OTONA BIBLE

「失敗しても後悔しないと言い切れる」

[株式会社サーチフィールド取締役 FAAVO/F×G責任者]

斎藤 隆太

vol.2

2017.06.15

近年日本でも定着しつつあり、さまざまなサイトが立ち上がっている「クラウドファンディング」の世界。そのなかでも「地方発」のプロジェクトに特化したクラウドファンディングサイトとして、ひときわユニークな存在感を示している「FAAVO(ファーボ)」。発起人である齋藤隆太はなぜ、「地方発」であることにこだわったのか。そう思うに至るまでには、どんな経緯があったのか。そして、今後増えていくであろう、新しい働き方のスタイルとは。彼自身の経験を振り返りながら、その思うところを語ってもらった。

CHAPTER 1

地方と都市を
結ぶために

都市部から地方へ
出来ることを探して

地域に特化したクラウドファンディングサイト「FAAVO」

_まず、そもそもクラウドファンディングとは、どういう仕組みであり、「FAAVO」が行っているのは、どういうサービスなのだろうか。

「クラウドファンディングとは、アイディアはあるけれども資金がない方々が、インターネット上で自分のアイディアを公開し、それに共感した人から少しずつお金が集められるような仕組みを意味します。そのなかでも、僕らがやっているFAAVOというサイトは、“地域に特化したクラウドファンディングサイト”であることを謳っています。地域を盛り上げる取り組みを、我々のほうでキュレーションしながら紹介、サポートしている形のサイトになっています」

欲しいのは「現在」の情報

_なぜ彼は、地域発のプロジェクトに特化したクラウドファンディングのサイトを立ち上げようと思ったのだろうか。そこには、齋藤自身のある「思い」があった。

「FAAVOを立ち上げるに至った理由のひとつとして、現在は都市部で暮らす地方出身者に、地方の今を知らせたいという思いがありました。自分も宮崎出身だからわかるのですが、都市部で暮らしながら地元の今を知ろうとすることって、情報的にも距離的にも、すごくハードルが高いんです。今、地元がどうなっているのか、なかなかわからない。その橋渡しができるようなサイトがあればいいなと。FAAVOは、地域の活動を支援するクラウドファンディングサイトでありつつ、実は都市部にいる地方出身者が、自分の地元と関わり合いを持つ機会を提供するサイトでもあるんです」

小さな提案が街に与えた変化

_FAAVOで紹介されるプロジェクトは、規模の大きいものから小さいものまで、実にさまざまだ。そのなかでも、齋藤自身がとりわけ強く印象に残っているのは、とある美大生が発案した、地元宮崎市のプロジェクトだったという。

「宮崎市の街中に、きれいなレンガ道の通りがあるのですが、そこでアートマーケットを開催したいという女子大生がいました。そのための費用をFAAVOで募集して、実際に現地でアートマーケットを開催しました。それが今では、“みやざきアートマーケット”というイベントとなり、地元に定着しています。そうした形で、地元の盛り上がりをひとつ作れたというのは、僕らにとっても、すごく感動的なことでした」

FAAVOの好反応を受けて、その後齋藤は、公共事業など地方自治体が行うプロジェクトに特化した、クラウドファンディング型ふるさと納税「F×G(エフバイジー)」を立ち上げる。「好きなまちを応援したい」というふるさと納税の本質に一石を投じるこのサイトは、「遠くにいながら地元と関わる機会を作りたい」という齋藤の考えを、より深く押し進めたものとなっているようだ。

CHAPTER 2

今、想いを
実現したい

生まれ育ったまちに
できることは何か

東京で見つめ直した故郷・宮崎

_ここで改めて、齋藤自身の経歴を振り返ってみることにしよう。宮崎県に生まれ育ち、18歳の頃に大学進学のため上京、そのまま東京で社会人になった齋藤。意外なことに、そもそも当時、彼は地元が嫌で嫌でしかたなかったという。

「当時、実は地元が嫌いで…宮崎って、すごい田舎なんですよ(笑)。それが嫌で、東京に出てきたんですけど、こっちにきたら、なぜか地元の話をする機会が増えたんです。まあ、当たり前ですよね。宮崎出身って言ったら、『どんなところなの?』って聞かれますから。で、地元の写真とかを見せたら、『いいところだね』って言ってもらえたりする。それで、実は宮崎っていいところなのかもって思うようになって……それから、県人会みたいなところにも、積極的に顔を出すようになったんです」

厄災が気づかせた故郷への想い

_「ふるさとは遠きにありて思うもの」ではないけれど、東京に出てきてから、改めて地元のことを考える機会が多くなったという齋藤。そんな彼にとって、さらにひとつ大きなきっかけとなったのは、2010年、宮崎で起こった口蹄疫騒動だったという。

「それまでは、単なる飲み会だった県人会が、地元を支援するようなイベントを企画するようになりました。明らかに、これまでとは違う活動を展開するようになったんです。そのとき僕が思ったのは、いざとなれば、みんな地元のために動こうとするということ。現地の今を知ることができたなら、そこで関わり合いたいと思う人は、きっと多いんじゃないかっていう確信を得たんです」

「いつか」を後悔しないために

_さらに2011年、そんな齋藤の考えを、さらに強いものへと変える出来事が起こった。東日本大震災だ。

「みなさんもそうだと思いますが、一瞬にして何万人の家族がいなくなるということに、僕はすごくショックを受けました。そして思いました。いつかは地元に帰りたいと思っている人は多いけど、そのいつかっていつなんだろう。いつかではなく、今関わらなければ、きっと後悔するんじゃないかって。とはいえ、都市部にいながら地元と関わり合いが持てるようなサービスって、すごく少ないんです。地元のホームページを見ても、いちばん充実しているのは“観光”のコーナーだったりします。それは知ってるよっていう(笑)。そうではなく、今、地元で何が起こっているかを、ちゃんと知りたい。僕らがやっているFAAVOは、地方のプロジェクトを支援するサイトであると同時に、今、地元の人々がどんなことを考え、どんなことをやろうとしているのかを、その地方の出身者が知ることのできるサイトでもあるんです」

CHAPTER 3

故郷に戻り、
感じた純粋な思い

自分から動く事で広がる
コミュニティ

自分たちが住むまちに純粋な思いで向き合う

_現在齋藤は、東京から地元宮崎に拠点を移し、地域に根差しながら「FAAVO」と「F×G」の業務を行っている。それによって、彼自身のなかでは、どんな変化があったのだろうか。

「今は東京を離れ、かつて若者で賑わってた地元宮崎市の若草通りに事務所を構え、そこで商店街の理事をやったりしています(笑)。地元に戻った際に、僕がいちばん最初にやったのは、商店街の看板にある落書きを消すことでした。その資金を、自分たちのサイトを使って募集したんですが、そうやって、自分が住むまちのことに直接関わることができるので、東京にいた頃とは、やりがいが格段に違うんです。規模は小さいけれど、ひとつひとつ自分たちで作っている実感がある。そこには、単なる地元愛だけではない、自分たちが住むまちを良くしたいという純粋な思いがあって、何よりも気持ちいいんです。今の僕の夢は、若草通り商店街を、日本一クラウドファンディングが使われる商店街にすることなんですよ(笑)」

自分に嘘がない人はかっこいい

「宮崎に拠点を移してから改めて思いましたが、やっぱり自分に嘘がない人はかっこいいですよね。仕事に関しても、住む場所と仕事場が近いので、みんなやらされてる感がないというか、すごく楽しんで仕事をしている人が多い気がします。自分が動けば物事が変わるダイナミズムを感じながら働いている人が、たくさんいるんです。最近、“宮崎スタートアップバレー”という、地元の起業家たちの活動に参加させてもらっているのですが、そこにもやっぱりかっこいい人たちがたくさんいて。今は彼らと一緒に、地元宮崎が起業家たちにとってチャレンジしやすい環境になるよう、いろいろな雰囲気作りを整えているところなんです」

二つのコミュニティを育てられるサービスを目指して

_“地方創生”という国策的なところもあり、都会から地元に戻る人は、今後ますます増えていくだろう。しかし、その際に留意すべきことについて、こんなふうに語った。

「僕が言いたいのは、地元に戻ることを、あまり重く考え過ぎないでほしいということです。たとえば僕の場合、18歳で東京に出てきたので、年月が経つにつれて地元よりも、東京のコミュティが大きくなっていくのは、ある意味当然のことです。でも、それはフェアじゃない、僕は地元のコミュニティも、東京のコミュニティと同じように、ちゃんと育てたいんです。先ほど言ったように、FAAVOを立ち上げたのも、東京にいながら地元のコミュニティを育てられるサービスを作りたいというのが、その理由のひとつでした。どちらか一方を選ぶのではなく、都市部と地元の両方のコミュニティを、同じくらい魅力的なものにするためには、どんなことをしたらいいのか。僕が興味があるのは、そういうところなんです」

地方こそ最前線

「地方って都市部に遅れをとっているように思われがちですが、実は“課題先進エリア”って言われています。少子化、そして高齢化社会など、日本は今後、世界中で起こるであろう、社会的な課題の先進国と言われています。その日本のなかでも、その変化が真っ先に現れるのが地方であり、僕が“地方こそ最前線”というのは、そういう意味です。そして、最前線なだけに、やらなければならないことがたくさんある。地方には、解決しがいのある問題やテーマが、すごくたくさんあります。そこで見つけた答えが、これからの日本の行く末を決めるヒントになる。僕はそんなふうに考えているし、だからこそ、いろいろやりがいがあると思っています」

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