Q.化粧品を口に入れてしまったのですが、大丈夫でしょうか?
A
化粧品のほとんどは食べたり飲んだりしても安全で、誤って飲まれた方の様子が普通であれば心配はいりません。周囲にこぼしたりして体内に入っている量はごくわずかということがほとんどだからです。クリーム、乳液、ファンデーション、口紅、固形パウダーは毒性が低いため、ほとんどの場合中毒のおそれはありませんが、油分が入っていると下痢をおこすことがあります。
ただし、様子に異常が見られたり、下表の注意を要する化粧品を多量(体重10kgあたり、およそ50mL以上)に飲んだ場合は、ただちに医師の診察を受けることをお勧めしています。
注意を要する化粧品
化粧品分類 | 対応 |
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・ヘアカラー1剤、2剤 ・脱色剤(1剤、またはA剤) |
直ぐに口の中を水ですすいでから、コップ1~2杯(120~240mL、小児の場合15mL/kg体重以下)の水または乳製品(牛乳やヨーグルト)を飲ませてください。小児や高齢者で、うがいができない場合は口の中を濡れガーゼなどで拭き取ってください。 【ヘアカラー1剤、脱色剤(1剤またはA剤)】 【ヘアカラー2剤、脱色剤(2剤またはB剤)】 【混合した薬液】 |
・パーマネントウェーブ(1剤) | チオグリコール酸など還元剤が配合されています。少量でも飲んだ場合は、吐かせずに(飲み込んだアンモニア水が再び食道を通過することにより、症状が悪化することがあるため)牛乳やヨーグルトなどを飲ませて、飲んだ化粧品を持って医師の診察を受けてください。 |
・パーマネントウェーブ(2剤) | 臭素酸塩、過ホウ素酸塩などの酸化剤が配合されています。水または乳製品(牛乳やヨーグルト)を飲ませて様子をみます。経過を観察し、いつもと様子が異なる場合は、飲んだ化粧品をもって医師の診察を受けてください。 |
・ネールエナメル ・エナメルリムーバー ・エナメルうすめ液 |
アセトン、酢酸ブチルなどの有機溶剤が配合されています。 吐かせると気管に入りやすく、肺炎を起こすこともあるので、何も飲ませず、吐かせません。 無理に吐かせると気管に入りやすく、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)*を起こすこともあるので、口をゆすぐかうがいをし、何も飲ませず様子をみます。経過を観察し、いつもと様子が異なる場合は、飲んだ化粧品をもって医師の診察を受けてください。 |
・ヘアトニック ・アフターシェーブローション ・香水 オーデコロン ・化粧水 ・収れん化粧水 ・育毛剤 |
エタノール(エチルアルコール)が配合されています。大量に飲むと急性アルコール中毒になるおそれがあります。水か乳製品(牛乳やヨーグルト)を飲ませ、内容物を薄めます。無理に吐かせると気管に入りやすく、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)*を起こすこともあるので、経過を観察し、いつもと様子が異なる場合は、飲んだ化粧品をもって医師の診察を受けてください。 |
・洗顔料、全身洗浄料など | 直ぐに口の中を水ですすいでから、コップ1~2杯の水または乳製品(牛乳やヨーグルト)を飲ませて、吐かせないでください。 小児や高齢者で、うがいができない場合は口の中を濡れガーゼなどで拭き取ってください。 牛乳には、胃壁を保護し、成分の影響を弱める働きがありますので、あれば乳製品(牛乳やヨーグルト)を飲むほうが効果的です。 無理に吐かせると気管に入りやすく、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)*を起こすこともあるので、経過を観察し、いつもと様子が異なる場合は、飲んだ化粧品をもって医師の診察を受けてください。飲んだ直後に症状がなくても、経過を観察し、いつもと様子が異なる場合は、医師の診察を受けてください。 |
・リップクリーム ・口紅 |
食べたりしても安全で、ほとんどの場合、中毒の恐れはありません。水を飲ませて、様子を見てください。大量に食べると、油分により吐き気、嘔吐、下痢などをおこすことがあります。大量に食べた場合、および症状があらわれた場合はすみやかに医師の診察を受けてください。 ※カンフル配合リップもあり、カンフルは大量に誤食した場合に痙攣を起こすとされています。ただし、配合量から数本誤食しない限りは、問題ないようです。 |
・シャンプー ・ヘアスタイリング剤 |
直ぐに水で口をすすいでから、コップ1~2杯の水または乳製品(牛乳やヨーグルト)を飲ませてください。 乳製品(牛乳やヨーグルト)には、胃壁を保護し、成分の影響を弱める働きがありますので、あれば乳製品(牛乳やヨーグルト)を飲むほうが効果的です。 また、飲んだものを無理に吐き出そうとしないでください。嘔吐物が気管に入って、窒息や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)*をおこす可能性があり、危険です。 飲んだ量に関わらず、応急処置後、異常があれば、飲んだ化粧品を持って医師の診察を受けてください。飲んだ直後に症状がなくても、経過を観察し、いつもと様子が異なる場合は、医師の診察を受けてください。 |
その他 誤飲・誤食した量がわからない場合 |
誤飲・誤食した量がわからず不安な場合は、化粧品を持参して医師に受診することをおすすめします。 思わぬトラブルを避けるために、化粧品は、必ず小さなお子さまや認知症の方などの手の届かないところに保管してください。 |
その他 体重による誤飲・誤食の影響の違い |
誤飲・誤食した量が同じでも、体重が少ない方が影響が大きくなります。したがって、小さいお子さまが誤って化粧品を飲食した場合は、少量であっても様子をよく観察する必要があります。具合が悪ければすぐに医師に相談しましょう。 |
*誤嚥性肺炎とは、誤嚥(食べ物や唾液などが誤って気道内に入ってしまうこと)から発症する肺炎。
日本中毒情報センターのホームページ「中毒事故発生時の対応」
(「中毒事故が起こったら(家庭でできること、やってはいけないこと)」のページもご参照ください)