第7回 光文社文庫編集部副編集長 萩原健氏 第1章 ついに出た肌チェックCの正体。

<店主前曰>

先日わたしは一関の文化センターで、粟野健次郎顕彰会主催、一関市教育委員会、NPO法人一関文化会議共催の講演会で一席ぶってきた。題目は「人生において大切なことは、教育である」。そこでわたしは漢字教育がいかに大事か、江戸生まれの明治人が日本の国を列強の国々から植民地にされずに、どうして戦ってきたのか。いま日本人は英語の勉強より漢籍の勉強をすべきだ。そして人生でいちばん飽きなくて愉しいことは、勉強である。それには沢山本を読むことだ、とまじめに強調した。
 この題目を見たハギワラは「シマジさん、性教育の講演をするんじゃないですよね。心配です。わたしが御供しましょう。せっかくですから『異端力のススメ』のサイン会もやりましょう」ということになり、「乗り移り人生相談」のミツハシと「Pen」の担当編集者、サトウも応援に加わり、総勢4人で一関入りした。平日の午後1時半からの講演だというのに、約120名の聴衆が集まってくれた。ふるさとで講演するのは生まれてはじめてである。相変わらずわたしはどもりながら、舌の上で素敵な形容詞が音にならずいくつも死んいったが、みんな熱心に聴いてくれた。
 ささやかなわたしのふるさとへの恩返しが無事終わり、関係者から宴を催していただいた。御供の編集者3名も同席させてくれた。
 そこでいちばん酒を飲み、いちばん美味に舌鼓を打っていたのは、ハギワラであった。そのあと、鄙にはまれなオーセンティックバー”アビエント”で酒盛りをした。そこでもハギワラは大量にシングルモルトを流し込んでいた。翌朝、4人は8時半にホテルのロビーに集合したのだが、ハギワラ一人だけはバイキングの朝食を食っていた。一関駅で駅弁を買ったとき、ハギワラは水沢牛の牛めしを買って、新幹線のなかで悠々と平らげた。それからバッグからシングルモルトが詰まったスキットルを取り出して飲みはじめた。「どう、みんな、飲まないの?」と言うハギワラに、ほかの3人は昨夜のシングルモルトがまだ胃にへばりついている状態だったので、全員拒絶した。

シマジ おれが思うには、ハギワラが輝けるCの好成績をゲットしたのは、日頃の酒好きと美食とせいじゃないか。

木村 でも不思議ですね。いままで何にもつけていらっしゃらないのにCが出るなんて。たしかに食べ物にはコラーゲンやヒアルロン酸が含まれているものがあります。それがお肌に効果があったのでしょうか。

ハギワラ 木村さん、この機器が壊れているってことはないでしょうね。

シマジ ハギワラ、木村さんは東日本デパートの本部長さんだよ。そんな失礼なことを言うんじゃない。

ハギワラ は、はあ、失礼いたしました。

木村 まちがいなくハギワラさんは立派なCでございます。

シマジ ハギワラ、いままでチェックしてもらったおれの担当編集者たちに号外のメールをあとで打て。彼らもビックリするぞ。

ハギワラ もちろん、そのつもりです。みんなに自慢します。

立木 ハギワラ、自慢できるものが出来てよかったね。

ハギワラ 立木先生、ありがとうございます。

立木 なるほど、ファインダーから覗いてもハギワラの肌は張りがあってツルツルしている。

木村 そうなんです。この張りはタダモノではございません。

シマジ お前は美味いモノ好きな男だからな。ホルモンなんか最近食べたのとちがうか。

ハギワラ ぼくは浅草生まれですから、下町のB級グルメなんです。ホルモンも好きです。スッポンもよく食べます。

シマジ スッポンかもしれない。あれはコラーゲンのかたまりだからな。

ハギワラ それにぼくは中学校から大学まで明治なんで、同級生に日本橋の寿司屋や築地の海苔屋の息子なんかいるんです。

シマジ 男子校なんだ。

ハギワラ はい、明治大学の経営学部に進んではじめて2名の女子学生に遭遇しました。

シマジ いまではどこでも女子学生だらけだけど、当時はそうだったのか。

ハギワラ その2人ですが、1人はクマのような顔をしていて、もう1人がサイのような顔をしていました。

シマジ お前、上野動物園に入ったんじゃないか。でもクマのような顔は可愛いかもしれないな。サイってどういう顔なんだ。タッチャンわかる?

立木 おれもサイのような顔の女には出くわしたことがないからわからないな。

ハギワラ エラが異常に張っていました。

シマジ でも2人だけだったら、クマもサイもモテモテだったろう。

ハギワラ そうですね。

立木 お前は関心なかったという顔してるね。

ハギワラ はい、そうですね。

シマジ タッチャン、ハギワラは面食いなんだ。

立木 面食いは人生でひどい目にあうとよく言われているから、ハギワラ、気をつけたほうがいいぞ。なあ、シマジ。

シマジ どうせ男は女からひどい目にあうんだから、おれは美形のほうがいいと思うけどなあ。まあ、この話はこの仕事が終わってからじっくりやるとして、今日は木村さんに男の化粧について徹底的に聞こうではないか。

ハギワラ そうしましょう。

木村 頬の鼻の脇から下にかけてほうれい線といいますが、シマジさんは全然たるみがありませんね。

シマジ おれはハギワラとちがい、もう9年間、SHISEIDO MENのお世話になっているからね。

木村 ありがとうございます。その効果がしっかり出ていると思います。

ハギワラ シマジさんはSHISEIDO MENを使って顔のマッサージもやるんですか。

シマジ マッサージはやらないけど、丁寧にヒゲを剃る儀式をしてからSHISEIDO MENをつけてるんだ。

立木 そのヒゲ剃りセットをこの間men's Precious誌で撮影したんだ。何でも英国王室御用達のアイテムらしい。

シマジ これはここサロン・ド・シマジで開店以来よく売れているスグレモノなんだ。

ハギワラ へぇ、見たいですね。

シマジ これだよ。

ハギワラ へぇ、ちゃんとカウンターの下に隠しているなんて、シマジさん、芸が細かい。

シマジ これは世界最古の理髪店”トルフィット&ヒル”のヒゲ剃りセットでね。

ハギワラ 格好いいですね。たしかに絵になっています。

シマジ 格好いいだろう。お前の家の洗面台はこの一品で優雅になる。もちろんチャールズ皇太子も毎日使っている。古くはチャーチルも使っていた。

ハギワラ なるほど、説得力がありますね。

シマジ まずハギワラ、このシェービングクリームの香りを嗅いでみてくれ。

ハギワラ いい匂いです。こころが豊かになる感じです。

シマジ これはライムの香りなんだ。これをクリームをぬり込むようにヒゲが生えている部分につける。そうしてこの可愛いカップにお湯を入れてアナグマのブラシをつけて置いて。それでクリームの上からなでる。クリームからライムの香しい匂いが立ちこめて顔がサンタクロースのように白い泡に覆われる。そしたらこのレザーで剃ればいい。

ハギワラ このアイボリーの柄がセンスいいですね。

シマジ ブラシもレザーも同じアイボリーがいいだろう。

ハギワラ これって3枚刃のジレットですね。ぼくはいま5枚刃を使っています。

シマジ 5枚刃だとシェービングクリームが詰まってしまうので、あえて3枚刃を使っているところが憎いんだよ。おれもむかしロンドンの本店で「どうして5枚刃を採用しないのか」って訊いたことがある。答えは「シャボンを使うドイツ人やアメリカ人はよく5枚刃を好んで使うが、われわれ英国紳士は3枚刃で十分用を足している」と言うことだった。切れ味は3枚刃も5枚刃も寸分かわりがない。これを使うと男に生まれてきてよかったと思うし、朝早起きするのが愉しみになる。

立木 シマジ、もう少しでハギワラは買う気だぜ。頑張れ。

ハギワラ これは全部でいくらするんですか。

シマジ 78,000円かな。

ハギワラ そんなにするんですか。

シマジ ハギワラ、何言ってるんだ。このレザーセットは一生モノだよ。お前が死んだら棺桶に入れてもらえばいい。

ハギワラ 待ってください。家族会議を開いて決めます。

立木 ハギワラ、偉い。よくシマジの攻撃を巧くかわしたな。

シマジ こいつ素敵な古女房と別れて最近若くてきれいな奥さんをもらったばかりなんだ。

立木 やっぱり、面食いは面倒なことになるんだ。でもうらやましい話だ。

シマジ 12月まで一個取って置くから、ボーナスが出たら買ってみな。人生がバラ色になるとこを保証する。

ハギワラ 電気カミソリはどうですか。

シマジ 文明は文化を破壊すると言われるように、あれは文明だね。男の美学から言うと、あれは邪道だね。トルフィット&ヒルのレザーセットで剃ると12時間以上ヒゲのことは考えなくて済む。

ハギワラ それからいよいよSHISEIDIO MENにいくわけですか。

シマジ おれの朝の儀式を披露しよう。頭髪は資生堂のアデノゲン シャンプーで洗い、同じアデノゲン コンディショナーをつけておく。それからSHISEIDO MENのクレンジングフォームで洗顔して、それからペンハリガンのボディーソープ”ブレナムブーケ”で体を洗う。そしてアデノゲン コンディショナーを洗い流す。バスルームから上がってタオルで体を拭いてから、同じペンハリガンの”ブレナムブーケ”のデオドラントスティックを脇の下にぬり込む。そしていよいよSHISEIDO MENの登場だ。トーニングローションを叩くようにつけて、次にアクティブコンセントレイティッドセラムをぬって、その上にスキンエンパワリングクリームをつけ、最後にアイスーザーを目の周りにぬるんだ。木村さん、これでいいんですよね。

木村 はい、その通りです。

ハギワラ 時間は全部でどれくらいかかるんですか。

シマジ 正味30分かな。

ハギワラ その分、ぼくは寝てたほうがいいな。

シマジ ハギワラ、そんなことを言ってると、50歳になるころには肌がボロボロになって、シワシワになり汚いジジイになっていくぞ。

立木 シマジ、そろそろ、ネスプレッソ・ブレーク・タイムといこうぜ。

シマジ タッチャン、これはSHISEIDO MENの撮影だよ。

立木 あっ、そうか。シマジとしょっちゅう仕事しているから、勘ちがいしちゃった。ごめん、ごめん、悪かった。

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