第12回 銀座 ロオジエ エグゼクティブシェフ オリヴィエ・シェニョン氏 資生堂パーラー エグゼクティブプロデューサー ジャック・ボリー氏 第3章 最高のソースはもてなしのこころである。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

わたしがはじめてロオジエの新しいエグゼクティブシェフ、オリヴィエ・シェニョン氏の料理を食べたときの感動をお伝えしよう。
 まず最初のアミューズに驚かされた。ひとくちサイズの4種類の小さなアミューズがセンスよく並べられていた。しかもひとつひとつが小さいながらも典雅で個性的な深い味わいを持っていた。なかでもセップ茸のロワイヤルと黒トリュフは絶品だった。前菜は毛蟹のサラダ、アボカドのピューレと蕪のムース、ほのかな柚の香りがした。魚料理はオマール・ブルーとアルバ産白トリュフのリゾット。肉料理はスコットランド産ベキャス<シギ>とキャベツとトランペット茸のフォンデュ、オレンジとパンドエピスで香りづけしたラルドコロンナータ、デザートにはフロマージュとマロンクリームに包まれたメレンゲとパルフェを愉しんだ。
 わたしはジビエラヴァーでいままで沢山の日本産の田シギや山シギを食べてきたが、スコットランドのシギは山シギに近い味がした。余談だが、日本では禁鳥だが、スコットランドのライチョウも美味い。最近よく日本に輸入されている。
 その夜の料理は最高だった。一緒に食べた仲間も素敵だった。スペインの誇るワイン、ボデーガス・ベガ・シシリアのオーナー、パブロ・アルバレス・メスキリス社長、その日本の代理店ミリオン商事の本間社長、ミスター・シマジ・インデックスの異名を持つわたしの信奉者森正貴資、そしてわたしの4人であった。格調のある料理にベガ・シシリア”ウニコ”レゼルヴァ・エスペシャルは見事な伴走をしてくれた。ワイングラスは手作りのオーストリア製のロブマイヤーだった。じつに幸せな一夜だった。

シマジ シェニョンシェフの料理をはじめて食べて感動しました。繊細にして大胆というか、とにかく美しい上に美味い。

シェニョン ありがとうございます。

シマジ シェニョンシェフ、あなたは以前、前衛的な料理で知られているフランス人の有名シェフ、ピエール・ガニェール氏に師事していましたね。

シェニョン はい、彼が東京に開いたピエール・ガニェール・ア・東京で6年間総料理長を務めていました。面白い話があります。われわれが働く東京の厨房にビデオカメラを設置していて、パリの本店にいるピエール・ガニェール氏にリアルタイムで配信していたんです。

シマジ へえ、いつもおれがみているから頑張れよというメッセージでしょうか。それとも、サボるんじゃないぞということでしょうか。

シェニョン さあ、わたしにはわかりません。

シマジ ところで、シェニョンシェフ、日本にきて面白い食材を発見しましたか。

シェニョン だいぶ前のことですが、梅干しに出会い面白い味だと感じて自宅で漬けています。これをフランス料理に使うことはないですが。でも日本人の味覚の好みを知るためのヒントになるかもしれません。

シマジ ここのカトラリーも美しいですね。ナイフ、フォークはすべてピュイフォルカですよね。

ボリー そうです。フランスが誇るピュイフォルカです。お皿はアビランドなどを使っています。

シマジ 最高の料理を最高の食器で出すというのがまさに最高の贅沢ですね。またスタッフのスーツの生地はロロ・ピアーナだそうですね。そのように細部までこだわるところがグランメゾンの誇りなのでしょう。

ボリー ロオジエの厨房の素晴らしさは世界に誇れます。そしてたとえばお皿を水道水で洗うと銀座の水のニオイがつきますので、うちでは浄水した水で洗っているのです。立木さん、あとで厨房の写真を撮ってください。

立木 了解。

シマジ ボリーさんがいまでもスーパーバイザーでいてくれるのはシェニョンシェフにとってもこころ強いでしょうね。

シェニョン それはとてもこころ強いことです。総勢36人を率いるエグゼクティブシェフに抜擢されたのですから嬉しいですが、超一流のレストランはシェフだけでは何も出来ません。スタッフ全員の総力がなければグランメゾンは成り立たないのです。

ボリー それにはシェニョンシェフは最適でした。日本人スタッフとのコミュニケーションがスムーズに取れるかどうかはシェニョンシェフの人柄にかかってきます。

シマジ たしかにシェフは天才でもスタッフの全面的な協力なしには何も出来ないでしょうね。

関根 シェフと編集長はよく似ているんではないですか。

シマジ その通りです。レストランのシェフが代わると味がかわるように、編集長が代わると雑誌がガラリと変わりますね。

関根 この間NHKBSプレミアムでシマジさんの「全身編集長」の番組をみてそう思いました。

シマジ 雑誌も編集長一人では何も出来ません。編集部のみんなが一丸となって総力を結集しなければ売れませんからね。

シェニョン はい、スタッフみんなと力を合わせながら、これから自分らしい料理を作ることをこころがけて新作を提供していきたいと思っています。日本の野菜や魚介は種類が多く興味深いので、市場に行って積極的に取り入れていくつもりです。

ボリー どうですか、愉しみでしょう。ロオジエには顧客ノートがありましてお客さまが過去に何を召し上がったのか、どんなワインを飲まれたのか、好みなどが記録されています。

シマジ 見事なおもてなしですね。シェイクスピアが「マクベス」でいっているように「最高のソースはもてなしのこころである」ということですね。

ボリー その通りです。

関根 いい言葉ですね。これから使わせていただきます。対面販売でもおもてなしが大切ですものね。

シマジ タッチャン、どうして今日はしゃべってくれないんだ。

立木 シマジのヘンな顔をみているといつもの調子がでないんだ。おもてなしは変装して行えとシェイクスピアはいっているのか。

シマジ これは大人のイタズラだよ。

立木 お前はイタズラが過ぎるよ。写真を撮っていてシマジが別人に思えて仕方がない。いつものシマジはどこにいったんだ。

関根 でも今日のレオナール・フジタにはわたしはシビレましたわ。

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今回登場したお店

ロオジエ
東京都中央区銀座7-5-5
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