
<店主前曰>
セオは世紀のスクープをやった敏腕の編集者である。そのスクープは日本中話題になった。いまのところ平成時代の最高のスクープである。詳しいことは本文に譲るとして、セオはお洒落には無頓着な男である。顔は、一応1日1回洗うが、今まで、化粧品を使ったことがないそうだ。今日は資生堂から自慢の、肌を一瞬にしてチェックするスグレモノのマシンCSS-Dをシマジサロンに運んでもらい、さっそくセオの肌をチェックしてもらった。案の定、セオの肌は最悪の状態で、結果はEと判定された。最良はA、Bで最悪の段階はFだが、Eで納まったのは、2週間前、わたしがセオに小さなSHISEIDO MENのセットを渡して使わせたからだろう。もしこの助けがなかったら、セオはFになっていたかもしれない。日本の働く40代のサラリーマンはおしなべてこんなものだろう。働く男ほど睡眠不足で肌があれている。そうだろう。セオ編集長はたった1人で「現代ビジネス」の編集の仕事をしている。部下が1人もいないので、毎日、明け方まで働くのが当たり前になっている。もしいまわたしが社長なら、CSS-Dのマシンを使って全社員の肌をチェックして本当に働いているかどうか判定したいところだ。そしてセオみたいな状態だったら、わたしはSHISEIDO MENを惜しみなく働く社員にプレゼントすることだろう。
セオ へえ、うちのカミサンが「あなたの肌、最近スベスベしてきたみたいよ」って言っていたばかりなんですよ。こんな結果になるとは、ぼく、ショックですね。カミサンに何て言おう。
シマジ 大丈夫。これからSHISEIDO MENを使えば、たちまちにしておれくらいピカピカになるさ。今回は資生堂からSHISEIDO MEN PR担当の野田裕子さんにきてもらっているから何でも訊いてごらん。
セオ ぼくのようにいままで何にも使ったことがない男が急にこんな高価なSHISEIDO MENを使っても大丈夫でしょうか。
野田 大丈夫です。セオさんの場合、砂漠に水がしみ込むように、返って目覚ましい効果がでると思います。
シマジ セオ、おまえの肌はいままで肥料を1つもやらない畑みたいなものだから、たった2週間、ちょっとぬっただけでEなんだ。これから毎日使ったら、まちがいなくツヤツヤ、スベスベ、ピカピカの肌が蘇ってCくらいになるさ。
立木 シマジはまるでバナナの叩き売りみたいにSHISEIDO MENを売り込んでいるけど、もっと品よくやらないと、福原名誉会長に怒られはしないか。
シマジ 大丈夫。おれは自信をもって親身になってセオに教えているんだ。
野田 それはシマジさんのお肌をみれば一目瞭然です。
立木 わかった。1カ月後のセオが愉しみになってきたぞ。
野田 セオさんくらい傷んでるかたは、朝起きたときと寝る前に1日2回、ちゃんと「クレンジングフォーム」で洗顔して、まず「トーニングローション」をつけて「アクティブコンセントレイティッドセラム」をぬって「スキンエンパワリングクリーム」をたっぷり重ね、最後に「アイスーザー」を目のまわりにぬり込んでください。セオ 朝はできると思いますが、夜は毎晩酔っぱらって帰りますので、約束はできかねます。
シマジ おれもそう思うな。いつだったか、おれ、寝る前に酔っぱらって歯を磨こうとして、ハミガキのチューブと「クレンジングフォーム」をまちがえて口のなかが泡だらけになったことがある。
野田 わたしも酔っぱらって帰って、ハミガキのチューブで洗顔したことがあります。
立木 裕子ちゃん、面白いことやるんだね。ステキ、気にいった。今度、シマジに内緒で飲みに行こう。
セオ ぼくが夜やろうとしたら、毎晩まちがえると思います。
シマジ セオは朝だけでいいからやってみなさい。1カ月後、タッチャンをビックリさせてくれ。
立木 はい、ビックリしたいものです。
セオ これは目のまわりにぬり込むんですよね。
シマジ そうだよ。これが効くんだ。おれのまぶたをみてみろ。
立木 シマジ、裕子ちゃんにもしゃべらせなきゃ可哀想じゃないか。
野田 はい、それは目にまわりにぬり込んでください。
シマジ セオ、年齢は目のまわりからやってくるんだ。
立木 シマジ、うるさい。裕子ちゃんに話させなさい。
野田 はい、お歳は目のまわりから忍びよってくるものです。
立木 裕子ちゃん、シマジの言った通り、オウム返ししなくたっていいのよ。
シマジ おれは裕子ちゃんの元上司の丸山部長に聞かされているから何でも知ってるんだ。
立木 うるさい、シマジ。ゴメンね、裕子ちゃん、シマジってこういうやつだから許してあげてね。でも、たしかにシマジの肌はピカピカだよな。おまえ、今朝、オリーブオイルをぬったくってきたんじゃないだろうな。
シマジ そんな卑怯なマネはしませんよ。正真正銘のSHISEIDO MENの輝きです。
セオ シマジさんの肌をみていると、なるほどSHISEIDO MENは効果があると思いますね。
シマジ 騙されたと思ってやってみな。愛妻家のおまえだ。奥さんのためにピカピカの肌になれ。そうしたら一緒に手を繋いで歩く賢夫人だって、おまえを誇りに思うはずだよ。ねえ、タッチャン。
立木 よくシマジはセオが奥さんと手を繋ぐかどうかわかるんだ。
シマジ セオの顔に書いている。
立木 じゃあおれは。
シマジ 5㍍くらい離れて歩いているのが目に浮かびます。
野田 セオさんはお肌に似合わず、こころはしっとりとしてやさしいかたなんでしょうね。
立木 そうお、でも女の直感って当たるからなあ。
シマジ セオも1ヵ月後には肌もしっとりしてくるでしょう。
セオ ありがとうございます。カミサンともども頑張ります。
立木 何でそこに奥さんが出てこなきゃいけないんだ。おれにはわからんねえ。
シマジ おれたちとセオは世代がちがうんだよ。タッチャンだってこころのなかでは愛妻家でも口に出して言えないものでしょう。それがセオくらいの世代になると、堂々と愛妻家宣言が出来るんだよな、セオ。
セオ スミマセン。はい、そうです。
野田 セオさん、ステキです。奥さんは幸せですね。
セオ はい、スミマセン。
立木 セオ、こうなったら照れることはないよ。堂々と名刺に愛妻家と刷れ。
セオ あ、そうだ。ぼくのカミサンも資生堂の化粧品を使ってるそうです。そう言ってと、今朝、言われたんだ。忘れていた。カミサンに怒られるところだった。
野田 ありがとうございます。
シマジ 夫婦うち揃って資生堂っていいね。
立木 シマジのとこも夫婦揃って資生堂なのか
シマジ 知らない。女房の化粧品はみたことない。いままでのセオみたいに洗顔しっぱなしかもしれない。タッチャンのうちはどうなの。
立木 おれもわかんない。シマジのとこみたいに洗顔しっぱなしかもしれない。
野田 やっぱり立木先生やシマジさんの世代は奥さまのことをあまり語りたがらないんでしょうね。
立木 裕子ちゃん、きびしいことは訊かないでよ。シマジ、何とかしてくれ。
シマジ 裕子ちゃんのお父さんはどうなの。
野田 父は愛妻家です。SHISEIDO MENも使っています。母も資生堂を使っています。一家で資生堂党です。
シマジ そういえばいつ会っても福原さんの肌もツヤツヤだよね。
野田 福原名誉会長はずっとSHISEIDO MENを使われていらっしゃいます。
立木 シマジ、あのやんごとないかたと自分を一緒にしちゃいけません。色白の高貴なお肌の輝き具合とおまえの黒光りとはワケがちがうんです。
シマジ でもマットで光沢のない貧乏くさい肌よりは黒光りの肌のほうが存在感があるんじゃないの。お金がなくても小金持ちにはみえるんじゃないか。
立木 おれははじめてシマジに会ったとき、こいつは黒いやつだと思ったよ。
シマジ おれもはじめてタッチャンに会ったとき、おれより黒い男がいるもんだと畏れをなしたね。
野田 いいんじゃないでしょうか。おふたりとも健康そうにみえますから。
セオ そうです。2人とも腹は真っ白ですから。
立木 セオ、ありがとう。でも、シマジと一緒にされるのはシャクだわな。何かちがうレトリックはないの。
シマジ おれは光栄至極です。
野田 SHISEIDO MENには紫外線を防ぐ日やけ止めから日やけ肌になれる保湿液まで用意してあります。
セオ ぼくも一層のこと、この夏は黒くなっちゃおうかな。
シマジ やめとけ、セオ、まずおまえは肌のレベルをCくらいまでアップさせてからやかないと、真っ黒なボロボロの雑巾のような肌になっちゃうぞ。皮膚科行きになる。
セオ 野田さん、そうですか。
野田 その通りでございます。いまの状態で紫外線を大量に受けますと、シマジさんが言われますようにボロボロになってしまいます。
セオ ようし決めた。明日の朝からSHISEIDO MENのお世話になりたっぷりぬります。
野田 ところでセオさんは何をスクープなされたんですか。
セオ それは来週詳しくお話しましょう。
立木 おれ、また来週、セオを撮るのかよ。シマジ、勘弁してくれよ。
シマジ タッチャン、来週は、セオの少しピカピカのご尊顔が拝めるかもしれませんよ。
立木 本当か。
シマジ それはセオ次第でしょう。セオ、頑張れよ。
セオ はい、ぼく、本気です。
立木 本当か、セオ。
セオ はい、ぼく、来週はピカピカになって帰ってきます。だから、立木先生、ピカピカの写真を撮ってください。
野田 セオさん、とってもステキです。わたしも応援しますわ。
立木 裕子ちゃん、愛妻家なんか応援しなくてもいいの。
シマジ そうだよ、裕子ちゃん。セオには立派な賢夫人がついてるんだ。むしろ、ここにいる不良老人2人を応援してよ。
立木 そうだ。シマジ、よく言ってくれた。じゃあ、セオを抜きにして3人で飲みに行こうか。