第10回 恵比寿 言の葉 渡邊直樹氏 第2章 こころの中に秘めたイタリアンへの熱い思い。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

人間の味覚の成熟度は、子供のときに美味いものを食べているかどうかでほぼ決まってしまう。まさに三つ子の魂百までである。「言の葉」の店長渡邊直樹は幸いにも父親が帝国ホテルのフレンチの料理人であった。料理人には2種類あって、家庭ではいっさい包丁を持たない人と、家でも料理を作る人がいるが、渡邊の父親は家庭でもよく料理を作ってくれた。故に渡邊の舌は見事に成長したのだろう。
店のメニューには載っていないが、シマジに聞いたといえば渡辺は「特製ハンバーグ」を作ってくれるはずである。山形の尾花沢牛のハンバーグはほっぺが落ちるほど美味い。

シマジ:犬丸さんは何年に資生堂に入社したんですか。

犬丸:1991年に資生堂販売長崎支店にBC(ビューティーコンサルタント)として入社して、浜屋百貨店に勤務いたしました。

シマジ:それではもう資生堂で24、5年働いているんですね。

犬丸:光陰矢の如し、です。気がついたらそうなっていました。昨年東日本デパート営業本部の美容総括部へ異動になり、いまはデパート担当としてBCの教育に努めております。

シマジ:資生堂に入社したいという動機はなんだったんですか。

犬丸:幼いころ、母が化粧をしている姿をそばでじっと眺めているのが好きでした。母が行っていた資生堂化粧品店にもよく一緒について行き、美容部員の方と近所の奥さま方が「ゆみちゃんは、大きくなったら美容部員になるかもね」などと話していたことを憶えています。

シマジ:まさに三つ子の魂百までですね。しかもあなたは美人ときている。資生堂の化粧品を使うとこうなれるとお客さまは思うでしょうね。

犬丸:それはどうかわかりませんが、母が通っていた資生堂化粧品店の雰囲気が子供のころから好きでした。

シマジ:好きこそ物の上手なれといわれていますから、それは幸せな道を選んだということですよ。立木巨匠もそうだと思いますが、わたしも編集者になろうと18歳のころから考えていました。

犬丸:集英社に入社するのは難しいことでしょうね。

シマジ:就職は結婚と同じで運と縁ですよ。わたしは多少運が強かったんです。そして好きな道であれば、隠れている才能が現場で発揮されるものです。

犬丸:長年の友人にいわせると、わたしは好奇心が旺盛で負けず嫌いで、好きなことに対しては集中して頑張る性格なようで、ですから大好きな化粧品を扱うBCを長年勤めることが出来たんだと思います。

シマジ:あとはその道で自分が仰ぎ見るような人物に出会えるかどうかということでしょうね。資生堂でいえば、例えば去年の暮れに常務を退任された関根近子さんなど、そのように多くの部下から尊敬され、慕われる存在だったのではないでしょうか。彼女もたしかBC出身ですよね。

犬丸:関根常務はわたしにとって雲の上の人でした。

シマジ:犬丸さんもそうですが、関根さんも年齢不詳の美女ですよね。ここにいる渡邊シェフも、仰ぎ見る存在として村上信夫料理長に出会えたことは、生涯の財産だと思いますよ。

渡邊:村上料理長は格好よかったですからね。全身からオーラが出ていました。

立木:シマジにとって仰ぎ見る人物というのは、そうだ、シバレン先生と今大僧正と開高文豪だったな。

シマジ:仰る通りです。集英社では本郷さんと若菜さんでしたね。それから巨匠立木義浩です。

立木:ウソつけ。

シマジ:犬丸さんにとっていちばん愉しかった、いわゆる人生の真夏日はいつごろだったんですか。自分が成長しているなと実感したときがあったでしょう。

犬丸:そうですね。いまのわたしに資生堂スピリットを植え付けてくれたのは、SMC(資生堂メーキャップクリエーター)の第一期生に任命されたころの経験と、そのころ出会った方々でしょうか。

シマジ:SMCとはどういう業種なんですか。

犬丸:まずはメーキャップやヘアスタイリングのテクニックを習得する厳しい訓練を受けるんです。それからデモンストレーションやパフォーマンスといった特殊な技能を学び、デパートのイベントステージで実際にメーキャップデモンストレーションをやるんです。それがSMCの活動でいちばん大変なことでした。デパートの一画に設置されたステージに立ち、インカムマイクをつけてトークをしながら、モデルにメークをし、デパートの館内のお客さまに興味を持っていただき、新しいお客さまとの接点を拡大する活動です。

シマジ:プロではないSMCがステージに立ってやることに文句はでませんでしたか。

犬丸:たしかに、いまでは各メーカーに選任のメーキャップアーティストがいますが、当時は通常なら外部のプロのアーティストに依頼していたものを、厳しい訓練は受けたとはいえ、プロでないわたしたちSMCがやることに、いろいろ意見はありました。「プロじゃないからお客さまは集まってくれないだろう」そんな意見に、わたしの負けず嫌いの血が騒ぎ、だったらまわりを納得させるために「成果を出そう」と必死に努力しました。とはいえ前例のないことをするのは大変なことで、1人で成果を出すのは無理ですので、たくさんの方々に協力していただきました。そのお蔭で徐々に成果を出すことが出来たのです。一部のエリアでしかなかった活動が広域のたくさんのデパートから依頼を受けるようになっていきました。そしていまでもその活動は受け継がれています。SMCとして活動出来たことで、1ヶ所に留まっていては到底出会うことがなかった沢山のお客さまや様々な立場のBCと出会うことが出来たのは幸せなことでした。その出会いのひとつひとつがわたしを大きく成長させてくれたと感謝しております。

シマジ:海外でも活躍なされたとか。

犬丸:はい、1992年イタリアのミラノのリナシェンテで約2か月活動してきました。

シマジ:あのドームの近くにあるデパートですね。

犬丸:そうです。

シマジ:あそこには資生堂の大きなブースがありますね。じつはまだ日本では発売前だったSHISEIDO MENにわたしがはじめて出会ったのはあの場所なんです。そのとき大量に買って使いはじめてから今年で11年目になりますか。

犬丸:ありがとうございます!イタリアの男性にもSHISEIDO MENの愛好者が沢山いるんですよ。

シマジ:わたしの伊勢丹メンズ館のサロン・ド・シマジでもSHISEIDO MENの愛好者は沢山いますよ。わたしが直接売ることもあります。SHISEIDO MENは自信を持って勧められる高級化粧品ですからね。

犬丸:シマジさんから商品を勧められたらお客さまは迷わずお買いになるでしょうね。目の前にピカピカの肌のシマジさんがいるんですから、宣伝効果抜群でしょう。

立木:シマジは74歳にしてモデルもやっているのか。

シマジ:モデルというより実験台ですかね。ところで経歴を読ませてもらうと、犬丸さんは全国津々浦々いろんな売り場で活動なさっているんですね。

犬丸:はい、これは少々自慢と誇りに思っていることですが、わたしのようにいろいろな地域のデパートで、しかもさまざまなポジションで活動させていただいたことのあるBCはほかにいないのではないでしょうか。この経験はわたしの財産だと思います。

シマジ:現在は若いBCの教育をしているんですよね。

犬丸:はい、セミナーの講師をしております。わたしの夢は、お客さまから愛される、キラキラ輝くようなBCを全国に増やしていきたいのです。子育てもそうですが、人を育てるということは難しいものです。ですが、やりがいも感じています。人に教えることで、気がついたら自分も教えられ、自分自身の成長にも繋がっているんです。

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