第6回 ゴルフダイジェスト社 大川喬司氏 第1章 創刊準備で肌がボロボロになった。

<店主前曰>

大川喬司はわたしがゴルフジョークエッセイをゴルフ専門誌「CHOICE」に連載していたときの有能な担当編集者である。そのオオカワがこの秋創刊予定のゴルフマンガ専門誌、ゴルフダイジェストコミック「ボギー」の立ち上げに関わることになった。喜ばしいことである。34歳の若者のオオカワはイケメンでさわやかな男である。だが、久しぶりに会ってみると、さすがに大きな創刊を控え、オオカワの顔にはブツブツができるほど肌があれていた。わたしも23年前、「Bart」を創刊したときは産褥の苦しみを味わったものである。編集者にとって創刊に立ち合えるということはめったにない幸運なことだ。とくにいま出版不況の時代と言われている。こんな時期に創刊に携わるオオカワに、わたしはこころからエールを送りたい。「ぐぁんばれ オオカワ!」

シマジ オオカワ、おまえ、今日は草臥れて見えるね。

オオカワ はい、昨夜も徹夜でした。ここのところぼくはまともに寝ていません。

シマジ 雑誌を創刊するって大変なことだからな。

オオカワ いま身に沁みてそれを実感しているところです。

シマジ どうして雑誌名を「ボギー」にしたの。

オオカワ 一般のゴルファーはよくてボギーマンなのです。だから愉しいんですよ。もし友達にパー、パーと連続5個も取るやつがいたら、そいつは友達をなくしますよ。

シマジ なるほど。多くのアマチュアはそうだよな。でも全部マンガって凄いよね。

オオカワ しかもマンガで打法も教えようと考えています。

シマジ ほう、物語ばかりではなく技法もマンガで紐解くのか。

BC山地 今日はよろしくお願いします。

オオカワ こちらこそ。

シマジ 山地さんはわざわざ大阪からきてくれたんだよ。

オオカワ そうですか。

BC山地 まずオオカワさんのお肌をチェックいたしましょうか。

シマジ おまえ、徹夜続きで肌が相当あれているね。

オオカワ シマジさんに送っていただいたSHISEIDO MENの可愛いスキンケアキットを毎日使っていましたけどね。あれってJALのファーストクラスに乗るともらえるらしいですね。乗ったことはないですけど・・・。

シマジ オオカワ、今日は最悪な結果になっても失望するなかれだぞ。

オオカワ 覚悟しています。

BC山地 チェックの結果が出ました。Eでした。お肌のなかは元気なようですが、表面が弱っています。ちょっとお疲れがお肌に出ていますね。

オオカワ やっぱりEですか。たしか、講談社のセオさんと一緒ですよね。

シマジ おれが思うに、もし2週間、SHISEIDO MENを使っていなかったら、まちがいなくFだったろうな。

BC山地 大丈夫です。まだ若いからすぐ回復します。

オオカワ わたしの”伯父貴”に当たる東スポのフルカワさんはDだったんでしょう。

シマジ あいつは、毎日河童のように5リットルの水を飲んでいるそうだ。だから肌の潤いがたっぷりあるらしい。

オオカワ 何か悔しいスね。

立木 オオカワ、がっかりすることはない。フルカワよりいい男に撮ってやる。

オオカワ ありがとうございます。でも、立木先生に撮られていると思うと緊張しますね。

シマジ オオカワ、見合い写真に使えるぞ。

オオカワ そういえば、セオさんは遺影に使うなんて言っていましたよね。

立木 シマジの編集担当者たちは、どいつもこいつもシマジに似てセコイことを言うね。見合い写真は自前で撮ってくださいと言ってみろ。

シマジ みんな給料を飲み代に使ってしまって、タッチャンに高額な撮影代はとても払えないんでしょう。勘弁してやってください。

立木 しょうがねえやつらだ。

シマジ オオカワ、心配するな。今日もらって帰るSHISEIDO MENの大きな5点セットを毎日使えば何とかなるさ。

オオカワ 順番を教えてください。

シマジ まず、このクレンジングフォームで顔を洗う。それからハイドレーティングローションを500円玉くらい手の上に出して肌にまんべんなくつける。それから美容液のアクティブコンセントレイティッドをつけて、スキンエンパワリングクリームをぬり込み、最後にアイスーザーをまぶたの周りにぬるんだ。

オオカワ ぼく、覚えられますかね。

立木 シマジのような引退したやつらしか覚えられないと思うよ。

シマジ それじゃ、オオカワ、このさい順番をマジックで印をつけておけ。

オオカワ なるほど。そのほうが無難かも。

BC山地 多少順番をまちがっても大丈夫ですよ。

シマジ ところでオオカワ、創刊する「ボギー」は何歳を対象にした雑誌なんだ。

オオカワ やっぱり、一生懸命ゴルフを愉しんでいるのは40代の男性ですから、その辺がコアな読者でしょうか。

シマジ 漫画家は一流どこを使うのか。

オオカワ 一流の方もいますが、むしろ腕の立つこれからの作家が多いです。

シマジ 愉しみだね。

オオカワ シマジさんには創刊号を見本で送りますから、何なりと意見を言ってください。

シマジ おれはゴルフはわかるが、マンガはわからないからなあ。

オオカワ でもシマジさんは若いとき、集英社の週刊少年ジャンプの担当役員をなさっていたんでしょう。

シマジ まあ、いま考えてみると、あれはお飾りみたいなものだった。マンガ編集者は独特なジャンルで、新人からあの世界に入って現場を長い年月踏まないと、一流のマンガ編集者にはなれないようだ。編集部は何人いるんだ。

オオカワ 編集者はぼく1人です。

シマジ それは大きなチャンスだね。何でも自分で決められるのがいいじゃないか。第一、凄く勉強になるぞ。やっと最近1人助っ人が入ったが、セオの現代ビジネス編集部も、セオがたった1人で立ち上げたそうだよ。

オオカワ それも凄いですね。ぼくも負けないで頑張らなくちゃ。

シマジ 世の中をビックリさせる雑誌を作ることだ。まずそれには通念を破ることだな。

オオカワ なるほど。よくわかります。

シマジ 山地さんはどう思いますか。

BC山地 わたしはマンガオタクです。ゴルフも父に連れられて練習場に行っているところです。

シマジ じゃあ、何かの縁ですから、山地さん、創刊号は買ってあげてください。そしてお父さんと一緒に読んでください。

BC山地 もちろん、そうさせていただきます。

オオカワ うれしいな。ぼくもこれからSHISEIDO MENオンリーで、ずっと使わせてもらいます。使わないとシマジさんに怒られるような気がしますし。

シマジ オオカワ、そうしたら、おまえは、ますます怖いくらいなイケメンになるぞ。

オオカワ シマジサミットのみなさんは、みんなこんな感じで対談やっているんですか。

シマジ そうだよ。一応こうやってテープを録ってるんだが、聴いて原稿を書いたことはない。

オオカワ なるほど。事実に基づいたお得意の”シマジフィクション”を書いているんですね。

シマジ この妖しい文体をセオが「過剰なるリアリズム」と命名してくれた。

オオカワ それは至言ですね。リアリズムが過剰すぎて現世から逸脱していますものね。そこがほかの読み物にはない面白いところでしょう。でもぼくも改めて読んでみて、シマジサミット<シマジ担当編集者の会>のメンバーの恐ろしさをつくづく知りました。みんなキャラが立っていますよね。いま時代がシュリンクにしているこんなときに、あのめちゃくちゃさが受けてるんでしょう。またよく12人メンバーがいましたよね。

シマジ キリストじゃないが、おれにとって大切な12使徒なんだ。

立木 シマジ、きっとそのうちのだれかに裏切られるぞ。

シマジ そのときはタッチャンの胸のなかで泣かせてもらうか。

立木 勝手におれの胸を使わないでくれ。

オオカワ いや、ぼくたちは結束が堅いから、シマジさんに一生ついて行きますよ。

立木 オオカワ、泣かせることを言うじゃないか。しかし、これもシマジの得意のレトリックに似ている。そのレトリックでおれはどれだけ騙されてきたか。

オオカワ でも気持ちよく騙されるってある種の快感がありませんか。

立木 たまになら快感だろうけど、たびたび騙されていると、これまたシンドイものがあるよ。

オオカワ 立木先生とシマジさんの関係は古いですよね。

シマジ 前世から仕事している。

立木 バカ言っちゃいけない。こいつと会ったのが運の尽きってやつだ。オオカワ、おれはこうやって素人さんを撮影するのは、じつは、はじめてのことなんだ。大変だよ。最初はどう撮るかって悩んだもんだ。

オオカワ ありがとうございます。立木先生に撮影されるなんて光栄の至りです。これもシマジさんの担当になれたからのご褒美だと感謝しています。

立木 オオカワ、おまえ、どっちに感謝しているんだ。シマジにか、それともおれにか。

オオカワ もちろん、ご両人です。

BC山地 今日、大阪から出てきてとってもよかったです。凄くお勉強になりますわ。

シマジ 山地さん、これからがもっと面白くなるところだよ。

オオカワ そうそう。山地さん、シマジさんに面白いゴルフジョークを教えてもらって、それをお父さんへのお土産にしたらいいですよ。

シマジ じゃあ、オオカワ、一発やるか。

立木 そうだ、それがいい。シマジのジョークで山地さんの笑った顔を撮りたい。

シマジ タッチャン、任せておけ

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