第10回 銀座 ロックフィッシュ 間口一就氏 第4章 バーマンがこっそり教える味なつまみ。 

撮影:立木義浩

<店主前曰>

間口バーマンは酒のつまみの作り方の本を何冊も書いているが、去年上梓した『らくらくつまみ』(世界文化社)をパラパラと眺めていておもしろいものを発見した。同書79ページの「ウインきゅう」である。これはわたしが独り暮らしをしていた頃、よく作っていたものとそっくりなのだ。間口バーマンのレシピをここに紹介しよう。

「ウインきゅう」 材料(1皿分)ウインナー3本、きゅうり1本、ニンニク1片、レモン4分の1、オリーブオイル小さじ1,塩ひとつまみ、コショウ少々
1 ウインナーを食べやすい大きさの乱切りにして、スライスしたにんにくと炒める
2 きゅうりを乱切りにする
3 ボウルに1、2、塩、レモン汁、オリーブオイル、コショウを加えて味付けをする

わたしが母に教わったのはこれより簡単で素朴なものであった。ウインナーときゅうりを乱切りにして、サラダオイル、塩、コショウを適当にかけて混ぜただけのものである。だが貧乏だった青春時代の孤独が、安酒とこのつまみで十分癒やせたといまは感謝している。
間口バーマンの教えに忠実に作れば、もっと美味いに違いない。

シマジ:ここの常連で、わたしも親しいタニに聞いたんですが、間口さんは近畿大学理工学部の出身だそうですね。

間口:できれば私のこともマグチと呼び捨てで呼んでもらえませんか。そうなんです。近畿大学は7年かかりましたが、一応卒業しました。

高橋:どうして卒業までに7年もかかったんですか。

間口:大学のときからアルバイトでバーで働いていたんですが、なにせ店が終わるのが朝方5時過ぎでしたから、それから寝るともう大学の授業が終わっているんです。じつはその頃のことは私にとってのトラウマで、単位が足りない!という夢をいまでもよくみるくらいなんです。

シマジ:わかるような気がしますね。わたしも、体操の単位が足りなくて今年も落第したという夢を、疲れて寝たときなどによくみましたね。75歳になったいまではさすがにみませんが、40代のころまではそんな夢をみましたよ。

立木:シマジは何歳で社会人になったんだ。

シマジ:わたしは1浪1留年をしましたから、社会人になってすぐ25歳になっていました。

高橋:ではシマジさんは4月生まれなんですか。

シマジ:そうです。4月7日生まれです。お釈迦さまが生まれたのが4月8日、だからお前は慌て者なんだ、と子供のとき両親からよく言われたものです。

間口:わたしは大学に7年も通っていて、7年目には教授に、もうお前はいいよ、早く卒業しろと言われましたね。

シマジ:まあ、間口さんはバーマンの世界が大好きだったんですね。

間口:そうかもしれません。

シマジ:このユニークなハイボールを発明しただけでもバーマンになった甲斐があると思いますよ。しかもこんなに繁盛しているんですから。仕事はどんなに辛くても、自分の好きなことなら頑張れるものですよ。

間口:うちのロックフィッシュは年中無休なんですが、ぼくは毎週日曜日は休ませてもらっているんです。それでたまに日帰りで沖縄に飛んで地元の豚肉を仕入れてきて、家で煮込んだりすることもあります。沖縄のほかに、青森にも博多にも親しい友達がいるんです。

高橋:土日も夜10時まで営業しているんですか。

間口:土日は午後2時から午後5時半までやっております。まあ従業員は交代で休みを取っていますが、ぼくもたとえば1週間くらい休みが取れるときは、愛媛の両親を呼んで、台湾旅行に行ったりしています。この間はスタッフと一緒に韓国に行ってきました。

シマジ:そういうときはどんなスケジュールで海外に行かれるんですか。

間口:金曜を無理矢理休んで、金、土、日の3日間で行きます。

立木:ここのバーは気の利いたつまみがあるのがいいね。

シマジ:それから間口さんが自分で考案しているカンズメも売っているんですよね。

間口:はい。はじめてシマジさんのバーに伺ったとき手土産に持って行きましたが、食べていただきましたか。

シマジ:その日のうちにいただきましたよ。高橋さん、先ほど召し上がった「スコッチエッグ」がそのままカンズメになっているんです。しかも販売は国分グループのK&Kのブランドなんですよ。「缶つま匠」という名で売られているんですが、可愛い紙の箱入りで、間口さんの顔写真付きです。ほかに「おつまみチャーシュー」もありましたね。またカンズメを簡単に開けることができるのもアイデアですね。

高橋:独り暮らしにもいいですね。

シマジ:災害のときの非常食としても最適だと思いますね。

高橋:1缶おいくらですか。

間口:あのシリーズは「スコッチエッグ」、「おつまみチャーシュー」、それにもう1つ「牛すじ軟骨どて煮」と3種類あるんです。中身によって違いますが500円から600円でスーパーなどで売られています。

立木:シマジ、わざわざ資生堂本社から歩いてきてくれた高橋さんのプロフィールも、そろそろ紹介したほうがいいんじゃないの。

シマジ:そうですね。では月並みな質問ですけれど、どうして資生堂に入ろうと思ったんですか。

高橋:学生の頃ある雑誌を読んでいて、1人1人に合ったスキンケアが探せるというブランド「イプサ」に魅力を感じ店頭へ行ったところ、肌測定やBC(ビューティーコンサルタント)との会話やテイスティングなどでさらに満足と魅力を感じ即買ってしまいました。使ってみて自分の肌がきれいになることが実感ができ、どこの会社なのかよく調べてみたら、資生堂のアウトオブブランド(企業名を出さない)の化粧品だということがわかり、ぜひ資生堂に入社したいと思ったわけです。その頃は就職氷河期でほとんど募集がなかったんですが、資生堂はかろうじて募集があったので試験と面接を受けました。不安な気持ちがいっぱいありましたが、「採用」という通知があったときにはホッとした気持ちと同時に嬉しさがこみ上げてきたことをいまでもはっきり覚えています。

シマジ:それは強運ですね。就職氷河期ではなくても資生堂に入社するのは大変だと聞いています。わたしは福原義春名誉会長と親しいということで、何人か知人のお嬢さんを福原さんに推薦してもらいましたが、残念ながら1人も受かったためしがないくらいです。ましてや就職氷河期で受かったというのは凄いことですよ。入社して何年になるんですか。

高橋:4月で22年になります。

シマジ:そうですか。それではベテランですね。いままで面白いことがいっぱいあったでしょう。

高橋:BC時代の派遣先が新宿歌舞伎町にあるお店だったんです。そこは土地柄もあり、さまざまな人種のお客さまが来店されます。ですから接客などいろいろな意味で勉強させていただきました。何人かのニューハーフの方に「あなたにしてもらうメークは最高よ」とお褒めいただいたこともあります。もとは男性なので骨格やパーツなど女性にメークをするのとは違いますので、いかに女性らしく見せるかとても大変でしたが、逆にやり甲斐がありましたし、褒めていただいたことはわたしの自慢です。wこれも資生堂の美容理論がちゃんとあったからこそできたことだと思い、改めて弊社の凄さを実感した次第です。

シマジ:理路整然と説明していただきありがとうございます。高橋さんは全然酔っていないですね。

高橋:あっ!間口さんのお肌チェックをすっかり忘れていました。
間口さん、恐れ入りますがちょっとこちらに来ていただけますか。

間口:はいはい。

高橋:判定が出ました。Dでした。

間口:Dはいいほうなんですよね。

シマジ:おや、マグチはちゃんと連載を読んでいるんだね。ありがとう!

間口:やっとシマジさんに「マグチ」と呼び捨てで呼んでもらいましたね。嬉しいです!

シマジ:マグチ、近々またハイボールを飲みにくるね。

間口:お待ちしております。

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今回登場したお店

ROCK FISH ロックフィッシュ

東京都中央区銀座7丁目2−14 第26ポールスタービル2F
03-5537-6900
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