今回紹介するのは、「高岡銅器」にも用いられる、鋳造技法のひとつ。Part1でもうかがった通り、能作さんによれば、錫100%の製品化が可能だったのは、この高度な技術のおかげとか。
「旋盤(せんばん)加工といって、材料となる金属を回転させ、刃物をあてることで形をつくる技術がありますが、そのやり方では、錫は扱えません。粘土にヤスリをかけるのと同様に、材料が柔らか過ぎて無理がある。しかし、金属を型に流し込む鋳造の技術ならば、純度100%の錫を扱うことができるんです」
とはいえ、前例がない金属であるため、職人たちに求められた技術とそれに伴う努力は並大抵のものではなかったはずだ。現在、「能作」が生み出す錫100%のテーブルウェアやインテリアは、パリの高級ホテルなどでも、使用されている。世界でも高い評価をうけるのは、日々、職人たちが腕を奮う、舞台裏があってこそといえるだろう。