ガラスペンで綴る「書くこと」の未来

  • Part1 ガラスペンを作る人
  • Part2 ガラスペンを伝える人

Part1ガラスペンを作る人、藤田素子さん

※2015年12月20日をもってプレゼントの応募受付は終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。
ガラスをペンの形に加工し、ペン先にインクを浸して使用するガラスペン。ガラスで文字を書くという非日常感と、所有欲をそそるデザインを備えた、スペシャルなツールだ。その透明感のある美しさにひき込まれたのが、ガラスペン作家の藤田素子さんと文房具店「カキモリ」代表の広瀬琢磨さん。ガラスペンの作り手と伝え手、それぞれの立場から、魅力について語っていただいた。

ドイツ・ラウシャ村のガラスペンとの出会い

ガラス工芸家であり、倉敷ガラスの創設者でもある小谷眞三さんの作品に影響を受けて倉敷芸術科学大学へ進み、ガラス作家を志した藤田さん。当時はガラスペンの存在を知らなかったが、ある日、ドイツのラウシャというガラスの村の記事を読む。その記事をきっかけに、単身ドイツへ向かった。

「小さい頃から食卓に小谷先生の器があったので、漠然とグラスやお皿など、道具としての作品を作りたいと思っていました。それまで吹きガラスしか知らなかったのですが、ラウシャのガラス工房ではバーナーを使った技法を用いていて、その技法についてまったく知識がなかったので、記事を読んで単純にやってみたいと思ったんです。とはいえツテもありませんし、当時はインターネットも普及していなかったので電話帳でなんとか連絡先を調べて(笑)。どうにか、小さな工房で修行させてもらうことになりました。そこで初めてガラスペンと出会い、その魅力にとりつかれました」

藤田素子さん インタビュー

細長いカラフルなガラス棒をバーナーで溶かし、型などを使わずに手で伸ばしながらパーツを形づくる。さらに、それら幾つかのパーツをなめらかにつなぎ合わせ、ようやく一本のガラスペンの形となる。その後、砥石やサンドペーパーでペン先を調整していくため、一本を仕上げるのにとても時間がかかるのだ。これらの技法と材料はラウシャ独自のもので、藤田さんはすべての材料や道具をラウシャ村から取り寄せているという。

「ガラスをのばす、パーツをつなぎ合わせる、ペン先をねじるといった加工の種類によってバーナーの火を300〜2000度くらいまで使い分けます。吹きガラスは鉄のパイプを支柱に形を作るのですが、ガラスペンは支えが一切ないため、すべて自分の手の感覚だけでコントロールしなければなりません。持ち手からペン先まで、軸にゆがみがないよう仕上げるのが難しいところで、ほんの少しでも違和感があるとやり直し。ガラスペンは飾っておくものではないので、微妙なゆがみが書き心地にも影響してしまうと思うんです」

繊細で軽やかな書き心地が楽しめる、藤田さんのペン

ガラスペン

藤田さんのガラスペンは、なんといってもペン先が美しく、「書きたくなる」ペンだ。万年筆のような太字からボールペンのように繊細な細字まで、軽やかに書き続けられるのは、使い手を意識した道具としての作品づくりへの姿勢によるものだろう。  ガラスペンを使用するときはインク瓶に直接ペン先を浸すだけ。一度浸せば、ハガキの表裏が十分書けるほどインクの持ちがよいのも特徴だ。

「ペン先は特に一本一本、時間をかけて調整しています。実際に使っていただくと、ガラスという素材からは想像できないほどのなめらかな書き心地に驚かれる方が多いです。使い続けるうちに少しずつ手になじんでいくのでその変化も楽しんでいただければ」

軽やかでなめらかな書き心地、それがダイレクトに手に伝わる感覚は、ペン先まで丁寧に仕上げたガラスペンならでは。書き終わったらペン先についたインクを洗い流すだけなので、気軽に様々な色のインクを変えることができる。手紙や日記はもちろん、ガラスペンで水彩画を始めてみるのもいい。ガラス製のクリアなペンは、気持ちまで軽やかにしてくれるようだ。

様々なガラスペン

シンプルながら凛とした美しい佇まいに心ひかれる、藤田さんのガラスペン。水彩絵の具を水に浮かべたような模様、水飴のようにガラスを練って無数の気泡を取り入れた作品など、技術とセンスが光る作品ばかり。

持ち手となるガラス棒

持ち手となるガラス棒はあらかじめ着色され、ドイツから届く。藤田さんはさまざまな手法を駆使して持ち手のフォルムを作り、ペンのデザイン性を高める。持ち手にペン先のパーツを溶接してガラスペンが完成。

火入れの作業

溶かしたいところにピンポイントで火を入れることができるため、作業は素手で行う。バーナーの火は足もとで温度調整が可能。用途や作業に合わせて火をオレンジやブルーに変化させ、巧みにガラス棒からペンを生み出す。

profile

藤田素子

ガラス工房「てとひ」主宰。名前の「てとひ」とは、手と火を意味する。ラウシャで修行中、肩越しにドイツ語で「手と火、手と火!」と言われ続けた経験から、初心を忘れないようにと名づけたのだとか。
 http://www.tetohi.com/

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