
<店主前曰>
42歳のいま、木下シェフは23人の料理人を従え、店を5軒経営するオーナーシェフだが、観光ビザでフランスやイタリアを行ったりきたりしながら修業をしていた21歳のころの話が面白い。そのころ知り合った28歳の女性に木下は淡い恋心を抱いていた。休みの日、彼女はボロバイクに木下を乗せて“2ケツ”でフィレンツェの名所旧跡を案内してくれた。孤独な木下のこころに一条の恋の光が勝手に点った。おれはこのままイタリアに残りビストロで働こうか。フランスに戻らなくてもいいかな、と思い詰めた。ところがある日、木下の片思いの女性が素敵なイタリア男のオープンカーに抱かれるように乗っているところに出会した。木下の恋はいっぺんに覚めた。当たり前だろう、男として格がちがうだろう、と木下は素直に悟った
シマジ 異郷の空の下で淡い片思いの恋をした経験は素敵だね。
木下 いやいや、勝手にこちらだけの一方通行だったわけです。
シマジ サマセット・モームが書いているけど「永遠の恋は報われぬ恋である」というのは人生の美しい真実の一つだね。
立木 シマジがそれをいうとウソっぽく聞こえるぞ。むしろシマジ流に「この世に永遠の恋は存在しない」といったほうがいいんじゃないの。だってお前は「男と女は誤解して愛し合い理解して別れる」なんて書いたコースターを伊勢丹新宿店メンズ館9階のサロン・ド・シマジで平気で使っているじゃないの。
シマジ コースターは全部で12通りありますが、その言葉はどれもこれも人生の真実でしょう。ところで木下シェフの肌判定がBだというのは驚愕的なことですよ。わたしの担当編集者12人をチェックした結果、大抵Eが多かったけど、Cがたった一人いただけです。Bははじめてなんだ。こうなったらSHISEIDO MENシリーズを毎日つけてAを狙ってくださいよ。
木下 出来ますかね。
鎌田 わたしは出来ると思います。
シマジ いままで資生堂の方に訊くと、1,000人くらい店頭でチェックしてきた結果、Aは2人だったといっていましたね。それくらい難関なんです。いま伊勢丹のサロン・ド・シマジの常連ではBが4名います。この4人が虎視眈々とAを狙っているのです。
鎌田 Aを獲得するとうちの福原名誉会長とお食事を一緒にするというご褒美だそうですね。
シマジ わたしは福原さんとは毎月食事をしていろんなことをお話ししているので、そのとき同席させてあげようかなと考えているんです。若い人に福原さんの気品のある身のこなし、話しかた、その内容、それからやんごとないオーラ、を感じていただいたら、若者の人生にとって大切な出会いになると思うんですよ。
木下 若者にとってシマジさんと食事をするだけでも凄いことだと思いますが、その上に福原名誉会長とですか。多分緊張して食事が喉を通らないんじゃないですか。
立木 おれもシマジと一緒に何度も福原さんにご馳走になったけど、どこで食べても、店の方が「領収書はお入り用でしょうか」と訊くと「要りません」と品よく断っていつも現金で支払っていらっしゃる。それが格好いいんだよね。シマジも早くああなれよ。
シマジ タッチャンもね。
立木 それからこちらが一生懸命ある限りの知識をフルスロットルで話し終えても、一言「そうお」といって片づけられるのが、だんだん快感になってくるんだ。またシマジのあつかましいところは福原さんの前でまったく物怖じしないところだね。福原さんはむしろそれを愉しんでいらっしゃる。
木下 ますます興味が湧いてきました。今晩から丁寧にクレンジングフォームで洗顔して先程いわれた通りにひと通りつけてAに挑戦したくなりました。
シマジ タケちゃんならやれるんじゃないか。
鎌田 木下シェフは三つ星レストランに雇ってもらいたくって、何日も何日も雨の日も風の日も勝手口に立っていた精神力の持ち主ですから、きっとやれますよ。ぜひ挑戦してください。
立木 ようし、もしAを獲得したら、記念に福原さんとのツーショットをおれが特別に撮ってあげよう。
木下 今日だって光栄なのに、立木先生、ホントですか。親父の仏壇に飾ります。
立木 武士に二言はない。おれもそろそろ福原さんのあの「そうお」が聞きたくなってきた。
シマジ そうお。
立木 全然ちがう!シマジと福原さんの「そうお」はまさに格がちがいすぎる。
シマジ そうお。
木下 シマジさん、すみません。もう一度SHISEIDO MENの正しい使い方を教えてください。
シマジ まずクレンジングフォームをチューブから約1cmくらい絞り出して水かぬるま湯で手の平をこすって泡を立てる。わたしは水のほうを使っている。このほうが朝は目覚めがいい。それで顔全体をよくこすって洗い流す。わたしの場合、3,4日に一度、ディープクレンジングスクラブを使って洗顔する。これは植物繊維の砂のようなツブツブが入っていて古い角質をきれいにしてくれる。ただし目のまわりは皮膚が弱いからさけたほうがいい。タケちゃん、もしこれが欲しかったら、伊勢丹のサロン・ド・シマジで売っています。次にトーニングローションだ。手の平にたっぷりとり、両手の平でこするようにして顔全体にぬり、顔を4,5回叩く。次はアクティブコンセントレイティッドセラムだね。
木下 高そうな容器に入っていますね。
シマジ これは6,500円するけど、同じ女性用のセラムでフューチャーソリューション LXという製品があるんだが、これなんかゴールドの容器に入って一本25,000円はする。そう考えると男性化粧品はまだ買い求めやすいじゃないか。これを2プッシュばかり手の平にとり、両手の平で軽くこすってから、顔全体になじませる。その次はSHISEIDO MENの製品でいちばん高いスキンエンパワリングクリームを指先でちょっと掬うようにつけて顔全体になじませる。最後にアイスーザーの登場だ。これは指先に適量を絞り上下のまぶたの目頭から目尻に向けて数回往復させながらなじませる。わたしは右まぶたは右の中指で左のまぶたは左の中指を使っているけど、それはやりやすいようにやればいい。鎌田さん、これくらいの説明でいいでしょうか。
鎌田 お見事です。しかも愛情を持って使っていらっしゃるのがヒシヒシと感じられます。シマジさんのお肌はピカピカですものね。
シマジ ありがとうございます。人間同士の出会いも最高級の出会いがあるように、化粧品との出会いもどうせなら最高級品と出会うべきでしょう。
立木 そしてシマジはかならずいうセリフがあるんだ。「知らない悲しみより知る悲しみのほうが上質な悲しみである」シマジ、そうだろう。
シマジ まったく仰る通りです。同じ人生を全うするのなら知る悲しみを沢山知ってから死にたいですね。SHISEIDO MENと出会う男と不幸にして一生出会わない男では、なにかがちがってくるんじゃないですか。
木下 では最後にホワイトアスパラのビスマルク風といきましょうか。どうぞ。
鎌田 素敵な一皿ですね。あ、そうだ。立木先生は写真をお撮りになったのですか。
立木 はい、食べられないうちに撮っておきました。
鎌田 おいしいです。これも“知る悲しみ”の一つですね。
シマジ この取り合わせはまさしく“知る悲しみ”の味ですよね。
鎌田 この器も素敵ですね。
木下 わたしの料理を気に入ってくれている陶芸家の先生が持ってきてくれるんです。それからおいしい野菜を作ってくれる農家の方、肉を生産している方、漁師さん、みなさまに助けられて、最高級の料理をお客さまに提供出来るのです。
立木 なるほど、木下シェフも「アカの他人の七光り」で生きているんだね。
木下 そういえばそうですね。
シマジ それにSHISEIDO MENの光も付け加えたら鬼に金棒だね。
木下 はい、頑張ります。あっ、そうそう。この間北方謙三先生がこれをシマジさんに渡してくれといわれたものを預かっています。
シマジ なんだこれは?「饒舌堂蝸舌殿 ここは俺の縄張りだから黙って俺より高いワインを飲み、高い葉巻を吸うこと。北方謙三」
なかなか粋な挑戦状じゃないか。謙ちゃんにいっておいてくれ。「ご忠告、ありがとう」とね。