第4回 恵比寿 マサズキッチン 鯰江真仁 第4章 ひとりで、美しいと悦に入るのが本当の美学なんですよ。

撮影:立木義浩

<店主前曰>

資生堂入社6年目の石原万里江さんの告白。
「昨年の10月まで約5年間営業をしていました。愛知県の岡崎市で多いときには30店近くの担当店を持ち、営業車で店舗を回っておりました。お店の従業員さまや資生堂美容部員<BC>と売上をあげるために日々試行錯誤しながら活動していました。各店舗の従業員さまは資生堂の化粧品だけではなく、ドラッグストアなので薬品、食品、飲料、生活用品のメーカーとも関わりがあります。そのなかで資生堂をいちばん好きになっていただき、いい売り場がいただけるように、また紹介していただけるように、どのメーカーよりもお店を回り、誰よりも働き迅速な情報収集、数字の把握や共有を意識して動いていました。『明るく愉しく真剣に』をモットーに、ひたむきに一歩一歩目の前にあることと四つに組んで一生懸命働いてきました。
 でもどんなに動き回っても、一生懸命働いても、営業は数字がすべてですから、店頭の売上に結びつかなかったときは悔しかったです。またみんなで同じ目標に向かってひた走りに走り、最後に目標を達成した瞬間は最高に幸せでした。
 ある冬の12月商戦の打ち合わせで多くのメーカーによる売り場争奪戦のとき、ある店長が『うちでは毎月きちんとみてくれている資生堂の石原さんの意見をまず聞きますよ』とほかのメーカーの方々にいってくださって、わたしは思わず胸がいっぱいになり、涙が止まりませんでした。
 これからも商品開発で自分の思いや考えが商品や形になるときは、きっとまたわたしは目がウルウルしてくることでしょう」

石原: シマジさん、今度女子会でくるときの参考に「マサズキッチン47」の美味しいメニューを教えていただけませんか。

シマジ: ここの料理はすべて美味いですが、わたしが好んで食べているものを教えてあげましょう。なんという名前か忘れましたが、レタスの湯引きですね。これは、シェフ、どう説明したらいいんでしょうか。

鯰江: レタスの湯引きでいいんですが、お湯のなかに塩と太白ゴマ油を入れてレタスを湯引きするんです。

立木: 太白ゴマって煎らずに油を絞るサッパリしたやつだよね。

シマジ: タッチャン、どうしてそんなことまで知っているの。

立木: 学生のとき中華料理店でアルバイトをしたことがあるんだ。

シマジ: えっ、ホント!

立木: ウソ、ウソ。そんなのは大人の常識だよ。

鯰江: 立木先生のいう通りです。

シマジ: あのレタスの上にかかっているソースはなんですか。

鯰江: あれは自家製のオイスターソースです。

石原: 美味しそうですね。今度注文させていただきます。ほかにシマジさんご推薦のメニューは、どんなものがあるでしょう。

シマジ: いまの季節なら、鮎の春巻きですか。シェフ、あれは丸ごと鮎が一匹入っていますよね。

鯰江: はい、頭と尻尾は切り落として、一度腹を割いてほろ苦いはらわたの部分を集めて、それを割いた身のなかにすり込んでから、春巻きにして揚げるんです。

立木: 美味そうだね。おれも今度食べに来たい。

鯰江: シマジさんは1週間に2回はランチかディナーにいらっしゃいますよ。

立木: シマジ、チカダのことは後回しにしておれを誘ってくれ。鮎は時期があるんでしょう。

鯰江: そうですね。あまり大きくならないうちが美味しいです。

立木: じゃあ、事務所に帰ってスケジュールをみてからシマジに電話する。

シマジ: いつでも待っています。そうだ、石原さん、シャンタン<スープ>がいいですよ。夏はトウモロコシのシャンタンが出ます。詳しくは、シェフ、お願いします。

鯰江: 先程もお話しましたが、これはうちの自慢の上湯<シャンタン>なのです。ブタのバラ肉と金華ハムでスープを採って、生のトウモロコシを約3時間、このスープのなかで蒸すんです。するとトウモロコシの香りが出て最高の味になります。

立木: シマジ、我慢出来なくなった。来週来ようじゃないか。

シマジ: 毒蛇は急がない、ですよ。このシャンタンは当分ありますから。

石原: 女子会できたときどういえばいいんでしょうか。

シマジ: トウモロコシのスープをくださいといえば通じますよ。

石原: はい、わかりました。でも一応メモを取らせてください。

立木: シマジはここの料理をすべて食べているんだな。

シマジ: いや、おれは酢豚が苦手だから、それは食べていない。

鯰江: 立木先生、今度いらしたら是非うちの酢豚を召し上がってください。

シマジ: でもここで最高のメニューは北京ダックの揚げたやつでしょう。

鯰江: あれも人気ありますね。

石原: 北京ダックの揚げたのってなんですか。

鯰江: 業者からすでに燻製された北京ダックが届けられるんです。それを4つに切り分けて、一個ずつ油であげて塩をつけて食べるんです。

立木: それを写真に撮ってみんなで食べればよかったなあ。ねえ、お嬢。

石原: わたしもそう思います。

シマジ: 昼間は混んでいるからそんなややこしい料理は無理だったのです。今度タッチャンと食事をするとき石原さんも呼びますから、いらっしゃいますか。そうだ、倉本も来るか。

石原: 万難を排して参ります。

倉本: わたしもよろしくお願いいたします。

鯰江: でもこの企画は凄いですね。シマジさんにくっついていればいろんな店の美味しいものが食べられていいですね。次はどこのお店を取材するんですか。

シマジ: 中目黒にある鉄板焼きの「ブロックス」です。あそこのフォアグラのハンバーグが美味いんですよ。店で大人気のメニューなんです。

鯰江: フォアグラのハンバーグですって。それは贅沢ですね。わたしも休みの日に一度行ってみたいですね。

石原: シマジさん、いま伊勢丹のサロン・ド・シマジで売れ筋の商品はなんですか。

シマジ: それは「あじさいチーフ」です。京都のしぼりで出来ている四角いチーフなんですが、全部で9色あるんです。はじめは1個か2個を買うとしても、いずれは9色揃えたくなるような品物です。ジャケットの胸のポケットに無造作に入れてもパッと花が咲いたように美しいですよ。今日もしてくればよかった。

石原: おいくらなんですか。

シマジ: 1個8,700円ですか。シルクですから決して高くはありません。女性がしてもお洒落ですよ。

石原: 近々拝見に伺います。

シマジ: あるお客さまがピンクと紺ガラの「あじさいチーフ」をカウンターで手に取って「マスター、この2つのうち、どちらがいいと思いますか」というんですよ。するとバーにいたほかのお客さまたちの「迷ったら二つとも買え!」という大合唱がはじまったんです。結局、その勢いに負けてそのお客さまは2つともお買いになりましたけどね。

立木: それは集団サクラだね。

シマジ: でも先だっての土日の2日間で25個も売れました。お洒落で美しい「あじさいチーフ」は大人気商品ですよ。

鯰江: 聞いているだけでわたしも欲しくなってきました。

立木: たしかに普通のハンカチーフを上着のポケットに入れるときは形を作るのが難しいものね。うん、それはいいアイデアかもしれない。

シマジ: それからサロン・ド・シマジ特製のハンガーも作って売っています。これも人気商品です。色はブルーとピンクがあるんですが、格言もひっそり入っているんです。

石原: どんな格言ですか。

シマジ: 「究極のファッションは自己満足である」とハンガーに書いてあるんです。実際、お洒落は人にみせびらかすのではなく、ひとりで、美しいと悦に入るのが本当の美学なんですよ。朝、SHISEIDO MENのアイテムで肌や髪を整えるひとりの厳かな時間をもつ、というのも新しい男の美学なんです。鯰江シェフ、明日の朝からはじめてくださいね。きっと人生が変わりますよ。

鯰江: はい、わかりました。

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今回登場したお店

MASA'S KITCHEN
マサズキッチン

東京都渋谷区恵比寿1-21-13 コンフォリア恵比寿B1 TEL: 03-3473-0729
>公式サイトはこちら (外部サイト)

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