国内随一の金箔産地として知られる、石川県金沢市。この地で金箔の製造がはじまったのは、前田利家が加賀藩を治めていた1590年代とされている。そこから400年以上にわたり産地として栄えたのは、湿度が高く日照時間の短い北陸特有の気候と、すぐれた水質にあるとか。雪深い地域で育まれた職人の忍耐強さもまた、細やかさが要求される金箔づくりに適していたという。
長い歴史のなかで、職人たちのひたむきな情熱に支えられてきた、金箔。その輝きは今もなお、人々の心を捉えて離さない。
[甲冑]
加賀藩初代藩主の前田利家。黄金を好んだ豊臣秀吉が厚い信頼を置いた彼もまた、金箔をこよなく愛した男だ。これは、利家率いる前田群と佐々群がぶつかり合った「末森の合戦」で着用したといわれる鎧兜の複製品。堂々たる輝きを放つ武具は、かぶき者と呼ばれ、戦国の世を駆け抜けた利家の美学を感じさせる。
[金箔]
金箔の厚さは、およそ1万分の1ミリ。10円玉半分ほどの金を、畳1枚分に伸ばした薄さだ。これほど繊細な箔をつくっているのは、世界でも日本のみとか。勤勉で緻密な作業を厭わない日本人だからこその、技術といえそうだ。
[成田壁画]
寺社仏閣の装飾はもちろん、蒔絵・金屏風などに用いられてきた金箔。現代でも、日本を代表する工芸品のひとつとして知られている。写真は、『箔一』が携わった、成田空港国際ターミナルの壁画のレプリカ。“黄金の国ジパンク”の象徴として、日々、海外からの客人を出迎えている。