第7回 銀座 Ginza Zenith 須田善一氏 第1章 カクテルの世界の第一人者の腕前。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

ギンザゼニスの須田善一バーマン(45)は、いまやカクテルの世界では第一人者である。生まれは福島県伊達市で、高校卒業と同時に県内のホテルに就職した。ホテルのバーで働くことを希望していたものの18歳ではアルコールを扱うことができず、フレンチレストランでギャルソンの仕事から始めた。生まれながらに進取の気性に富む須田は、分厚いフランス料理の大全を買って意欲的に勉強したが、料理人になろうとは思わなかったという。自分には早朝からの仕込みからはじまり、夜遅くまでの勤務は務まらないだろうと懸念したのだった。
20歳になって念願のホテルのバーカウンターに立つことができた。まさに、栴檀は双葉より芳し、である。あるとき雑誌でカクテルコンペを知り、自分もこんな華々しくコンペで活躍をし優勝したいと思い23歳のとき、東京に出てもっと腕を磨こうと銀座の老舗バー、絵里香(エリカ)に入店した。ほどなく日本バーテンダー協会のジュニアカクテルコンクールで優勝をし、各メーカー主催のカクテルコンペでも賞を獲得する。その後34歳で独立し、オーナーバーマンとして「ギンザゼニス」をオープンした。そして今年の4月、同じ銀座の新築のビルに移転して、めでたく10周年を迎えたのである。

シマジ:須田バーマンの顔色はちょっと日本人離れしていますね。よく裕福な白人にみられるようなサーモンピンクですよね。しかもキメが細かい。

須田:ありがとうございます。これは両親に感謝すべきですかね。

シマジ:こちらは毎度お馴染みの立木先生で、あちらが資生堂からきてくれた助っ人の石川莉穂さんです。

立木:よろしくね。

石川:よろしくお願いします。今日の須田さんのお肌チェックはいまから愉しみです。

須田:そんなことを言われると、プレッシャーを感じてしまいますね。

シマジ:須田さん、最初に立木先生がカラーで撮影しますから、まずは4品、撮ってもらいたいものを用意してもらえますか。

須田:畏まりました。でははじめに、昨年スコットランドに行ったとき、ゼニス10周年の記念ボトルとしてボトリングしてきたシングルモルトのクレイゲラキをショットで撮っていただきましょうか。

シマジ:スペイサイドのクレイゲラキですね。これは珍しいシングルモルトです。クレイゲラヒというマイナーな読み方もありますよね。

須田:こちらはBBR社のボトラーズものです。1990年に蒸留した26年の熟成樽から、220本ボトリングしてもらい、30本はうちで引き取り、残りは酒販店で売ってもらうことにしました。

シマジ:バーの名前はどこに入っているんですか。

須田:裏ラベルに小さく入れています。

立木:いいじゃない。小さく入れたほうが品がいい。シマジみたいに表ラベル一杯にドクロを掲げ、サロン・ド・シマジと大きく入れているのは、あれは目立ち過ぎ。こちらのほうがおれは好きだ。

須田:たまたま表に入れられなかったんですよ。

立木:表に入れたとしても、あなたの趣味だと小さく入れたでしょう。

須田:でもシマジさんのボトルもいくつも見ていますが、ぼくは結構好きですね。

シマジ:このクレイゲラキはどういう香りと味が特徴なんですか。

須田:そうですね。ぼくが気に入っているのは、蜜蝋の香りがするのと、味がフルーティーなところですかね。

シマジ:では撮影用と、もうワンショット、わたしにください。

須田:畏まりました。では撮影用はここに置きますね。

シマジ:石川さんはシングルモルトは飲めますか。

石川:できたらアルコールの薄いカクテルをお願いします。

須田:では石川さん用に、見た目もきれいな美味しいカクテルを作りましょう。

シマジ:須田さん、わたしには、撮影が終わったらものをトワイスアップにして氷でシェイクしてもらえますか。

須田:了解しました。では、石川さんはこちらをどうぞ。

石川:いただきます。美味しい!しかも飲みやすいです。

シマジ:きれいなカクテルですね。異国情緒がありますね。これはなんて言うカクテルなんですか。須田さんのオリジナルなんでしょう。

須田:はい。オリジナルです。ゴーギャンの絵からヒントを得たんです。タヒチの女の子が髪にさしている白い花があるでしょう。

シマジ:ありますね。

須田:あの花の名前がティアレと言うんです。そこからとってカクテルの名前を「ティアレ」としました。これは女性でも安心して飲める、アルコール度数10度未満のカクテルです。

シマジ:どういうレシピなんですか。

須田:マンゴリキュール、ココナッツリキュール、ブルーキュラソー、ヨーグルトリキュール、それにグレープフルーツジュースを加えたものです。

シマジ:甘そう。わたしは遠慮して、クレイゲラキを氷でシェイクしたのを飲みます。

立木:はい。シングルモルトのショット撮影が終了。次は?

須田:ではカクテル、ティアレをお願いします。

立木:これはきれいだ。撮り甲斐があるね。

シマジ:須田さんの手際のよさは凄いですね。撮影用と石川さん用をたちどころに作ってしまうんですから。

須田:お店が混んできたら、これくらいのスピードでは間に合いませんよ。
ではシマジさん用のクレイゲラキのトワイスアップをどうぞ。

シマジ:うーん、たしかに蜜蝋の香りがします。飲むとオレンジの味をどこかに感じます。美味い。26年間熟成させた感じですね。

須田:ありがとうございます。シマジさんは、どこでこの、トワイスアップのウイスキーを氷でシェイクすることを知ったのですか。

シマジ:それはエジンバラのバーでした。この方法で伊勢丹サロン・ド・シマジのバーでも出しているんです。最近スウェーデン大学の研究で、ウイスキーはストレートで飲むより加水したほうが美味くなるという論文が発表されましたね。わたしの格言コースターにも「ウイスキーを水で割るとすなおにハダカになってくれる」というのがありますよ。

須田:それは言い得て妙ですね。

立木:はい。ティアレは終了!

シマジ:須田さん、次は?

須田:では古典的カクテル、マンハッタンを新バージョンで作りましょう。普通のウイスキーですと新鮮味がありませんから、ぼくはアメリカのライウイスキーのテンプルトンをベースにして作っています。それからガンチャーというイタリアのオールドスイートベルモットを加え、最後にアンゴスチュラのビターでベルモットの甘みを抑えます。この香りはペッパーの役目を果たしてくれます。一種のスパイスとして1、2滴垂らします。

シマジ:またこのカクテルグラスが凝っていますね。

須田:はい。このグラスは、1870年代のオーストリアのアンティークグラスで、ビミニというものです。この雄鶏の形状に引っかけてコクテルグラスと呼ばれています。

シマジ:ではまず立木先生に撮影してもらいましょうか。石川さん、マンハッタンを飲んでみますか。

石川:まだ先程いただいたティアレを飲んでいます。シマジさん、どうぞお飲みください。

立木:マンハッタンは撮影終了!

シマジ:ではわたしが代表していただきましょう。うーん、このコクテルグラスは軽いですね。マンハッタンも普通のものより飲みやすく美味しいです。これでいくらするんですか。

須田:2,000円です。うちではいちばん高いカクテルは2,000円で、いちばん安いのは1,200円です。

シマジ:このコクテルグラスはいくらするんですか。高いでしょうね。

須田:4万円ぐらいですか。

シマジ:2,000円のマンハッタンを4万円のアンティークグラスで飲ませるのは、とても粋ですね。

立木:最後はなにを撮ればいいの。

須田:それではウィンドミルというカクテルを作りしょう。これはバーテンダー協会主催のカクテルコンペティションに出したものなんですが、銀座の予選会で圧勝しました。ウォッカをベースにオレンジジュースとパッションフルーツリキュール、締めにレモンジュースを入れます。では立木先生、お願いします。

立木:OK。

シマジ:ウィンドミルといえば風車ですか。牧歌的な名前ですね。

立木:はい。風車も撮影終了した。

シマジ:石川さん、ウィンドミルのカクテルはいかがですか。

石川:ベースがウォッカですよね。これから会社に戻って仕事がありますので、すみませんが今日は遠慮しておきます。

立木:じゃあ、シマジが飲んじゃえば。

シマジ:ではいただきます。うーん、これはイケますね。

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新刊情報

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著: 島地勝彦
出版: 講談社
価格:1,058円(税込)

今回登場したお店

Ginza Zenith

東京都中央区銀座6-4-7 G.O.WESTビル 7F
Tel:03-3575-0061
>公式サイトはこちら (外部サイト)

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