美白有効成分m-トラネキサム酸※開発
シミができる肌の特有な状態に着目し、メラノサイトの活性化を効果的に抑える新しい美白有効成分m-トラネキサム酸を開発。医薬部外品の美白有効成分として厚生労働省から認可されました。
- トラネキサム酸
シミができる原因の究明から、
シミが消えるメカニズムの
研究にまで進化。
資生堂は、シミ研究の常識を覆すような革新的なアプローチで、シミの悪化メカニズムを解明しました。
生きたヒトの皮ふをリアルタイムで観察することができるFLIM※1を用いて、シミ部位の細胞代謝を評価する新手法を世界で初めて※2確立し、これまで観察が難しかった、シミがどのように悪化していくかという皮ふ細胞でおこっている活動状態の変化を時間軸で捉えることに成功しました。
本手法を活用することで、シミ部位で起こる細胞老化現象がシミの悪化根源であることを解明し、シミの悪化に対応する独自のトリプル薬剤を開発しました。
従来のシミ研究の常識を覆すような、シミの悪化根源へ対応する新たなソリューションを実現します。
この画期的な研究成果は、化粧品技術に関する世界最大の権威ある研究発表会で最優秀賞を受賞し、次世代の化粧品技術として高く評価されました。
資生堂みらい開発研究所
井上大悟研究員(博士)
※1 FLIMとは:Fluorescence Lifetime Imaging Microscopy。蛍光寿命イメージング顕微鏡法。蛍光分子の固有の性質である蛍光寿命を利用して画像化する観察手法
※2 FLIMによる特定の電子伝達体から表皮のシミ部位の細胞代謝を評価する方法が世界初である(クラリベイト社調べ 2024年9月)
FLIMを用いた解析によって、生きたヒトの皮ふのシミ部位では、非シミ部位に比べて表皮細胞内のミトコンドリア代謝が低下していることが分かりました(図1)。また、過剰なメラニン蓄積が、このミトコンドリア代謝の低下を起こすことを確認し(図2)、さらに細胞老化も引き起こすことを明らかにしました(図3)。
シミ部位では、メラニンの蓄積によってミトコンドリア代謝が低下し、細胞老化が生じることでシミが悪化すると考えられ、いわば、“シミがシミを呼ぶ”悪化根源があることを明らかにしました。
図1:シミ部位では、非シミ部位に比べて
表皮細胞内のミトコンドリア代謝が低下
図2:過剰なメラニン蓄積は、
ミトコンドリア代謝を低下させる
図3:過剰なメラニン蓄積は細胞老化を引き起こす
ヒトの皮ふで6週間の連用塗布を行った結果、資生堂独自のトリプル薬剤を配合した基剤において、シミにおけるミトコンドリア代謝が高まることを見出しました(図4)。
細胞老化の主要な要因のひとつであるミトコンドリア活性低下を抑えるとともに、老化した細胞から分泌され、さらに細胞老化を悪化させるSASP因子※3のひとつであるGROα ※4を抑制することが分かりました(図5)。
※3 細胞老化随伴分泌現象(senescence-associated secretory phenotype:SASP) と呼ばれる細胞老化した細胞が分泌する炎症因子等を含む様々な因子の総称
※4 表皮角化細胞(ケラチノサイト)から分泌されるSASPのひとつ。メラノサイトがメラノーマへ転換する過程にもかかわることが知られている
図4:トリプル薬剤配合基剤の連用塗布にて、
シミのミトコンドリア代謝が高まる
図5:トリプル薬剤配合基剤は、GROαを抑制した
紫外線を浴びなくても老化した表皮細胞から炎症因子が分泌され、メラノサイトを活性化しています。その結果、基底層表皮細胞は過剰なメラニンを受け取り、メラニンが蓄積される環境へと促進させます。
資生堂はシミを消すプロセスで用いられるレーザー治療に着想を得て研究を進めました。
レーザー治療はその高い効果を実感される方が多くいますが、「時間が経ってシミが戻ってきた」という声も聞かれます。
美容医療におけるシミレーザー治療は、表皮のメラニンをレーザーにより破壊し、ターンオーバーに伴って排出させることで、色素沈着の改善を実現します。
レーザー治療は高い有効性が認められている一方で、その治療効果はシミごとに大きく異なることも知られています。
資生堂ではこれまでに、シミ部位の真皮上層において異常な毛細血管ネットワークが存在していることを見出してきたことから、シミ部位の血管はこのシミ改善と何か関係があるのではないかと考えました。
そこで、レーザー治療を用いて表皮のメラニンを除去した際の肌状態の観察を行いました。研究の結果、血管密度が高いシミほど、色素沈着が改善しにくいということも分かりました。(図1,2)
この結果は、シミ部位の肌の奥に根付く血管が、シミの改善・再発に影響を及ぼしていることを示唆しており、シミのケアのためには血管ケアも非常に重要であることを示しています。
図1: シミ部位の血管密度と色素沈着改善の関係
図2: 血管が多いシミほど色素沈着は改善しにくい
資生堂はシミ部位での異常な血管新生を促す刺激因子を抑える成分としてオトギリ草由来の抽出液を見出しています。
シミに対するお客さまの意識をもとに、
シミができるメカニズムを徹底的に研究。
そこで得た、新たな知見に着目し、
美白有効成分を開発することが、
私たちの基本方針。
これまでにないアプローチで、
お客さまの意識に応えるために。
資生堂は美白有効成分をつぎつぎと
世に送り出してきました。
シミができる肌の特有な状態に着目し、メラノサイトの活性化を効果的に抑える新しい美白有効成分m-トラネキサム酸を開発。医薬部外品の美白有効成分として厚生労働省から認可されました。
絡みついたように蓄積するメラニンに着目。メラニン色素の過剰生成を効果的に抑制する4MSKを開発。
資生堂5番目の医薬部外品の美白有効成分として厚生労働省に認可されました。
シミができる肌の黒化スパイラル状態に着目して開発。
メラニンをつくれと命令する細胞の働きと、加速するメラニンの過剰生成を抑えるために、
資生堂を代表する2大美白有効成分4MSKとm-トラネキサム酸をひとつに。
シミ悪化を引き起こす真皮からのシミ増殖因子の流入経路「アンダーメラニンルート」を抑制。また、表皮と真皮の間で働く基底膜の役割を解明。基底膜の構成成分(ヘパラン硫酸)の減少を抑える「白ユリエキス」、産生を促進する「アミノ酸由来成分」に効果を見出し、これら成分のシナジー効果も確認しています。
肌(角層)の奥まで浸透させ、メラニン生成ルートをあらゆる方向から狙い撃ちして防ぐ対応を強化しています。
刺激を受けた毛細血管によるメラニン生成促進を抑制する成分として一薬草(いちやくそう)およびバラ科植物由来エキスのコンプレックス成分を見出しました。
シミ部位での異常な血管新生を抑制する成分としてオトギリ草由来の抽出液を見出しました。
“シミがシミを呼ぶ”現象につながる、シミ特有の細胞老化現象を抑制する成分として、資生堂独自のトリプル薬剤を開発。
資生堂は常に、さらなるチャレンジを続け、
美白有効成分の開発を進めてきました。
国内には約20種類もの美白有効成分がありますが、
その約1/4となる5種の美白有効成分の
薬事開発をしてきました。
これまでメラニンやシミが発生する肌内部環境への多角的なアプローチで様々なシミ形成要因を解明してきました。 一方で、こうしたシミ特有の要因に結びつく肌内部のダイナミックな変化を、実際の皮ふと同様の環境において細胞レベルでとらえる必要があることがわかってきました。 しかしながら、生きたシミ内部を細胞レベルで、かつリアルタイムで解析することは困難でした。シミの根本解決のためには、皮ふ細胞でおこっている活動状態の時間的変化、すなわち細胞内の代謝変化としてとらえる必要がありました。 今回、FLIMを用いて生きた皮ふを観察する新手法を確立し、世界で初めてシミにおけるミトコンドリア代謝を観察し、その代謝状態を検証することに挑戦しました。 光学リアルタイム解析法FLIMとは、生体内の細胞自らが発する蛍光寿命(光る時間長)を測定し、生きたまま細胞の状態を画像化できる技術です。細胞のエネルギー※5産生状態などの観察が可能となり、肌を傷つけることなく、シミ内部のエネルギー産生状態を可視化できます。
※5 細胞のエネルギー:細胞内のミトコンドリア代謝におけるエネルギー産生
美白の薬剤開発で、もっとも根気のいる作業は、莫大な種類の成分の有効性を検証していくことです。気の遠くなるような時間をかけて、ひとつひとつ人の手で行なってきた、この作業時間を短縮することは、シミ予防研究の進化スピードを速めることになります。
そこで、資生堂は、幾千万もの成分の効果を一度に検証できる「ハイスループットスクリーニングシステム(HTS)」を導入しました。このことで、3年かけていた作業がなんと1日に!
今後、劇的な進化を遂げた新製品が、続々とお客さまに届けられることになります。
どうぞご期待ください。