OTONA BIBLE

「自然であり、自由な姿がカッコイイ」

[PIZZA SLICEオーナー]

猿丸 浩基

vol.2

2017.04.28

東京・代官山の人気スポットとなっている、スライス売りのピザ屋「PIZZA SLICE」。ピザの味はもちろん、外観や内装まで徹底的にこだわり抜かれたこの店には、「単なるピザ屋ではなく、カルチャーの発信地としてやっているつもりなんです」と語るオーナー猿丸浩基の“哲学”が、その至るところに反映されている。彼が、「PIZZA SLICE」に込めた思いとは? その道のりと“哲学”について尋ねた。

CHAPTER 1

「大好きなピザ」が
「夢」に変わる

少年の頃から探し続け、
見つけた道

自分の居場所を探した少年期

_1985年、神戸に生まれた猿丸。彼は少年期より、どこか他人とは違う道を選んで進んできたという。

「小学校の頃から、何か面白くないなって思いながら過ごしていたんです。中学校の頃にはあまり学校にも行かず、刺激を求めて外の世界で遊ぶようになりました。だけど、それはそれで何か違ったというか、結局、自分の居場所みたいなものを、ずっと探していたんです。10代の頃から、ひとり旅をするようになって、ヒッチハイクで日本全国を回ったりもしました。その流れで、14歳の頃、ひとりでハワイを旅したんですが、そこで初めてスライス売りのピザ屋を知りました。僕はその頃からピザが大好きで、宅配のピザをよく食べてましたが、『一切れ単位でも食べられるんだ!』って感動しました」

夢ノートに書かれたピザの夢

_小さい頃からアメリカの映画や漫画が好きだった。そこに登場する、とても美味しそうなピザのイメージを頼りに、単身ニューヨークへと渡った猿丸。当時25歳だった。

「東京に出てきた頃は、とにかく貧乏でした(笑)。いろいろやりたいことはあったけど、具体的に何かに向けて努力をしていたわけでもなく……あるとき、好きだった女の子に言われたんです。『いろいろやりたいのはいいけど、もうすぐ25歳になるし、そろそろ一個に絞って何かをやらないとカッコ良くないよ』って。それがショックだったというか、単純に『悔しい』、『見返してやりたい』って思ったんです。そこから小さい頃に夢をいろいろ書き込んだ夢ノートを見返して、ハワイで見たスライス売りのピザ屋のことを思い出しました。『ピザ屋、いけるんじゃないか?』って。そういう店が日本にもあるといいなって自分でも思っていたし。ただ、そのためには、まずは自分で美味しいピザが作れないといけない。それで日本中を旅して、美味しいと言われているピザ屋を食べ歩きましたが、自分がかっこいいと思えた店は一軒もなかったんです。これはもうアメリカに行くしかないなと思いました。それで一念発起して、ニューヨークに行くことを決めたんです」

不思議な縁が繋いだニューヨーク修行

_小さい頃からアメリカの映画や漫画が好きだった。そこに登場する、とても美味しそうなピザのイメージを頼りに、単身ニューヨークへと渡った猿丸。当時25歳だった。

「ニューヨークに着いてからは、ピザを食べまくり、自分の好きなピザ屋を何軒か見つけて、そこで飛び込みで『働かせてほしい』って頼みましたが……全然相手にしてもらえなかったですね。奇跡的に人づてで、あるピザ屋で働くことになるんですが、そこは有名店でも高級店でもなく、低所得者が住む団地の一画にある、大衆的なピザスタンドなのにピザのチャンピオンが居て。そこで働かせてもらいながら、基本的な作り方や店の回し方を学んだのですが、むしろそこで働きながら知り合った、いろんな国籍の多様な職業の人たち――ファッション関係者やDJ、カメラマンなど、夢を実現させるためにニューヨークに来ている人たちから、すごく多くのことを学んだような気がします。彼らが何をカッコいいと思うのか、そして自分は何をカッコいいと思うのか。友だちのDJとコラボして、一緒にピザイベントをやったりもしていましたね。」

CHAPTER 2

食だけではない
「PIZZA SLICE」

自然体が作り出す本来の
コミュニケーション

体験自体を楽しんでもらいたい

_ニューヨークから帰ってきたあと、28歳で「PIZZA SLICE」を代官山にオープンさせた猿丸。そこには、現地で感じた彼のさまざまな思いが詰め込まれていた。

「食材自体、日本とアメリカは違うから、100%同じものを作ろうと思っても、それは無理なんですよ。もう小麦粉からして違うから。もちろん、なるべく近づけようとはするんですが、100%同じにはならない。であれば、そこに日本的な細やかさを加味するなど、プラスアルファの要素を加えていくことが大事なんです。そもそも、ピザの味っていうのは、その場所が持つ“匂い”や“空気感”によって、まったく違ってくると思います。それはアメリカでも思いました。なので、自分の店の外観や内装には、徹底的にこだわっています。僕がニューヨークにいた頃、ちょうど流行り始めていたインスタグラムなどのSNSを意識して、写真映えのするスポットをいくつか作ったり。ピザが美味しいのはもちろんだけど、“その店でピザを食べる”という体験自体を楽しんでもらえるような店にしたかったんです」

本来の日本カルチャー = 自然体の接客

_ニューヨーク・スタイルのピザが美味しいことはもちろん、いわゆる“おしゃれスポット”としても次第に人気を博すようになった「PIZZA SLICE」。その理由は、お店の外観や内装だけではなく、そこで働く人たちの魅力も大いに関係しているようだ。

「僕らが小さい頃って、今よりも町の商店街に活気があったじゃないですか。その頃のことを思い出すと、八百屋のお兄さんが、お婆ちゃんとかおばちゃんに、すごく気さくに話しかけていたような気がするんです。『今日は安いよ!』とか親し気に話しかけ、マニュアルや言葉遣いに縛られない、それぞれの個性を活かした接客をしていたというか。僕はあれが本来の日本カルチャーだと思っています。求められているのは、美味しさだけではなく、コミュニケーションが取れる場所。『今日は早いね!』とか、そういう自然体の接客ができるのが、僕はいちばんいいと思っているんです」

僕の目指しているピザ屋

「日本人が、『アメリカっていいよね』って言う場所も、結局そういうところだと思うんです。向こうに行って、現地の店員とかに『ハーイ!』とかフランクに言われると、それだけでちょっとテンションが上がるじゃないですか(笑)。料理の美味しさはもちろん大事だけど、それだけじゃないんです。お店の人と気持ちよくコミュニケーションが取れたかどうかで、お店の評価って変わってくると思います。それは僕がニューヨークで最も感じたことのひとつかもしれないです。お客さん目線で“素敵だな”って思える店、モラルの部分はしっかりしつつもマニュアル的な接客はしない店……それが僕の目指しているピザ屋なんです」

CHAPTER 3

新しいカルチャーが
生まれる場所

ピザ屋としてではない、
広がりに興味がある

ピザ屋ではなく、カルチャーとして

_2015年には二号店を表参道にオープンした「PIZZA SLICE」。今後猿丸は、どんなビジョンを描いているのだろうか。

「正直、お店を増やすことには、あまり興味がありません。それよりも、最初から働いてくれているスタッフの子たちが独立しつつある時期なので……よく相談に乗っていますが、彼らには僕と同じことをやる必要はないと言っています。極端な話、ピザ屋でなくたっていいと思います。むしろ、僕としては、その広がり方に興味があるというか……チェーン店としての広がりよりも、カルチャーとしての広がりに、僕は興味があるんです」

新しい才能が育っていく場所になってほしい

「そもそも『PIZZA SLICE』を始めたのだって、『こういうお店があったらいいんじゃないかな?』っていう、ひとつのスタイルを提示しただけだと僕は思っています。そうやって飲食業に限らず、今の子たちが自由に働ける場所、そして新しい才能が次々と育っていく場所になったら嬉しい。『PIZZA SLICE』が、そういう人たちが自然発生的に集まってくるひとつの“サロン”みたいなものになったらいいなと思っているんです」

完全に“作る人”タイプなんです

「経営者には、3つのタイプがあると思っていて……“作る人”、“大きくする人”、“維持する人”の3つです。そう考えると、僕は完全に“作る人”タイプなんです。そこに専念できたらないいなっていうか、将来的にはピザ屋以外に何か広い意味でのプロデュース業みたいなことも、やってみたいと思っています。いずれにせよ、人が集まれるような場所、新しいカルチャーが生まれる場所を、これからも作っていけたらなって思っています」

SLICE of your Life

「カッコいいとかおしゃれとかっていうのは、けっして表面的なものではないと思います。本人が無理をしていないことが、いちばん大事というか……やっぱり不自然なものって、いちばんカッコ悪いじゃないですか。僕の店では、そういう自然体のカッコ良さみたいなものを、何よりも大事にしているんです。“SLICE of Your Life”――みんなの生活のなかに、スッとスライスピザを差し出すようなカッコ良さというか。そのあたりは、ニューヨークで学んだことのひとつです。向こうの人たちって、みんな自分に自信を持っているじゃないですか。何を着ていても自信満々というか。だから、いつも堂々としていて自然体に見えるし、絵になるんだと思います。流行を追いすぎると、どこか不自然さが出てしまうと思うし、結果的に自信のない感じになることが多いんじゃないかな。そもそも自然であるほうがストレスがないし自由じゃないですか。そういう人って、やっぱりカッコいいなって思うんです」

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