楚な蕎麦屋は雑居ビルのなかでは場違いな気がするかもね。それにしても「たじま」の看板が小さ過ぎて思わず通り過ぎるところだった。

シマジ はじめての人とここで待ち合わせると、たいていの場合、店がみつからずによく電話がかかってくる。

田島 本当にすみません。洒落すぎだとよくいわれます。

シマジ でもまあ、一度覚えてもらえば、ここは蕎麦が抜群に美味しいから、喰い意地の張ったお客はリピーターになるだろうけどね。

立木 田島さんは何歳から蕎麦の修業をしたの。

田島 幼いころから祖父と父の仕事ぶりを間近でみてきていたんです。わたしは蕎麦が大好きで、毎日蕎麦ばかりたべ蕎麦湯を飲んでも、飽きませんでした。本格的にほかの蕎麦屋で修業したのは、大学を卒業してからです。まだ大学生のころ、実家の店にあるお客さまが蕎麦の名店が載った本を忘れていかれたんです。その方はその後取りにいらっしゃらなかったので、その本を頼りに東京の蕎麦の名店を隈無く食べ歩きしたんです。

立木 で、どこで修業したの。

田島 そうですね。はじめは森下の老舗「京金」に入り、そのあと新橋の「本陣房」、白金の「利庵」で修業しました。合わせて約10年働いてから2005年ここ西麻布で「蕎麦たじま」を出店したのです。

立木 いい老舗の蕎麦屋で修業しているね。今日の資生堂からの助っ人嬢は幸せだよ。

芝﨑 わあ、うれしい、よかった。わたしお蕎麦が大好きなんです。

立木 何か今日は資生堂の関係者が多いようだね。

シマジ 日本人はやっぱり蕎麦が好きなんですかね。

資生堂一同 よろしくお願いいたします。

シマジ ここの蕎麦を食べることは知る悲しみを知ることだよ。まあ、知らない悲しみより上質な悲しみなのだから、リピーターになって味わってください。

立木 今年の北海道の新蕎麦はどうですか。

シマジ さすがは蕎麦のことは詳しいね。今日は楽かもしれない。

田島 8月の新蕎麦もよかったです。11月に出る新蕎麦も今年はいいんじゃないですか。

立木 シマジ、蕎麦は11月に採れた蕎麦が年を越したころがいちばん美味いといわれているんだ。それから北海道の蕎麦の出来不出来でよその蕎麦の値段が影響して値上がりしたり、安かったりするんだよ。

田島 よくご存じですね。

立木 蕎麦の雑誌「蕎麦春秋」で長いこと連載してそこらじゅうの蕎麦の食べ歩きをしているからね。

田島 へえ、そうですか。うちの蕎麦を食べていただくのが怖くなりました。

立木 今日は撮影に集中しますからいただきません。あとで改めて食べにきますね。田島さんは端正なお顔をしているから、きっとエッジが立っている蕎麦を食べさせてくれるでしょう。

田島 いやいや、わたしの手打ち蕎麦はまだまだ修行中で、エッジはそんな自慢するほど立っていません。

立木 この謙虚なところがいいね。シマジも少し見習うべきじゃないか。

シマジ タッチャン、ここの蕎麦もさることながら、蕎麦湯が濃くておかわりするくらい美味いんだよ。

立木 まったくシマジはおれのいうことを全然聞いていないんだから。

もっと読む

今回登場したお店

蕎麦たじま
東京都港区西麻布3-8-6
>公式サイトはこちら (外部サイト)

商品カタログオンラインショップお店ナビ
お客様サポート資生堂ウェブサイトトップ

Copyright 2015 Shiseido Co., Ltd. All Rights Reserved.