
<店主前曰>
昨年4月から続いたわたしの担当編集者シリーズは、好評のうちにめでたく3月で終了した。編集者とはどんな職業で、どんな人種がやっているのか。読者はその片鱗を覗いたことだろう。物書きにとって編集者の存在は大きい。彼らは素敵な相棒であり、したたかな共犯者なのである。お蔭さまでSHISEIDO MENの売り上げは好調で、今月からさらに1年、新しいシリーズをはじめることになった。時代は、男性も女性に負けずお洒落を愉しむようになってきた。お洒落の最大の決め手は顔である。顔のその肌が醸し出す男らしい色気のオーラは、SHISEIDO MENで作られるといっても過言ではない。格言好きなわたしの新作を紹介したい。「人生の幸せは、直接肌で感じることである」
そんなわけでSHISEIDO MENはその一助を担っているのだ。
今回のシリーズは、わたしが日頃ひいきにしているレストランやバーのイケメンシェフやバーマンの男たちとの対談をはじめることにした。これは情熱的に夜の仕事をしている男たちの物語である。しかも読者はいつでもこの“匠”たちに会えて、いつでもその料理やカクテルを味わえるのである。またその“創作”は立木義浩巨匠のカラー写真でお届けする。まさに彼らの人生は夜光っているのだ。
第1回目の劈頭を飾る対談の相手は桝谷周一郎である。
シマジ シュウちゃんとは3日に1回は会っているから、いまさら対談するのもヘンな気がするね。今日は資生堂から野口さんがきているのでよろしくね。
野口 ルッカは一度きてみたいとずっと思っていたお店です。今日は光栄です。よろしくお願いします。
桝谷 こちらこそ。今日はよろしくお願いします。
野口 今日はアブちゃん<虻川美穂子>はいないのですか。
桝谷 彼女はいまどこかのテレビ局で仕事しているでしょう。
野口 残念!
桝谷 シマジさん、この間、サロン・ド・シマジにお邪魔したときは驚きました。部屋のなかに所狭しとシングルモルトが林立しているあの光景は見事でした。ぼくも将来あんな部屋を持ちたいなあとつくづく思いました。今日は何を作りましょうか。
野口 その前にお肌をチェックさせてください。
桝谷 この機器は何ですか。ウソ発見器ではないですよね。
立木 そんなものを持ち込んだら、いっぺんにシマジのウソがばれちゃうじゃないの。大問題になるぞ。
シマジ まずこれでシュウちゃんのいまの肌の状態をチェックするんだよ。
桝谷 ぼくの肌は一日中料理をしているから、オリーブ油だらけですよ。
野口 結果が出ました。Eでした。
桝谷 Eはいいんですか。悪いんですか。
シマジ たいがいの男はEが多いんだ。SHISEIDO MENをこれから丁寧に使えば、シュウちゃんは若いから、すぐDになりCになるよ。
桝谷 ぼくはいままで何も使ったことがなかったですから。
シマジ イケメンはそういう人が多いようだね。
桝谷 イケメンはやめてください。
野口 今日からお肌を新兵器でチェックします。これで測定しますと桝谷さんのお肌年齢が即座に出ます。
桝谷 こんな小さいのに怖いマシンですね。
野口 こうしてお顔の肌にくっつけるだけで判定が出ます。出ました。42歳です。
桝谷 ぼくはいま40歳ですからちょうどいい判定です。これから丁寧に肌の手入れをして、もっと若返えれとこのマシンはぼくに忠告しているんですね。なるほど。
シマジ 毎晩夜遅くまで働いているシュウちゃんの肌は結構疲れているんだろう。
野口 最近、桝谷さんはテレビに引っ張りだこですよね。
桝谷 お陰さまで、よく使ってくれます。
シマジ これで肌を磨いたら、ますますテレビから声がかかるんじゃないの。
桝谷 頑張ります。でもこんなに化粧品の種類があるんですか。覚えられるかな。
シマジ 簡単だよ。まずクレンジングフォームで顔の汚れを洗い落とす。次にトーニングローションを肌を軽く叩くようにつける。そして美容液のアクティブコンセントレイティッドセラムを2プッシュばかり手の平に垂らして顔全体にぬる。これはディスペンサー式になっているから使いやすい。それからスキンエンパワリングクリームを指先で真珠1個分とってまた顔全体にぬり込む。最後にアイスーザーだ。これは少量絞り出して目の上と下にぬる。この5点セットを朝晩使うと効果覿面だが、朝だけでも十分効果はあるはずだよ。
桝谷 凄いですね。シマジさんは何もみないでそらんじているんですか。
立木 シマジはもう1年もこの連載をやっているんだ。まさに資生堂の門前の小僧なんだよ。
桝谷 ぼくは番号をつけてもいいですか。
シマジ 1週間も使っていればすぐ覚えるさ。
桝谷 夜は無理かもしれませんが、朝は必ず使ってみます。明日の朝が愉しみだ。女房が驚くだろうなあ。
シマジ 丁寧に使っていると、まずは肌の変化に自分が驚くよ。じゃあ、そろそろシュウちゃんに料理を作ってもらおうかな。
桝谷 どんな料理にしましょうか。
野口 是非このメニューの最初に載っているシマジコースというお料理を食べてみたいですね。
桝谷 これはうちの人気メニューです。シマジさんと一緒に考えて作ったメニューなんです。
立木 シマジ、おまえはこんなところまで勢力を伸ばしているのか。
シマジ だってここはおれの仕事場から1,2分でこれるいちばん近いレストランなんだよ。
立木 しかもオーナー並の傍若無人な態度じゃないか。
桝谷 シマジさんは精神的にうちのオーナーです。
立木 だから店のなかにシマジの本を沢山飾っているんだな。
シマジ じゃあ、料理の前に食前酒といきますか。これは食中酒にもなるんだよ。タリスカー10年をこのバカラの大きなグラスの氷の上からワンフィンガーいれて、サントリーの山崎プレミアムソーダをゆっくり入れる。このときかき混ぜないことが大切です。そしてブラックペッパーをこのペッパーミルを使って振りかける。さあ、どうぞ。
野口 美味しいですね。
桝谷 このシマジコースをご注文されたかたに1杯はシマジさんからサービスされることになっているんです。
立木 それくらいのサービスは当たり前だろう。だってシマジは酒屋でタリスカーを買ってここに持ち込んでいるんだろう。
シマジ ご明察。
桝谷 では調理場に行って料理を作ってきますね。
野口 まあ、素敵な美しい1品ですわね。
桝谷 この上の野菜は有機栽培のルッコラです。その上に白くかかっているのは36ヶ月熟成のパルメジャーノ・チーズです。その下に隠れるようにしてあるのがフランスのマグレ鴨のカルパッチョです。鴨を少し焼いてからスモークしています。
シマジ だからヘルシーな鴨に仕上がっているんだね。この三位一体がじつに合うね。シュウちゃんは何歳からシェフになったんだっけ。
桝谷 15歳です。
シマジ たしかに料理の匠といわれる人たちは、それくらいの年齢から料理の世界に身を投じているね。