第10回 双葉社 週刊大衆編集部 手塚祐一氏 第2章 新刊「マグナカルタ」の感想やいかに。

<店主前曰>

今年はヤケに寒い。そんな折り、一関のオーセンティックバー、アビエントに行ってきた。前もっていつ行くかマツモトバーマンに伝えておくと、一関市内や近郷からシマジファンが集まってくるのである。そんな信奉者のなかでもチバケイイチは大のシガーラバーである。シマジの連載は何でも隅から隅まで読んでいる。そしてこの連載の病みつきになったチバは、まだ30代だが、SHISEIDO MENを毎日ちゃんと使っている”選ばれし若者”の1人なのだ。使う前に水沢の資生堂専門店まで行って肌をチェックしてもらったそうだ。そのときの判定はEだったが、一念発起したチバは約2ヶ月間SHISEIDO MENを丁寧に使った。「結果はなんと今回Cの判定が下ったんです」と美味そうに葉巻を吸い、シングルモルトを煽りながら、チバはじまんするではないか。隣に座っているチバの顔をまじまじみると、たしかに肌つやがよくなったようにみえる。
「こんなに早く効果が出るとは思いませんでした」
「チバ、こうなったらBも夢ではないぞ」とわたしが煽るとチバは鼻の穴を膨らませてこういった。
「今度アビエントにいらっしゃるのは4月ですよね。それまでに頑張ってBに挑戦します」
 もしチバがBに昇格したならば、まだ日本に入っていないシガー、コイーバのテラミデ・エクストラを1本ご褒美にやらなければならないだろうなあ、とわたしはこころのなかで思っていた。

木水 東北にもけなげな青年がいるのですね。

シマジ だから東北の未来は頼もしいんですよ。

立木 シマジは一関まで勢力を伸ばしているのか。

シマジ 一関は子供のころ、疎開して高校卒業するまで育ったところなんだ。いってみれば、本当のふるさとだね。タッチャンだって一関の「ベイシー」にこっそりちょこちょこ通っているっていうじゃないの。

立木 こっそりじゃない。堂々と通っている。

テヅカ 「ベイシー」ってあの有名な名門ジャズ喫茶ですよね。カンウト・ベイシー自身が訪れたという伝説のお店ですよね。

立木 そうだよ。あそこにはナベサダやタモリもしょっちゅう出入りしている。あそこの大音響のJBLのスピーカーでジャズのレコードを聴くと、おれの全身の細胞が元気に蘇るんだ。おれはこころの治療に通っているみたいなもんだ。

シマジ ベイシーのマスターの菅原正二がこれまたいい男なんだよね。

立木 ショウちゃんは一関一高でシマジの一年後輩なんだってな。まったく”愚兄賢弟”って感じだ。

シマジ それはおれも文句なく認めるところだね。あいつはおれよりはるかに大人だからな。それがタッチャン、その”賢弟”が今度創刊した「マグナカルタ」を絶賛してくれたんだぜ。朝日新聞の広告をみてショウちゃんは、北上書房に走ったそうだ。とくに堤尭ちゃんの「二・二六事件の真相」と川村二郎の「天声人語を添削する」には感動したそうだ。ああいう立派な後輩に褒められるとおれもとりわけ嬉しいね。

テヅカ ぼくも「マグナカルタ」に感動して感想文を手紙でシマジさんに出したくらいですから。

シマジ その手紙のなかでタッチャンの巻頭ヌードを褒めていたよ。

立木 テヅカ、ありがとう。ちょっとこっちをみてくれ。いい顔に撮ってあげよう。でもおまえはもともとイケメンだからな。

テヅカ イケメンなんてとんでもない。ほくはただ・・・。

シマジ テヅカ、男も女も40歳までの顔は両親が作った作品だが、40過ぎると自分で作る作品になるんだぞ。だからよくイケメンなんていわれていた男が60際になると、まったくのアホズラになっているのをよくみるだろう。おまえもそろそろSHISEIDO MENを使うときがきたんだよ。こういう冬の乾燥時期にしっとりしている肌を保持していくのは難しいけど、いまからやれば何とかなるだろいう。

立木 シマジは「おれの肌をみろ」といいたいところだろう。

シマジ そうだね。この肌はまさにSHISEIDO MENのお陰だがね。

テヅカ たしかにシマジさんの肌はしっとりしていてその上ツヤツヤしていますよね。

シマジ あ、そうだ。テヅカの感想文今日持参してきたんだ。テヅカ、みんなに読んで聞かせてくれないか。

テヅカ 勘弁してください。いくら何でも小っ恥ずかしいです。

シマジ じゃあ、おれが読もうかといいたいところだけど吃音で時間がかかるしな。といって、立木大先生に読んでくれとはいえないしね。

立木 おれは撮影で忙しいんだ。

シマジ そうだ、朗読は木水さんがいい。木水さん、お願いします。

木水 わたしでよろしかったらいいですよ。

立木 木水さん、お願いします。編集者の感想文ってみんなも興味あると思うんだ。

木水 では参ります。
「前略 マグナカルタの創刊おめでとうございます。さっそく本屋に走り買い求め、読み出したら、まさに巻を措く能わずの感でした。シマジイズム溢れる誌面に感激半分、ジェラシー半分でしたが、とにかくじっくり、そして愉しみながら読ませていただきました。これは大人の週刊誌そのものですね。欲望への嫌悪と肯定、社会への憂いと希望、他者への憤りと愛情。そんな人間というアンビバレントな生き物を包み込む懐深さがありました。欧州のどこかの国に数百年前からデンと建つ大聖堂のような雑誌です。森羅万象に多情多恨であれ、をそのまま活字にするとどうなるか。シマジさんの脳内が具現化されているように感じました。同時に社会を諦観するのではなく、時代に興味を持ち、思考し、時に行動に移すべしーそんな叱咤が行間から聞こえてくるようで、身が引き締まる思いがしました。
 個人的に印象に残った感想を述べさせてください。
 まず巻頭の立木さんの巻頭ヌードはアートでした。表紙と連動してドキッとします。南伸坊さんの「本人事件簿」には笑いました。記事では「天声人語を添削する」は編集者にとって最高の読み物です。ただ表面的な美しさのみの文章に何の意味があるのか。人にじかあたりし、話を訊き、恥をかき、はじめて自らに本物の言葉が生まれる。シマジさんと同じように、川村さんもまたそうおっしゃっていると感じました。まさに出版人マグナカルタ。正しき批判は人の心を惹きつけます。そうだそうだと首肯しつつも正しい日本語を身につける努力をもっとせねばと尻の穴がキュッと締まりました。ぜひ続きを読みたいです。同時に川村さんによる『手紙の書き方』についての連載を希望します。私もそうですが、多くの人が手紙を書く際、自分の文章力のなさに頭を悩ませています。美しく正しい日本語による手紙の書き方をぜひレクチャーしていただきたいと願ってやみません。
瀬戸内寂聴さんの「恋と革命に生きた大杉栄の魅力」は、思想、行為、そして動機にも自由たれ。胸に突き刺さる言葉でした。本を作るとは何か。世の中に対して表現するとは何か。その答えがすべてこの一文に表されています。そしてこれを寂聴先生が書かれていることで、一層の重みと余韻が加わります。しかし大杉栄もまた吃音だったんですね。シマジさんと同じく。女性を口説くテクニックが同じような気が・・・。

 館淳一さんの「女の中のUFO」は館さんが執筆陣に加わったことで総合雑誌にありがちな堅苦しさが見事に解消されていました。天丼で言えば、油に飽きてきた頃に口にする古い良いぬか床で漬けたお新香といったところでしょうか。女性の肉体の神秘を真面目に論考しつつ、愉しく読ませる館さんの懐の深さを感じました。弊社でも多くの官能作品を書いていただいております。次回館さんが週刊大衆にて連載をなさる際には担当を志願します!
 花実ありすけさんの「猫の日」は本号の裏MVPでした。個人的な話で恐縮ですが、20年間という天寿を全うし、思春期のすべてを共に過ごした実家の愛猫が同じように黒猫でした。そのため淡々と綴られた文章から漏れ出す花実さんのクーニャンへの深い愛情に心震えずにはいられませんでした。わが家の黒猫も最期を迎える際、意識混濁、朦朧としたまま寝床のマットにへたり込んでいた時に、突然失禁し、翌日息を引き取りました。排泄がコントロールできなくなるということは、おそらく動物にとって死を意味するのだと思います。クーニャンとの19年間の歳月を微細に描く連載をぜひしていただきたいです。中野孝次さんの『ハラスのいた日』に勝るとも劣らない名作が生まれる予感がします。
とにもかくにも文藝春秋の百倍面白いマグナカルタでした。次号も愉しみにしております。
草々
平成24年12月25日 手塚祐一
島地勝彦様」

シマジ 木水さん、ご苦労さま。テヅカ、おまえは顔に玉のような汗をかいているぞ。冬は乾燥して肌がカサカサしてくるからちょうどいいかな。

テヅカ こんな経験は生まれてはじめてです。

立木 でもテヅカはちゃんと万年筆で書いているところはさすがに編集者だね。

シマジ いや編集者でもいま万年筆を持っていないヤツが大勢いるんじゃないか。パソコンを叩いて人生を終わるなんて哀れで寂しいことはないよ。

立木 おっといけねえ。シマジの前では万年筆の話は鬼門だった。

シマジ マルタン、今日はゴメンね。今日は内輪話に華が咲いてしまった。木水さん、そこのところを上手に通訳してあげてくださいね。

木水 今日は久しぶりに元気な男子会を拝見している感じです。

シマジ あっ、そうだ。「マグナカルタ」には資生堂の名誉会長の福原さんも本の話で健筆を振っている。ぜひ読んでください。

木水 はい。必ず買って読みます。でも感想文はお許しくださいね。

立木 感想文はいいんじゃないの。シマジ、それは酷っていうもんだぜ。

シマジ おれは何もいっていないよ。

立木 シマジは内心感想文を欲しそうな顔をしているぞ。今日の感想文はテヅカが編集者だからサラサラ書けたけど、普通の人はそんな簡単に書けないものだよ。第一、木水さんは万年筆を使ったことがない世代じゃないの。

木水 はい、そうです。

立木 いけねえ、いけねえ。シマジの前では万年筆の話は禁句だったな。

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