連載褐色脂肪細胞を専門家が解説—理学博士が褐色脂肪細胞の可能性を説く—

第1回

ダイエットの救世主
褐色脂肪細胞って
何ですか?

みなさんが「からだの脂肪」と聞いてまず思い浮かべるのは、いわゆる“脂身”のような脂肪なのではないでしょうか。それは白色脂肪細胞と言って、文字通り白い色をした脂です。体内にはそれとは別に、見た目が褐色の褐色脂肪細胞というものがあります。白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞、それらは見た目が違うだけでなく、働きも全く異なります。白色脂肪は、脂肪をエネルギーとして蓄える、いわば脂の貯蔵庫ですが、逆に褐色脂肪細胞はそれを分解して熱にする脂の燃焼組織なのです。今から7~8年前ほど前、ベージュ脂肪細胞という白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の中間にあたるものが発見されました。褐色もベージュも、体脂肪を燃やす細胞ですが、しばしば混同されるので、ヒトの場合はわかりやすいように、まとめて「褐色脂肪細胞」と呼んでいます。存在する位置は、主に首、肩、鎖骨や肩甲骨、腎臓周辺のあたりで、新生児には多く存在してますが大人になるにつれて減少していきます。

褐色脂肪細胞

生まれた時には多数ある褐色脂肪細胞なのに、どうして成長とともに減っていくのでしょうか。赤ちゃんが生まれ落ちる時は、お母さんの体内、体温37度で包まれた中から、いきなり20度くらいの気温環境に出てくることになります。野生の動物であればなおさら、突然寒いところにさらされることもあるでしょう。その時に自分の体温が急激に下がらないように、褐色脂肪細胞で白色脂肪細胞の脂を燃やして熱を産出するのです。褐色脂肪細胞は、体温が下がらないように体の中でヒーターのような役割を担うというわけです。しかし成長するにつれて他の体温調節の仕組みが発達して、逆に褐色脂肪が減り20歳代だと新生児の6割ぐらいになります。この減り方には個人差があって、なくなるのが早い人、比較的ずっと維持している人がいますが、適確な手段さえあれば、減少を抑えることができるし、一旦なくなったものもでも増やすことができることが分かっています。つまり、褐色脂肪細胞をつくるための設計図は遺伝子として誰でも持っているので、成長するに従って“ヒーター”は要らなくなったとしても、必要に応じてまたつくりだすことができるのです。

減りゆく褐色脂肪細胞を
上手に刺激し
健康美ボディへ

大人になるにつれて減少していく褐色脂肪細胞ですが、元々のはたらきは寒さ対策として白色脂肪細胞の脂を燃やすもの。だとすれば、「寒さを刺激として利用し、脂肪を燃やす=ダイエットになる」という応用が可能だと思われます。褐色脂肪細胞という「ヒーター」のスイッチを入れるのは脳の視床下部と呼ばれる部分で、おなかが空いたとか、水が飲みたいと感じたり、眠いと感じたりと本能を司るところ。暑いとか寒いと感じて体温を維持することも、生きていく上で大事な本能なのです。それを利用して褐色脂肪細胞を活性化させ、健康的で理想的な体型をつくることも大いに期待できると言ってよいでしょう。

斉藤昌之先生

TEAM脳腸相関

北海道大学名誉教授
(理学博士)

斉藤昌之先生

MASAYUKI SAITO

1970年大阪大学大学院理学研究科博士課程修了後、愛媛大学医学部を経て1989年北海道大学獣医学部教授、2006年天使大学看護栄養学部教授を歴任。2006年より現職。研究テーマはエネルギー代謝と肥満に関する栄養代謝学、特に褐色脂肪組織の役割に関する研究で2001年日本栄養食糧学会賞、2008年日本肥満学会賞などを受賞。