第7回 銀座 Ginza Zenith 須田善一氏 第3章 絶品!ジュラ島のジュラバーガー。

撮影:立木義浩

シマジ:須田さんは世界中いろんな所に行かれていると思いますが、どこが一番気に入りましたか。

須田:やっぱりスコットランドですね。とくにタリスカー蒸留所のあるスカイ島にはシビレました。いまは新しい蒸留所も建設中らしいですが、わたしたちが行ったころは、まだタリスカー蒸留所しかなかったんです。あの荒涼たるスカイ島の景色は、ほかでは味わうことができません。まさしく孤島というイメージでしたね。でもそんなイメージとは裏腹のエピソードもありました。誰もいない一本道をドライブしていたら、ピートみたいなものがうずたかく積まれていたので、クルマから降りて手に取って匂いを嗅いでいると、なんだか動物の糞のような匂いがするんです。そこへスコットランド人の農夫がやってきて「これはピートじゃなく牛糞だよ」と説明されたときには、みんなで大笑いしました。たしかにピートの香りは全くしなかったんですが。

シマジ:それもまたスコットランドの思い出の一つですね。わたしたちと言うのは、仲間と行ったんですね。

須田:はい。昨年はシマジさんも親しい松木ドクターと、神戸の坂本さんたちと行きました。シマジさんは松木さんが有名な雨男だとご存知でしたか。

シマジ:いえ、知りませんでした。ちなみにうちの女房は凄い雨女なんです。滅多にありませんが、たまに一緒に出かけると必ず雨を呼ぶんです。わたしの晴れ男の威力もいつも女房には負けているんですよ。

須田:松木さんとスコットランドに行ったときは、すでに羽田を出発するときから、土砂降りの雨でした。「ごめん、おれ雨男なんだ」と松木さんは弁解していました。松木さんは子どものころから雨男で、遠足の日も雨を降らせていたようですよ。家族でディズニーランドに行ったときも雨だったと申し訳なさそうに言っていました。

シマジ:でもスコットランドは雨の日が多いですから、松木ドクターがいなくても、結構雨に降られますよ。

須田:たしかにそうですが、忙しい松木さんがアイラ島から一人先に帰国してわれわれが残った日、その日から珍しく晴れたんですよ。まあわれわれもゴルフをするわけではないですから、雨が降っても構わないんですけどね。

石川:松木ドクターはそれほどまでに強力な雨男なんですね。

シマジ:まったく。そこまでいくと魔術師みたいですよね。

立木:それは農家に必要な魔術師かもしれないね。松木ドクターって、先日、おれがタリスカーゴールデンアワーで写真を撮ったイケメンだよね。

シマジ:はい、そうですよ。そういえば、先月の取材先、浅草のバー「ドラス」の中森バーマンはスコットランドでもどこの国でも一人旅をするタイプなんですが、やっぱり彼もスカイ島には感動していましたね。とくに6月のスコットランドは白夜で夜の11時半頃に夕陽が沈むらしいですが、その夕焼けの美しさは堪らなかったと言っていましたね。

須田:わたしも一度スカイ島の夕焼けを見たことがありますが、それはそれは、神秘的というしかない見事なものでしたね。

シマジ:わたしも丁度タリスカー蒸留所のあたりで9月はじめでしたか、美しい夕焼けをみたことがあります。波が岩に激しくぶつかる音響効果をバックに眺めましたが、思わず時を忘れて見とれましたね。

須田:たしかにタリスカーストームの箱にある写真は凄いですものね。

シマジ:あの写真はいろんな有名な写真家に頼んで撮らせたらしいんですが、地元のアマチュアカメラマンの写真がいちばん凄みがあったので、それを使ったと所長のマークが言っていましたよ。

立木:地元のアマチュアカメラマンにプロは叶わないよ。嵐はそう簡単にくるもんじゃないから、地元に住んでるアマチュアカメラマンのほうがシャッターチャンスに恵まれていると思うね。

シマジ:須田さん、ストームの空き箱かなにかありませんか。

須田:買ったばかりのストームが箱入りであります。

シマジ:これこれ。タッチャン、これが問題の写真です。

立木:うん、こんな凄い写真は狙って撮れるものじゃない。嵐の日、何度も現場に駆けつけて100枚撮ったうちの1枚、というところだね。

須田:わたしたちはアイラ島とジュラ島にも行ってきました。

シマジ:じゃあ、ジュラ島のおっぱい山は見られましたか。

須田:はい。天気がよかったのでブラジャー無しではっきり見えました。

シマジ:それは幸せなことですね。わたしが行ったときにはいつも雲というブラジャーに隠されていましたよ。

須田:ジュラ島で食べた鹿の肉で作られたジュラバーガーがとくに美味しかったので、日本に帰ってから1週間だけ、店で特別料理としてお客さまに出しました。

シマジ:それはみなさん喜んだでしょう。

須田:はい、わたしが2週間ほど店を休んだ罪滅ぼしも兼ねて出したんですが、喜んでいただきました。

石川:シカのお肉のバーガーですか。美味しそう。

シマジ:ここではお腹にたまるような食事は稀なことですよね。

須田:うちのお客さまは食事前に来てちょっと飲んで食事に行く方と、食後ゆっくりいらっしゃるお客さまが多いですね。ですから、うちでは軽いおつまみしかご用意していないんです。

シマジ:須田さんはいままでスコットランド研修には何回くらい行かれているんですか。

須田:5、6回は行っています。でも自腹で行ったのは2回だけです。

シマジ:と言いますと?

須田:バーテンダーのカクテルコンクールで優勝すると、副賞で海外旅行のチケットとホテル代がいただけるんです。言ってみれば、アゴアシ付きの研修旅行みたいなものですね。バーテンダーにもっと勉強してこいというご褒美なんです。そうすると雇われている若いバーテンダーもオーナーに「海外に行って勉強してきます」と言いやすいですからね。

シマジ:なるほど。そうしてわが国のバーテンダーの人たちの意識を高めているんでしょう。それはいいことですね。タリスカー蒸留所があるスカイ島に行ったことがあるかないかで、お客さまにタリスカーを薦めるバーテンダーの気持ちも違ってくるでしょうね。

須田:そうですね。百聞は一見に如かず、です。たとえばアイラフェスティバルの行列に長時間並んで、1日1本しか買えない、蒸留所限定のシングルモルトを手に入れるだけでも、そのときの空気から多くのことをバーテンダーは学ぶでしょうね。ところでシマジさんは、スコットランドの料理ではなにがいちばん気に入りましたか。

シマジ:タリスカー蒸留所で出してくれたカレンスキンクというスープですね。

須田:ああ、あの燻製したタラとジャガイモのスープですね。

シマジ:スコットランドのいろんなところでカレンスキンクは食べましたが、タリスカー蒸留所で啜ったカレンスキンクの味を忘れることができなくて、マーク所長に頼んでレシピを送ってもらい、よく行く西麻布のコントワール・ミサゴで作ってもらっています。

須田:あれは結構手間暇がかかる料理ですよ。日本では燻製のタラはありませんので、まずタラを燻製するところからはじめなければなりません。

シマジ:それをミサゴの土切シェフがやってくれているんです。いまではミサゴの名物になっています。

須田:そうですか。1度シマジさんの名前を出して伺わせていただいてもいいですか。

シマジ:どうぞどうぞ。あと、キッパーは同じ日赤通りに面したヘルムズデールのものがスコットランド直送で美味いです。あそこのハギスも日本人向けにアレンジされていてイケますね。

石川:キッパーってなんですか。

シマジ:ニシンの燻製したものです。しょっぱいけど美味しいです。

須田:ヘルムズデールの村澤さんはこの業界ではいちばんスコットランドのことを知っていらっしゃるでしょう。

シマジ:バーの作りもまるでスコットランドのパブという感じですものね。

立木:そうだ。シマジ、そろそろこの連載でヘルムズデールを取材しないといけないんじゃないか。MHDの「タリスカーゴールデンアワー」であんなに世話になったんだから。あのとき村澤さんに「近いうちに資生堂メンの取材でよろしく」って言ってなかったか。

シマジ:うーん、言っていたような気がします。では近々やりますか。

立木:男同士の約束は守るべきだよ。

シマジ:たしかに。

立木:またあの親分に会えるかもしれない。

須田:親分ってどなたのことですか。

シマジ:ディアジオの平井さんですよ。

須田:ああ、なるほど。見るからに親分と言えますね。

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