資生堂で食品として摂取するコラーゲンについて研究をしている、資生堂の内山太郎研究員。
長年、資生堂のコラーゲンの研究開発に関わり、2011年には「コケモモ」+「アムラ果実」を組み合わせて美容特許を取得しています。現在までにコラーゲンについて分かっていることや、将来コラーゲンがどのような形で食品に取り入れられるようになるかなど、最前線のコラーゲン研究について聞きました。

資生堂 資生堂GIC(Global Innovation Center) 食品開発グループ 内山 太郎
- 1991年
- 資生堂入社 医薬品研究所配属。ホルモン剤、抗炎症薬などの開発研究に従事
- 2004年
- 食品研究室へ異動。美容健康サプリメント、特定保健用食品開発を担当
ライフサイエンス研究センター 食品開発グループにマネージャーとして在籍中
薬学博士、薬剤師

私の担当している研究では、製品の独自性を出すために特許が必須であり、またその効果を実感できることも素材選定の必須条件となっています。このため、コアとなる素材を選定するにあたっては、最低でも15~20名のモニターの方で効果を確認する試験を繰り返し施し効果を検証しました。また、食品素材の安全性についてはとても厳しい社内基準があります。例えばある国では現地の人は食べている素材であっても、日本で使われていないものであればそれをそのまま同じ量で使う事はできません。準備に時間もかかりますし、試験を行ってみて思うような結果が出なかった場合は、またやり直しになってしまいます。商品として発売するということを考えると使用する素材の原料価格も常に検討しなくてはいけません。効果とコストのバランスを取っていくのも大事な仕事のひとつです。

自分自身も、コラーゲンを生み出す力がアップするだろうと見込まれる素材で、食べることが可能なものは、実際に食べてみることもしています。
素材を研究するところから始まって、商品の最終的な味づくりまで、ゼロからスタートして約80%ぐらいのところまで関わっています。実際、発売当初のコラーゲンドリンクはあまり美味しいものではなかったんです。その後、美味しくするために色々な工夫を重ねています。味の研究を行うチームもありますし、実際に工場に行ってテイスティングもしています。ただ、美味しくない方が効果があると感じる方もいらっしゃるので、その辺のバランスも難しいですね。

資生堂は、北欧の極寒の地でも力強く育つ生命力を持った「コケモモ」とインドや東南アジアで健康食材として用いられる「アムラ果実」を組み合わせて摂取することでコラーゲンを生み出す力を相乗的に高めることを発見し、肌のハリやほうれい線などを改善することを目的とする美容特許を2011年に取得しています。この2つの組み合わせに辿り着くまでには、約300種類の素材を試しました。研究を開始するにあたって、コラーゲンを生み出す効果がありそうな素材の組み合わせだけではなく、それまでとは少し違う方向性から素材を集めたいと考えていました。効果のある素材を見つけるだけでなく特許取得も目的としていたので、プレッシャーもありましたね。

素材を評価する期間は5~6年。候補の素材すべてがいつも手元にあるわけではないので、コラーゲンを生み出す能力があるもの、ヒアルロン酸をつくり出す効果があるもの、糖化抑制効果があるものなど、素材ごとに効果をマッピングしたうえで組み合わせを考えて、実験を行います。
日本ではほとんどなじみのない植物ですが、インドでは古くからアーユルヴェーダに使われていて、肥満関係に効果があると言われている「アムラ」は、そんな中で出会った素材です。社内で肥満について研究しているチームに「何か良い素材はない?」と聞いて紹介してもらいました。

大学の時はコラーゲンの研究をしていましたが、資生堂に入社後は医薬品の研究チームに所属して、薬についての研究をしていました。入社してから14年目に食品のチームに移ることになり、大学での研究経験から、コラーゲン研究を担当することになりました。
薬は効果があることが前提の製品なので、食品の部門に移った時は、食品として摂ったものが効くのかどうかとまどう部分もあったのですが、実際にモニターの方に試してもらった時に、飲用後のモニターの方の声を聞いて、食品の研究に強く興味を持つようになりました。

資生堂のコラーゲン研究では「コラーゲンを生む力」に力をあてているので、これからもその点を大事にしていきたいと思っています。どうしたらコラーゲンをさらに生み出すことができるのか、これからも研究を続けていきたいですね。個人的には、コラーゲンができる仕組みについて詳しく研究できたらと思っています。
コラーゲンを摂取してもコラーゲンにはならないということが一般の方々にも広がってきましたが、「コラーゲンを生む力」について、研究員の私たちも学会発表や論文作成を通して、世の中にアナウンスして、目に留まるようにしていくことが大切だと思っています。