細長いカラフルなガラス棒をバーナーで溶かし、型などを使わずに手で伸ばしながらパーツを形づくる。さらに、それら幾つかのパーツをなめらかにつなぎ合わせ、ようやく一本のガラスペンの形となる。その後、砥石やサンドペーパーでペン先を調整していくため、一本を仕上げるのにとても時間がかかるのだ。これらの技法と材料はラウシャ独自のもので、藤田さんはすべての材料や道具をラウシャ村から取り寄せているという。
「ガラスをのばす、パーツをつなぎ合わせる、ペン先をねじるといった加工の種類によってバーナーの火を300〜2000度くらいまで使い分けます。吹きガラスは鉄のパイプを支柱に形を作るのですが、ガラスペンは支えが一切ないため、すべて自分の手の感覚だけでコントロールしなければなりません。持ち手からペン先まで、軸にゆがみがないよう仕上げるのが難しいところで、ほんの少しでも違和感があるとやり直し。ガラスペンは飾っておくものではないので、微妙なゆがみが書き心地にも影響してしまうと思うんです」
藤田さんのガラスペンは、なんといってもペン先が美しく、「書きたくなる」ペンだ。万年筆のような太字からボールペンのように繊細な細字まで、軽やかに書き続けられるのは、使い手を意識した道具としての作品づくりへの姿勢によるものだろう。 ガラスペンを使用するときはインク瓶に直接ペン先を浸すだけ。一度浸せば、ハガキの表裏が十分書けるほどインクの持ちがよいのも特徴だ。
「ペン先は特に一本一本、時間をかけて調整しています。実際に使っていただくと、ガラスという素材からは想像できないほどのなめらかな書き心地に驚かれる方が多いです。使い続けるうちに少しずつ手になじんでいくのでその変化も楽しんでいただければ」
軽やかでなめらかな書き心地、それがダイレクトに手に伝わる感覚は、ペン先まで丁寧に仕上げたガラスペンならでは。書き終わったらペン先についたインクを洗い流すだけなので、気軽に様々な色のインクを変えることができる。手紙や日記はもちろん、ガラスペンで水彩画を始めてみるのもいい。ガラス製のクリアなペンは、気持ちまで軽やかにしてくれるようだ。