撮影:立木義浩
<店主前曰>
「マサズキッチン」はわたしのマンションから歩いて3分のところにある。シェフの鯰江真仁(なまずえまさひと)は、その苗字からしてまさに料理人らしい名前を授かっているではないか。彼はいまや中華料理ならなんでもお手のものだが、高校時代、岐阜の街にある普通の中華料理店にアルバイトとして入ったのが、この道への第一歩であった。はじめはホールを担当していたのだが、料理人に「お前、やってみるか」といわれて運よくキッチンに入れてもらった。鯰江は小学校の卒業アルバムに、将来の夢は料理人になることだと書いていたのだが、実際に包丁を握ってみるとリンゴの皮も剥けなかったそうである。
一方本日の資生堂からのゲストは、入社6年目の石原万里江さんである。昨年10月から国際マーケティング部所属となり、資生堂メンを中心に商品開発担当に従事している。嬉しいことに、本日はSHISEIDO MENの新商品の情報を持ってきてくれた。
シマジ: 石原さん、こちらが中華料理の名人シェフ、鯰江さんです。名前からして美味しそうでしょう。
鯰江: よろしくお願いします。わたしはシマジさんのお抱え料理人みたいなものです。メニューになくても、シマジさんにこういうものが食べたいといわれればなんでも作っているんですよ。
石原: 資生堂の石原です。本日はよろしくお願いいたします。
シマジ: こちらはわれらがタッチャンこと立木義浩先生です。
立木: よろしくね。なんだって、シェフはシマジのいう通りに料理を作ってやっているんだって? そんなお大尽みたいなことをシマジがするのは10年早い。そんなに甘やかさないでください。たまにおれがきてチェックをしますからね。
鯰江: いえいえ、立木先生、シマジさんにはうちのほうが並々ならぬお世話になっているんです。あの3・11の夜も誰もきてくれないなと思っていたら、4名で予約を入れていたシマジさんが店にやってきてくれたんです。その夜のお客さまはシマジさん1人でした。
立木: シマジはここまでは這ってでもこられる距離に住んでいるんだよ。それぐらい当たり前のことじゃないの。
鯰江: でも店としては誰もこないというのは縁起が悪いものなのです。
シマジ: その後もお店は大変だったようだね。
鯰江: そうです。震災後1ヶ月は閑古鳥が鳴いていましたね。2ヶ月目もパラパラとしかお客さまが入らなくて、もうダメかと思ったくらいです。3ヶ月目に入ってようやく少しずつお客さまに戻ってきていただいて、ホッとしましたね。
シマジ: 「マサズキッチン」みたいに大繁盛している店でも、あの震災にはずいぶん影響を受けていたんだね。
石原: それでは恒例のお肌チェックをいたしましょうか。
鯰江: 顔を洗ってこようかな。
シマジ: 受験の直前に慌てて参考書をみるような真似はやめたほうがいい。
石原: 凄いです! Dでした。大抵の男性の方はEが多いのですが、鯰江さんはなにかお手入れをなさっているのですか。
鯰江: 別になんにもしていません。
シマジ: 中華料理の油がほどよく肌に作用したんでしょうか。
鯰江: そうかもしれません。
シマジ: ところで今日はなにを作ってくれるんですか。
鯰江: いつもシマジさんが好んで召し上がっているものがいいでしょう。チャーシューを焼きました。これを切らずに丸ごと写真に撮ってもらうと映えるでしょう。
立木: いいね。まずはこれからいこうか。お嬢はすべて撮影が終わってから召し上がれ。
石原: 存じあげております。いままでの連載をすべてチェックして参りました。
立木: お嬢、やるじゃない。
シマジ: ここはまだほかのお客さまがいるから別室で撮りますか。
立木: おや、ここは狭いな。でも心配しなくてもいい。シマジのお蔭で狭いのには馴れている。
シマジ: 鯰江シェフ、次はなににしましょうか。
鯰江: これもシマジさんが好きなテール・スープといきますか。
シマジ: これはメニューには載ってないけど、3日前までに注文すると作ってもらえるという特別料理なんですよ。
鯰江: 今日は写真映りがいいようにトマトを入れますか。シマジさんがいつも食べているのはトマトが入っていないのですが。
シマジ: いいね、いいね。次は小籠包でしょう。
鯰江: それでいきましょう。小籠包は湯気が立っているうちに撮影してもらいましょうか。
立木: シェフ、お任せください。早い、巧い、安い、がわたしの売り物ですから。
シマジ: 最後はやっぱり冷やし担々麺かな。
鯰江: そうしましょう。
シマジ: ここの冷やし担々麺は抜群ですよ。この冷やし担々麺を食べると、夏がきた!という感じがする。
鯰江: そんなことをいって、シマジさんは年中うちの冷やし担々麺を召し上がっているではありませんか。
立木: 我が儘なシマジはここでもやりたい放題やっているんだな。
鯰江: 仕方がないのでほかのお客さまにも出しましたところ、お陰さまで大評判になり、いまでは真冬でも出しております。
石原: 美味しそうですね。
立木: 撮影したら光より速く渡してあげるから召しあがりなさい。
石原: じつはわたし、ランチを抜いてきたんです。いままでの先輩に訊きましたところ、ランチを抜いていったほうがいいわよ、と忠告されたんです。
立木: お嬢は取材力もあるんだね。ではシェフ、どんどん部屋に運んできてくれる?カメラを構えて待っているね。
石原: シマジさん、今日はSHISEIDO MENの朗報があります。
シマジ: なになに、新しい化粧品が出るんですか。
石原: リメイクなんですが、しばらく販売していなかったヘアワックスが装いも新たに再登場します。
シマジ: 待ってました。おれはあれがなくなって仕方なく女性もののヘアワックスを使っているんだよ。再登場とは嬉しいね。
石原: 発売は9月21日です。
シマジ: 9月21日か。手帳に書いておこう。あれ、日曜日ではないですか。わたしが伊勢丹のサロン・ド・シマジで働いている日です。ともかく早速3個買いますね。あのヘアワックスを待っている愛好者は大勢いますから売れますよ。中身はどのように変わったんですか。
石原: まずはより整髪しやすく、髪の毛のハリとコシをアップさせるようにし、アデノシンも配合になりました。
シマジ: あの資生堂アデノゲンに入っているアデノシンが配合されているんですか。育毛効果もあるんですか。
石原: それはどうでしょうか。頭皮にじかに塗るものではありませんので。でも今度のヘアワックスは整髪力を強力にしてありますから、湿度の高いところでもヘアスタイルをキープ出来ます。
シマジ: そう、ちょっと雨に当たったくらいでヘアスタイルが台無しになるのはイヤだからね。
石原: より一層トリートメント効果を強化するために、ロイヤルゼリーエキスを配合しています。またその効果で自然なツヤが生まれます。
シマジ: いいね、いいね。髪の毛のツヤはエロいからね。
石原: また、整髪力は高めていながら、新しいヘアワックスは洗い流しがしやすいように新処方されております。
シマジ: そうなんだよ。ほかのヘアワックスを使うと洗い流しに手間取るんですよ。サッと塗ってヘアを固めて、しかもシャンプーのときには落としやすいのが理想だよね。早く使いたいですね。
石原: シマジさんといえどあと3ヶ月待ってください。研究員たちが、従来のヘアワックスを愛用してくださったシマジさんをはじめ多くの愛好者のみなさまに納得していただける新商品を開発した、と自信を持って語っておりました。
シマジ: いまからワクワクするねえ。