06区 Wellness Lab

今の行動が未来をつくり、その未来が、
さらなる未来をつくっていきます

  • # ホルモン補充療法
  • # セルフケア

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Special Guest

産婦人科医・医学博士・産業医
高尾美穂先生

今回のゲストは、産婦人科医の高尾美穂先生を迎えました。20年以上、医師として女性の心身の健康と向き合ってきた経験やご自身の実体験から、年齢の捉え方、ホルモンや更年期の付き合い方など幅広く語っていただきます。どこか体や心の揺らぎを感じている方も、先のことを不安に思っている方も、高尾先生の言葉の中にきっとヒントが見つかります。

「大変だったことも、すべてが今の自分につながっている」

高尾先生は、ご自身の年齢をどのように感じていらっしゃいますか?

10年くらい前から、患者の皆さんに私の言うことをそのまま信じてもらえるようになりました。20代30代の下積み時代に比べると信頼を受けやすく、年齢を重ねるのはネガティブどころか嬉しいことですね(笑)。私は大学病院に長く勤務していて、非常にアカデミアな考えをもっているので、自分の伝えたいことが伝えられるのは大きいです。

もし若いときに戻れるとしたらどうでしょう。私は、国家試験の前に戻りたいとは絶対に思わないです(笑)。しんどいことも楽しいことも含めてすべて、今を作ってきた積み重ねなのですよね。大変だった時期に目を向けると、今を肯定的に受け止められないことがあります。今の自分にOKを出せないと、未来に進めないんですよね。

人によって表現の度合いが違うだけで、人生で経験することは、長い目で見ればプラマイゼロだと思っています。誰もがみんな、色々な経験をしていて、すべて今の自分に至るのに必要だったのです。過去をチャラにするのではなく、それはそれで必要なことで、その過去があったからこそ今の自分があると考えると年齢の捉え方も変わってきますよね。

「自分にとってよいものを、自分を中心に選んでいく」

ご自身が日常の中で欠かさず続けている「Ritual(儀式)」はありますか?

時間はお金で買えませんし、貯めることも取り戻すこともできない。時間はもっとも価値があると考えています。だから、シュリンク(圧縮)できることはして、時間を確保しています。例えば朝目覚めてから、まず猫たちと挨拶をして、カーテンを開けてトイレに行って歯磨きをするといった流れを決めています。そうすると、洋服選びに時間を使えるのです。日常の中でいくつか無意識にできる流れがあると、無駄がなくなります。

何か新しいことをするときは、年単位で続けられるかで考えます。継続は重要で、多くは続けられないものですが、何かやってみようという気持ちは大切にしたいですよね。その上で、自分にとってよいものを選ぶこと。私たちは意外に選ばないで生きています。進学先も就職先も受かったから入ったという方が多いのでは。思いの外、大きな川の中で流されているのです。お茶碗ひとつにしても、自分で選んだものにする。それが自分を真ん中に生きること、つまり自分を大事にすることになります。

「治療が確立した今、更年期の不調は対処できるから安心して」

身近になったとはいえ、ホルモンや更年期とどのように付き合うとよいですか?

ホルモン補充療法が普及したばかりの20年前に比べると、今は更年期の治療が確立されています。この治療をしたらこうなると、体に起こることが言いきれる時代です。まずは、更年期の不調に関して心配しないでと言いたいですね。しかも、更年期は治療を自分で選べます。がんのように命に関わるものは治療が優先になりますが、治療に抵抗がある、気合いで乗りきりたいなど、更年期は何を優先したいかを自分で決められます。

一方で、更年期が認知されるようになったことで、イメージが先行している部分もあると思います。更年期は人間的にマチュアに至った世代で、自分ではどうにもならないことも含めてひと通り経験してきましたよね。更年期を乗り越えるものと敵対視するより、自分自身が今そこにあるというリアルを受け止めることに意味があると思います。

更年期の体調面は、医学的に対処できます。これくらいで病院に行ってよいのかと迷う方も、しんどくて休みたいと思った時点で婦人科に行くのはアリです。検診で何か異常があったらついでに更年期の相談をしたり、近ごろ検診を受けていなかったら行って不調について話してみたり、いずれもチャンスになってそこから世界が広がることもありますよ。

「自分のキャパを知った上で、ずっと続けられるように」

たくさんの患者さんを診ている中で、“頑張りすぎているサイン”はどんなときに出るのでしょうか。

まず、自分のキャパをある程度知っておくことです。私は多分、キャパがめちゃくちゃ大きくて、飛行機で帰ってきて講演に行ってラジオの収録をするといったことをします(笑)。みんなが同じことができるとは思っていなくて、キャパは本当に人それぞれです。そして、出産後に働き方が変わるように人生のフェーズによっても変わってきます。それを考慮して、今の自分のキャパはどれくらいかをイメージしてみるとよいですね。

その上で、今の状態で5年後も10年後も持続可能かどうかを考えてみるのです。例えば120%で走り続けていると、ある日突然止まってしまうかもしれない。いつか0%になってしまうなら、ずっと85%でいられる方が自分も周りも助かりますよね。
キャパオーバーにはサインがあります。私の場合は、読書ができているかです。お気に入りの動画配信なのに見られてないなど、自分だけのバロメーターがあるはずです。

好きなことができているか、リフレッシュの機会が作れているか、それらを目安にして、時間や体力など何がオーバーになっているかを考えます。そして、家事をパートナーに頼んだりアウトソーシングするなど、オーバーしている部分を分散させて自分のキャパに合わせていく。そうやって自分が調子のよい状態を手に入れることは、自分だけでなく、家族や同僚、周りのみんなを幸せにすることになります。

「人とのつながりを大切に、人生を彩りあるものにしていきたい」

高尾先生は、これからどのように年齢を重ねていきたいとお考えですか。

最終的に人がどんなことに喜びを見出すかというと、“つながり”だと思います。仕事を退職した途端に連絡がなくなり、人間関係の薄さに初めて気づくことはよくあります。仕事は人生のすべてではないと意識した方がよいです。人との出会いは貴重なもの。同級生やジム仲間など、すでに出会っている人間関係を大事にしたいですね。大抵、きっかけは人が運んできてくれます。人生を彩りあるものにするには、いかに人間関係を大切にするかだと思います。

それから、高尾美穂という一人の人間として、相手とコミュニケーションが取れているか。これが人間関係のベースだと思います。人との出会いは一期一会です。タクシーの運転手さんとの小さな出会いがその後の人生に関わるかもしれません。たとえ一度しか会わなくてもその機会を大事にすれば次につながります。今の行動が未来を生み、その未来がその先の未来を生んでいくのです。

今後は、多くの人が希望をもてるような取り組みをしていきたいです。なんとなく幸せに感じること、運動は大事であることなど、部分的に取り入れられるようなエッセンスを伝えていくことで、皆さんの未来の見え方が少しでも変わったらと願っています。特に私の前後10歳くらいの方たちは、仕事や家庭で大きな役割を担って、心が潰れそうな方もいると思います。ちょっとした言葉が手助けとなって心持ちが変わり、今が良くなり、そして未来もよくなるようなメッセージを届けていきたいです。

高尾美穂 産婦人科医・医学博士・産業医

女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長。働く女性の産業医として内閣府男女共同参画局・内閣人事局などで職員研修を担当。長年ヨガを愛好し、多くのヨガインストラクターを指導。YouTube「高尾美穂からのリアルボイス」では毎日、女性のお悩みに答え、楽に生きられる考え方を配信している。近著『今日も一日ご機嫌で 高尾美穂流生き方ガイド 体も心もいい感じ』をはじめ、数々の著書を出している。

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