
撮影:立木義浩
シマジ:今回の二方さんのオーセンティックバー「サウスパーク」でのサロン・ド・シマジ・フェアには正直驚きました。これまでにリリースした13本、わたし自身はほとんど飲み干してしまいましたが、二方さんのように大切にボトルを保管してくれていて、このように一堂に揃えてお客さまに提供するというのは、素晴らしい企画ですね。これはまさに今年の夏の大ボーナスですよ。
二方:ありがとうございます。
シマジ:しかもいまネットショップで高騰しているサロン・ド・シマジのモルトをこんなに安く提供しているのは、二方さんの太っ腹です。
二方:お陰さまで、沢山のお客さまがサロン・ド・シマジ・フェアにやってきてくれています。今日、シマジさんに自筆のサインを各ボトルにしていただきましたので、値打ちがますます上がりました。
シマジ:また、フェアのパンフレットに書かれている二方さんの各モルトに対するコメントが的確で秀逸ですね。
二方:ありがとうございます。
シマジ:このコメントを読んで思ったことは、これは二方さんがいかにいままで沢山のモルトを飲んできたかの証明でもあるということです。
二方:いえいえ、それはいかにシマジさんが1本1本、美味しいモルトを吟味してボトリングしてきたかの証でしょう。
シマジ:では、先程立木先生に撮ってもらったグレンファークラスのポートパイプ32年をいただきましょうか。二方さん、申し訳ありませんが、シングルハーフではなく、フルシングルでトワイスアップに加水して、シェーカーに氷を入れてシェークして、半分ずつの分量で2つのテイスティンググラスに注いでいただけませんか。吉村さんと一緒に味わいたいのです。
吉村:わあっ、嬉しいです。これはシマジさん自らスコットランドでボトリングしてきたウイスキーなんですよね。
シマジ:そうです。しかもこれはサロン・ド・シマジのセカンド・リリースなんです。ファースト・リリースは、秩父のイチローズモルトの羽生26年でした。それもここにあります。これです。
吉村:どのボトルにも入っているドクロのマークが特徴的ですね。
シマジ:わたしはドクロが大好きなんです。ですから指輪もこのようにスカルです。「メメント・モリ」という言葉がありますが、これはラテン語で「死を忘れるな」ということなんです。いずれみんな必ず死ぬんですから、それまで人生を精一杯愉しもうではないか、とわたしは常々思っているんです。
二方:シマジさんの著書に書かれている「遊戯三昧」の思想ですね。
シマジ:思想というほど大それたものではありませんが、若いときに今東光大僧正に授かった教えです。
二方:伊勢丹のバーの壁に今東光大僧正が書かれた「遊戯三昧」という立派な額がかかっていますよね。
シマジ:あれは大僧正が亡くなられる10ヵ月まえに書いていただいた書なんです。
吉村:そうですか。今度伊勢丹にお邪魔して、わたしも拝んでこようかしら。
シマジ:ぜひいらしてください。ブティックのほうには、SHISEIDO MENのすべての商品が並べられていますよ。
吉村:それは、ますます行かなくちゃなりませんね。
二方:はい、グレンファークラス32年を2杯、ご用意しました。
シマジ:どうぞ、吉村さんも飲んでください。
吉村:ありがとうございます。うん、いい香りがしますね。
シマジ:どれどれ、二方さんのコメントには、こう書いてあります。「べっこう系のミツの甘さ。熟したマスカット系のフルーツ感。バランス良く、濃厚、樽との調和が素晴らしい。パンチもあり、飲みごたえ十分。ポイント95 アルコール度数は49.2%」お見事なコメントです。このパンフレットをグレンファークラス蒸留所のオーナー会長のジョンにも送ってあげますね。ジョンの喜ぶ顔が目に浮かぶようです。なんといっても95点ですからね。13本中最高点ではないですか。
二方:それは光栄です。
吉村:うん、これは飲みやすくて美味しいですね。
シマジ:上質なシングルモルトはまず飲みやすいのが特徴です。それでいてコクがあるんです。
二方:立木先生も1杯いかがですか。
立木:グレンファークラスはシマジに送ってもらって美味いのはよく知っているから、そうだね、本坊酒造の駒ヶ岳を1杯飲ませてくれる。
シマジ:さすがにタッチャンはお目が高い。これは二方さんの評価では2番目の高得点の94点がつけられていますよ。これもシングルハーフで2500円ですね。
二方:どうぞ、どうぞ。ではシマジさんと同じ分量にして、シェークしましょうか。これは27年もので59度あります。
立木:そうしてくれる。二方バーマンのコメントには、これはどう書いてあるの。
シマジ:「樽香強くパンチあり。ジャパニーズ特有のスパイシーさがある。長熟のマイルド感が楽しめる」とありますね。
二方:立木先生、どうぞ。
立木:ありがとう。どれどれ、うーん、樽香が凄いね。口当たりがいい。
シマジ:これは長野の駒ヶ岳蒸留所でボトリングしてきたんですが、27年のカスクが4樽あって、そこから選んでくださいと言われて、いちばん樽香が強いものを選んできたんです。それには蒸留所の所長が落胆して、その樽は、できればもっと熟成させておきたかったと嘆いていましたよ。
立木:シマジ、自分がいかにいい舌を持っているか自慢しているのか。
シマジ:そういうことになりますか。
二方:この樽を選んできたのは自慢する価値があると思いますよ。こうしてわれわれを愉しませてくれるんですから。
シマジ:たしかあそこの蒸留所に28年のカスクがあったような気がするんですが、またお願いしに行こうかしら。
二方:ぜひお願いします。いまでは29年か30年のヴィンテージになっているんではないですか。
シマジ:そうですね。吉村さん、この際飲んでみたいモルトを選んでみてください。
吉村:では遠慮なく言ってもいいですか。
二方:どうぞ、どうぞ。
吉村:では同じ日本のモルトの、イチローズモルトの羽生を飲んでみたいです。
シマジ:吉村さんもお目が高い。これもシングルハーフで2500円しますが、ポイントは93点と、二方さんの3番目の評価ですよ。ちなみに、いまネットショップで1本28万円くらいで取引されている貴重なモルトです。
吉村:ここにPEN とSHINANOYAとあるのはどういう意味なんですか。
シマジ:この13本のモルトのボトリングはすべて、PEN編集部と信濃屋とわたしのコラボレーションで生まれているんです。ですからPEN誌上で宣伝してもらい、信濃屋で独占販売しているというわけです。
二方:吉村さん、どうぞ。
吉村:うーん、フルーツの香りがどことなくしますね。先程飲んだグレンファークラスより強い印象があるんですが。
シマジ:吉村さんもいい舌をお持ちですね。イチローズモルトの羽生のほうは、26年熟成でアルコール度数が55.3度ありますから、口に含んだときのアタックがかなり違うでしょう。二方さんのコメントを読んでみますね。「メイプル+樽香。長熟の安定感。濃厚、メイプルシロップ、後から樽の渋み、その後からフルーツ」吉村さんが最初に感じたフルーツ感がちゃんと入っていますね。
二方:シマジさん、この樽はなん樽くらいから選ばれたんですか?
シマジ:たしかそのとき肥土伊知郎さんが16樽用意してくれたと思います。そのなかには27年の樽もあったのですが、敢えて26年を選んだんです。同行した信濃屋の北梶バイヤーも賛同してくれました。
二方:これはグッドセレクションですね。
シマジ:ありがとうございます。これがサロン・ド・シマジ・セレクションのファースト・リリースなんです。今回の幻の山崎ミズナラを入れると全部で14本になりますか。
二方:この次のボトリングの計画はあるんですか。
シマジ:来年の年末までにはみなさんがビックリするものを、と考えています。
二方:それは愉しみですね。