肌に様々な刺激を与えてしまうアレルゲン。特に食物をアレルゲンとした即時型の食物アレルギー(食べてすぐにじんましんや呼吸困難などの症状がでるもの)は、従来は経口摂取によりアレルゲンが体内に入ってアレルギーを引き起こすと考えられていました。しかし、最近の研究では、これらの経路に加えて、肌のバリア機能が低下して湿疹があるところから食物などの様々なアレルゲンが体内に入り、アレルギーを引き起こすことが判明しました。これは"経皮感作" と呼ばれ、新たな経路として注目されています。
人間の生体は、最初に入ってきたものに対して免疫を獲得する「感作」というシステムがあり、この免疫反応によってIgE 抗体が作られ、アレルギー疾患を発症します。本来皮膚は感作を起こしにくいものですが、肌のバリア機能(角層)が低下して湿疹などができていると皮膚表面のアレルゲンを免疫細胞が取り込む、いわゆる"経皮感作" が起こります。一般に、湿疹があるところにアレルゲンが触れ続けると数日間でアレルギー発症のきっかけとなるIgE 抗体ができてしまうと言われており、こうした免疫反応の状態が続くことで、アレルギー反応が起こりやすくなってしまうのです。一方、口から入った食物に対しては、食べたものを異物として攻撃して免疫反応が起こらないようにするシステム(経口免疫寛容)が働き、アレルギー反応の原因物質を抑制するIgE4 抗体が作られるため、食物アレルギーの発症リスクは抑えられます。
食物アレルギーは、子どものころに発症する割合が高いと言われていますが、最近の研究では、経皮感作によって、大人でも食物アレルギーを発症する可能性があることがわかっています。湿疹などで表面の角層が傷ついていると、アレルゲンはもとより細菌やウイルスの侵入を許してしまい、皮膚のバリア機能障害を引き起こします。これを防ぐためにも、保湿をしっかりと行うことがなによりも有効です。最新の研究では、新生児期から保湿剤を塗布していた乳児は、保湿をしていない乳児に比べてアトピー性皮膚炎を発症するリスクが低いということも判明しています。湿疹や炎症などの肌荒れが起きたら、赤ちゃんも大人もしっかりと保湿ケアを行い、皮膚からアレルゲンを取り込まないよう注意することが重要です。
出典:Journal of Allergy&Clinical
Immunology Vol.134,Issue 4,October 2014
右グラフ:保湿している乳児の方が、特に湿疹が起きやすい下肢外側の角質水分量(SCH)も
多い。皮膚のバリア機能の一部が強化されたと考えられる。
神奈川県 座間市
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