第11回 恵比寿 言の葉 田村誠氏 第1章 料理人はえこひいきされてこそ。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

当連載1月のゲストは「言の葉」の鉄板焼きの腕利きシェフ渡邊直樹だったが、2月は同じ「言の葉」で和食を担当している、これまた腕利き料理人田村誠(38)の登場である。
今夜は和食にしようか、洋食にしようかと自分の体に訊いて迷うことがあると、わたしはよく「言の葉」に行く。「今日は新鮮な、いいノドグロが入りましたよ」という田村料理人の言葉に魅了されて、「では塩焼きにしてくれる?」といい、鉄板の前に立つ渡邊シェフの顔をみて「すまないけど、小さなハンバーグを作ってくれる?」と和洋両方をおねだりする。
料理人にえこひいきされてこそ、豊かなる人生なのである。

シマジ:タッチャン、先月と同じ店ではありますが、今日は和食の料理でいきますからね。よろしくお願いします。それからわざわざ仙台からいらしてくれた資生堂の目黒由佳さんです。

目黒:目黒です。よろしくお願いします。

立木:仙台に住んでいるなら、海の幸はいつも食べているんじゃないの。お嬢は舌が肥えているだろう。

目黒:でも、わたしは日ごろそんなにいいお魚は食べておりません。

田村:今日は腕によりをかけて頑張ります。こちらにシマジさんがいつも飲んでいらっしゃるスパイシーハイボールを用意しております。

シマジ:スパイシーハイボールはわたしが作るとして、今日はなにを食べさせてくれるの?

田村:はい、まずは刺身の盛り合わせからはじめたいと思います。カレイの刺身ですが、今日のはカレイのなかでも幻のカレイといわれている松皮カレイです。それから天然の大間の本マグロ、それに北海タコです。召し上がる前に立木先生に撮影してもらうんでしたよね。

シマジ:先月の手順を田村はちゃんとみていたんだね。巨匠、ではよろしくお願いします。

立木:任せなさい。お嬢、すぐそちらに渡すから待っててね。

目黒:はい。スパイシーハイボールを飲みながらゆっくり待っています。これは美味しいですね。ブラックペッパーがかかっているんですか。はじめて飲みました。

シマジ:このブラックペッパーはわざわざ一度スコットランドまで送り、ピートで燻製したあと送り返してもらっています。すべての美味しいものは手間と暇をかけてできあがるんですよ。

立木:はい、どうぞ。お嬢、召し上がれ。

目黒:このカレイのお刺身はプリプリしていて美味しいですね。

シマジ:タコの刺身も新鮮で美味いね。

目黒:この大間のマグロも程よく脂が乗っていてとても美味しいです。

シマジ:2番目はなんですか。

田村:シマジさんの好きなノドグロです。長崎は壱岐の島産のノドグロを塩焼きにしてみました。

立木:じゃあこっちに回してくれる?

目黒:大きなノドグロですね。わたし1人で食べられるでしょうか。

シマジ:大丈夫です。わたしが少しお手伝いしますから。

立木:はい、一丁あがり。

シマジ:目黒さんからお箸をつけてください。

目黒:いただきます。美味しいです。ノドグロは三陸の海にはいないんではないでしょうか。

シマジ:そうです。日本海のほうの魚ですよね。うん、これはよく脂が乗っているノドグロだね。

目黒:どうしてノドグロというんですか。

シマジ:喉のところが黒いからでしょう。

立木:田村という名字は築地の和食の名店「田村」と関係があるの?

田村:それはまったく関係がありません。では、次はブリのカマの煮付けです。立木先生、どうぞ。

立木:見るからに美味そうだ。うん、いい匂いだね。

シマジ:この料理はわたしは何度も食べていますが、きっと目黒さんのほっぺが落ちますよ。

目黒:ブリのカマですか。お魚はなんでもカマが美味しいですよね。

立木:はい、お嬢。

目黒:ありがとうございます!どこから食べるのがいいんでしょうか。

シマジ:お好きなところから召し上がってください。

目黒:ホントに美味しいです。今日は仙台から来た甲斐がありました。

シマジ:仙台といえばその後の復興はどうですか。

目黒:そうですね。震災からまもなく5年になりますが、住宅やマンションの価格が震災前に比べてかなり高騰しています。また仙台市に新しい地下鉄が開通しましたし、新しい駅前複合ビルのオープンを間近にして活気に溢れています。多くの人が利用していた、仙台と石巻を繋ぐJR仙石線も去年の夏に4年ぶりに開通して便利になりました。被災した沿岸部では震災復興住宅が次々と完成して、避難所から引っ越す人たちが多く、新しい自治体も誕生しています。そのようにして、少しずつですが、着実に前に進んでいるように感じられます。でも、まだまだこころに傷を抱いている人は多いと思います。わたしは資生堂での仕事を通じて皆さまが元気で笑顔になれるお手伝いが出来たらいいなあと思っています。

シマジ:一気にまくし立てましたね。でも、その志はいいんじゃないですか。人生は「元気こそ正義なり」ですからね。田村、最後はなにを出してくれるの?

田村:最後はやっぱりシマジさんの大好きなイクラとウニでしょう。

目黒:わあ、わたしも大好きです。

田村:イクラは去年の秋に沢山出回ったときに作って冷凍していたものですが自信作です。ウニは北海道産です。鮮度抜群ですよ。どうぞ。いや、まずは撮影でしたね。

立木:なになにシマジはこれをいつも食べているのか。許せん!

シマジ:田村、今日はウニイクラ丼を巨匠のためにもう一つ作ってくれないか。

立木:おれはこれから会食が控えているんだ。余計なお節介は御免被る。しかし、これは贅沢で美味そうだな。お嬢、はい、どうぞ。

目黒:嬉しいです。いただきます。

シマジ:それはお一人で召し上がってください。

目黒:わかりました。頑張ってみます。

シマジ:頑張らなくても、美味しいから自然に食べられますよ。

目黒:たしかに美味しいです。最高です。

シマジ:目黒さんは今どういう部署でお仕事をしているんですか。

目黒:わたしが資生堂仙台支社に入社して早25年が過ぎましたが、2014年から東北、北海道エリアのセミナー担当をしております。いまの業務はそのエリアのデパートのSHISEIDOカウンター、全部で13店舗あるんですが、そこのBC(ビューティーコンサルタント)セミナーで、新製品案内やトレーニング講師などを担当しております。

シマジ:札幌と仙台ですか。かなり広範囲ですね。

目黒:わたしの使命は、仙台と札幌のBCたちのスキルとモチベーションをアップさせて、1人でも多くのSHISEIDOファンを増やしていくことなんです。

シマジ:お顔が自信に満ちていますね。学生のころから資生堂に入ろうと決心していたんですか。

目黒:学生時代は教師になろうとずっと思っていたのですが、たまたま知り合いのお姉さんが資生堂のBCをしていました。彼女がいつも明るく愉しく働いている姿をみて、こんな仕事もあるんだと思ったのです。女性として女性の美に関わる仕事っていいなあと思い、それから資生堂の化粧品を購入するようになりました。

立木:シマジ、お嬢を質問攻めにしないで、田村が精魂込めて作ったウニイクラ丼をじっくり味わってもらったら。

シマジ:たしかにそうですね。わかりました。目黒さん、あとはゆっくりウニイクラ丼を味わってください。

目黒:ありがとうございます。ホントに美味しいですね。

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