
撮影:立木義浩
鈴木:先日はありがとうございました。
立木:シマジはホントにここによく通っているんだね。
シマジ:いやいや、先日バトラー・ミズマが出張先のモスクワから大きな缶の上等なキャビアを買ってきてくれたので、ナリタとモリタと4人でキャビアディナーをしようとしたら、鈴木シェフが定休日にもかかわらず日曜にお店を開けてくれたんですよ。
鈴木:あのキャビアは凄かったですね。
シマジ:でも、馬肉のカルパッチョにキャビアを乗せた鈴木シェフのアイディアには脱帽しましたね。食通のナリタが、ヨーロッパではよくこうして食べるんですと言っていましたけどね。
立木:シマジ、そんな贅沢をしているとまた痛風が出るんじゃないか。
シマジ:糖尿病は庶民が罹る病気で、痛風は王侯貴族が罹る病気なんです。いまでは痛風は薬さえ飲んでいればあの激痛には悩まされることはありません。最近は歳のせいですかね、むしろわたしは糖尿病の数値が少し高いんです。最高の名医にかかっているんですが、なかなか完治しませんね。そういえば、わたしの元部下のトモジも、「セオはまだか」のセオも、同じ女医さんにかかっているんですよ。
立木:それはシマジが紹介したからに決まっているだろう。
シマジ:まあ、その通りなんですが、3人とも肥満気味なのが原因なんですがね。
立木:鈴木シェフ、そのうちトモジもセオもここにくることになるね。
鈴木:トモジさんもセオさんも、名前だけはよくシマジさんのメルマガでお目にかかっていますから、ぜひお会いしたいですね。
柏倉:男同士の友情って素敵ですね。食べるところも一緒で、病院も一緒なんですね。面白い関係ですね。
シマジ:鈴木さんはイタリアで修行した以外、他の国には行っていないんですか。
鈴木:いえ、アメリカのフィラデルフィアでもイタリアンレストランで働きましたし、オランダでは英語学校に通いながら、日系企業でサラリーマンを1年間したことがあります。それから日本に帰ってきて銀座のお寿司屋さんで働いたこともありますよ。
シマジ:なるほど。まったく別の料理を勉強することは、料理人としての幅が出るんじゃないですか。それはいい経験になったでしょう。じゃあ鈴木シェフは、寿司を握れと言われたら、握ることは朝飯前なんですね。
立木:シェフ、まちがっても「はい、はい」なんて言わないほうがいいよ。シマジにかかるとそのうち「寿司を握ってくれ」と必ず言い出すに決まっているよ。
鈴木:言われればなんでもやりましょう。
シマジ:この間の生の馬肉を握ったら美味かったでしょうね。
立木:ほらきた。
シマジ:これから伊勢丹のサロン・ド・シマジで「しまじのたんぼ」と命名したわたしの田んぼのお米を売り出すことになっていますので、一度賄いで召し上がってください。
柏倉:シマジさんは田んぼも所有されているんですか。
シマジ:はい。一関で2反半の田んぼの小作人をやっているんです。そうだ、タッチャンにも柏倉さんにも鈴木シェフにも、今度わたしの田んぼの米をお送りいたしましょうね。無農薬無殺虫剤で作った、まさにオーガニックライスです。
立木:どれくらいの量をいくらで売るんだ。
シマジ:お米2合を真空パックにして500円で売ります。箱に6個入っていて3,000円でも売ろうと考えています。試験的にサロン・ド・シマジの常連さんに無料で配って試食してもらっていますが、みんな美味しいと言ってくれて、前評判はいいんです。
立木:シマジ、お前は家では一切食事をしない外食専門の男だろう。それをどこで食べているんだ。
シマジ:さすがはタッチャン、鋭い質問ですね。よく行く割烹「雄」や「言の葉」で炊いてもらって食べていますよ。
柏倉:そのお店はたしか以前、この連載で掲載されていましたね。
シマジ:そうです。
立木:うん、思い出した。「言の葉」は1日で2人のシェフを同時に取材した店だろう。
シマジ:ピンポーン!そうです。和食と洋食のカウンターを持っているお店で、凄いのは年中無休というところなんです。今年も元旦からやっていましたからね。わたしにとっては便利極まりないお店です。
鈴木:そのお店は何人くらい料理人がいるんですか。
シマジ:4人の料理人が交代でシフトを組んで働いています。
鈴木:ランチもやっているんですか。
シマジ:ランチももちろんやっていますし、夜も遅くまでやっています。個室も4つある大きなレストランですよ。わたしのところから歩いて5分もかからない場所にあるので便利なお店なんです。ところで、鈴木シェフがはじめてお店を構えたのはどこだったんですか。
鈴木:目黒です。39歳のときでした。
シマジ:でもどうしても六本木に帰りたくなったんですね。
鈴木:まあ、そういうところでしょうか。目黒は住宅街でやっていましたが、ここ六本木にこの店をオープンしてちょうど3年になります。運がいいことに、今度はこうして繁華街に店を持てました。大家さんが以前からの知り合いだったんです。住宅街ですと、やっぱり遠くのお客さまにはなかなか足を運んでもらえません。ですから目黒ではつぎ込んだ資金を回収できなかったですね。
シマジ:レストラン経営というのはそう簡単ではないんでしょうね。
立木:鈴木シェフはいまいくつなの。
鈴木:45歳です。
立木:まだ45歳か、これからいままでの経験がどんどん生きてくるはずだね。ここは本物の炭を使って料理しているのがおれは気に入っているんだ。いまそういう店が少なくなっているからね。
鈴木:ありがとうございます。
シマジ:それに樹の板に前菜を盛り付けるのもいいですね。陶器より温かみがありますよね。
鈴木:あれはたまたまイタリア土産で買ってきたものです。
柏倉:最後に食べたチョコレートプリンが美味しかったです。
鈴木:あれはイタリアのバンキーニのチョコレートにタリスカーを少し混ぜて作ったものです。
シマジ:バンキーニの飲むチョコレートは伊勢丹のサロン・ド・シマジでも売っていますが、よく売れています。わたしも買って毎日1杯自分で作って飲んでいます。ポリフェノールがいっぱい摂れるホットな飲み物です。砂糖もミルクも入れないでそのままで飲んでいますがクセになりますよ。
立木:そこに置いている缶がバンキーニのチョコレートなんだろう。これでいくらするんだ。
シマジ:たしかこの缶で20杯とれますが、9,500円だったかな。これを大さじ2杯入れていつも飲んでいます。
立木:9,500円で20杯、1杯475円か。まあ安くはないが、高くもないか。
シマジ:スピーゴラもランチをやっているんですよね。
鈴木:はい。東京ミッドタウンで働いているサラリーマンやOLさんが沢山来てくれています。
シマジ:たしかにここは場所がいいですものね。
立木:この看板犬のクロも人気者だろう。
鈴木:お陰さまでクロのファンも大勢来てくれています。
シマジ:クロは鈴木シェフと一緒に自宅からスピーゴラに出勤してくるんですか。
鈴木:はい。クロはわたしたち夫婦の愛するこどもです。昼間は妻が働いていますので、わたしと一緒に来てずっとここにおります。
柏倉:クロは本当に温和しいですね。
鈴木:でもわたしが仮眠を取っているときに業者の方が店に入ってくると、よく吠えるんです。
立木:へえ、一応番犬の役もやっているんだね。