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第11回 銀座 玉木 玉木裕氏 第4章 人生の要諦は“ ルックライク”である。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

一芸に秀でていると、会社のなかでその才能が認められて自分に合った部署に配属されることがある。今回の資生堂からのゲスト梶原由加さんがまさにそうである。子供のころから英語に興味を持ち、高校生のときからオーストラリアに短期留学をするなど英語力を磨いてきた。名古屋外語専門学校を卒業して資生堂にビューティーコンサルタントとして入社したが、英語力が認められて現在は資生堂本社の国際マーケティング部で働いている。趣味の一つは海外旅行である。

シマジ:日本ではいま男性より女性の方が海外旅行によく行っているようですね。

立木:シマジなんか仕事で海外取材には行くけど、プライベートで海外旅行なんてしたことはないんじゃないか。

シマジ:そうだね。割合にしてみれば仕事で行ったのが9割で、プライベートで行ったのは1割ですかね。

梶原:いちばん多く行った国はどこですか。

シマジ:20代から30代前半まではアメリカですかね。そのころのアメリカはまだ輝いていました。タッチャンと長期にわたりアメリカの面白い出来事を取材しに行ったのもそのころです。集英社の支局がまだロサンゼルスにあったので、ロスには数え切れないほど行きました。

立木:はじめてシマジと2人でロスに取材に行ったとき、JALの飛行機のなかで興奮してしまってね。ずっと缶ビールを飲みっぱなしで大きな声で騒いでいたら、きれいなキャビン・アテンダントに「お客さま、もうビールがございません。あちらの席に移られてお休みください」と言われたくらいだったのよ。

梶原:それはよっぽどうるさかったんでしょうね。

立木:おれもシマジも生まれつき声が大きい上に、少々はしゃいでしまったんだね。まあ、声の大きいヤツに悪人はいないというけどね。

シマジ:でも2人でタッグを組み、向こうでいい仕事をたくさんしてきたんですよ。

梶原:どういうお仕事で行かれたんですか。

シマジ:そうですね、世界初の男性ストリップを撮影したり、砂漠のなかに湧いている露天風呂に愉しそうに入っているハダカの男女を撮影したり、それはもう面白かったですね。

立木:シマジは現場を面白がっちゃいるが撮影のアシスタントとしてはまったく役に立たないから、撮影はおれ1人で大変だったよ。

シマジ:30代後半くらいからの取材先はもっぱらヨーロッパでした。イタリアが多かったかな。そのうちスコットランドばかり行くようになりました。

梶原:ヨーロッパとアメリカとでは文化というか歴史がまったくちがいますよね。

シマジ:それはそうです。バーボンの味とシングルモルトの味くらいちがうんではないですか。玉木はパリで料理の修業をしていたからパリには詳しいですよ。

梶原:わたしはパリが好きです。いまから7年前、サント・シャペルのステンドグラスを見たときの驚きはいまでも忘れません。

玉木:シテ島にある「聖なる礼拝堂」ですね。あのステンドグラスはパリ最古のものと言われています。

立木:シマジは行ったことはないだろう。

シマジ:おれはパリに行くとすぐオペラ座近くのパレ・ロワイヤルのなかにあるパイプ屋に行ってしまうんですよ。

玉木:サント・シャペルはゴシック建築が最も輝かしかった時期の傑作とも言われています。

シマジ:今度パリに行ったとき必ず見学に行きます。

梶原:それから食べ物では、ふらっと入ったパリの街のレストランで食べたマッシュポテトの美味しさにも驚きました。

立木:“鴨のオレンジ仕立て”なんて言わないで“マッシュポテト”と言うところがお嬢は庶民的でいいね。

梶原:バターの香りが全然違いました。それがとても美味しくて。いったいどんなバターなんだろうと、スーパーに行ってエシレのバターを買ってきたくらいです。

玉木:エシレのバターはパリでは有名です。高かったでしょう。

梶原:それが覚えていないのです。

シマジ:エシレは日本でも売っているけど高いですよ。

立木:お嬢はほかにどこに行ったの。

梶原:ノートルダム大聖堂、ヴェルサイユ宮殿、それからパリから遠いんですが、モン・サン・ミッシェルですか。

立木:うん、あそこはまさに世界遺産って感じのところだね。シマジは行ったことはないだろう。

シマジ:ノルマンディは行きましたが、モン・サン・ミッシェルには行ったことはありません。

立木:あそこは堤防でノルマンディと繋がっているんだよ。

シマジ:ノルマンディのホテルのバーで極上のカルバドスを飲み過ぎて、そこまで行き着きませんでした。

梶原:あそこの回廊もゴシック様式で美しかったです。

立木:シマジだってノートルダム大聖堂には行っただろう。ヴェルサイユ宮殿は行ったのか。

シマジ:両方行きましたよ。トイレがルイ14世が住んでいた部屋にしかなかったのには驚きました。あのころは男女とも庭で始末していたようですね。

立木:それは本当か。今度調べてみるぞ。

シマジ:そう言われると自信がなくなりました。

玉木:それは本当らしいですよ。ぼくもそんなことをパリで聞いたことがあります。

梶原:いま問題のヨルダンにも行きました。あそこはまるで映画のインディー・ジョーンズの世界という感じでした。切り立った岩の渓谷に添って歩いて行くと、突然、視界が開けてそこにペトラ遺跡が現われたんです。あのときは感動しました。あそこには紀元前の大劇場や寺院や住居跡などがありましたが、一時は繁栄したそうですね。

立木:おれもそこまでは行っていない。シマジは行ったか。

シマジ:そういう紀元前の古代都市はベルリンのペルガモン博物館でその一部を復元したのを見たことはありますが。

立木:やっぱりいまどきの旅行好きの女子にはわれわれは叶わないね。恐れ入りました。でもシマジ、お嬢の仕事ぶりも訊かないと、旅行ばかりしているイメージが読者に伝わってしまうんじゃないか。

シマジ:そうだね。梶原さんははじめはビューティーコンサルタントとして資生堂に入社されたんですよね。

梶原:はい、そうです。2004年4月に資生堂に入社して、2ヶ月間、大阪でBCの新人研修を受けました。とにかく商品が多くて覚えるのが大変だったと記憶しています。その後名古屋松坂屋本店に配属されたのが最初の職場でした。メーキャップやスキンケアの技術は店頭に出てから身につけました。どうしたらお客さま一人一人の美しさを最大限に輝かせるためのアドバイスやサポートが出来るかを模索しながら、接客のなかで学ばせていただきました。わたしが入社したときにはすでにSHIEIDO MENが発売されていたので、よく20代から70代の男性のお客さまにもお越しいただきました。ある日、たしか30代前半の男性のお客さまが前職をお辞めになり、「いまうちでブラブラしている」とおっしゃいますので、「そういうときこそお肌の手入れをして、引き締まった健康的なお肌で新しいお仕事がみつかるように頑張ってください」とお伝えすると、そのお客さまはセットでSHISEIDO MENを買って行かれました。暫くするとまた店頭におみえになって、「ぼく、新しい仕事がみつかったんですよ」と報告してくださいました。そのときのことはいまでもよく覚えています。わたし自身も嬉しかったですね。

シマジ:いい話ですね。肌がツヤツヤだと面接官からも好印象に映るでしょうね。人生の要諦は健康そのものももちろん大事ですが、まずは健康そうに、元気に見えるっていうのが大事なことですよ。それでこそ運気も開けてくるんです。

立木:シマジの場合、元気は元気だが、なぜか一見金持ちそうに見えるっていう妙な印象を持たれることがあるんだよな。実際は浪費ばかりしていて貯金もないのに。

シマジ:そうです。ともかく実情よりも英語でいう“ルックライク”ですよ。

梶原:“ルックライク”ですか。わかるような気がします。今日はいろいろ勉強させていただきました。

シマジ:いやいや、こちらこそ。

梶原:玉木さん、今日はごちそうさまでした。近いうちに女子会の予約をさせていただきますね。その節はまたよろしくお願いいたします。

玉木:お待ちしております。

新刊情報

Salon de SHIMAJI バーカウンターは人生の勉強机である
(ペンブックス)
著: 島地勝彦
出版:阪急コミュニケーションズ
価格:2,000円(税抜)

今回登場したお店

玉木
〒103-0000 東京都中央区銀座8丁目5−25 エイトビル 1階
Tel: 03-6252-9381
>公式サイトはこちら (外部サイト)

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