私をととのえるRitualサロン Vol.1

私をととのえるRitualサロン Vol.1

50代から、またもっと
面白くなってきた。
今がとにかく楽しい。
だから、
楽しみに待っていて。

Special Guest

ファッションエディター・スタイリスト
大草直子さん

大草直子さん

年齢とともに、心もからだも少しずつ変化していきますよね。
ときには戸惑うこともありますが、その変化の中にこそ、新しい気づきがあるのかもしれません。

この連載では、毎回ゲストをお招きして、ヘルスケアやウェルスケアについてお話を伺います。
何かヒントが見つかったり、正しい情報が得られたり、そして、同じ悩みの仲間がいる——そんな“みんなが集える場所”を目指しています。

第一回のゲストは、スタイリストの大草直子さん。最近は「ホルモンハグプロジェクト」を立ち上げ、たくさんの女性の悩みに寄り添う大草さんに、日々の中で大切にしていることや、今感じている変化について伺いました。

ファッションエディター・スタイリスト
大草直子さん

大草直子さん

1972 年生まれ 東京都出身。大学卒業後、現・ハースト婦人画報社へ入社。雑誌『ヴァンテーヌ』の編集に携わった後、独立。現在は、ファッション誌、新聞、カタログを中心にエディトリアルやスタイリングをこなすかたわら、 トークイベントの出演や執筆業にも精力的に取り組む。
2019年にはメディア『AMARC(アマーク)』を立ち上げ、「私らしい」をもっと楽しく、もっと楽にするために。ファッション、ビューティ、生き方のレシピを毎日お届けしている。2021年には、「AMARC magazine」を発刊。2025年春にはオンラインサロン「STYLE CAMPUS」を開設。新著『見て触って向き合って 自分らしく着る 生きる』(マガジンハウス)。

「他の誰でもない、美しさは自分で決めていい」

―― 多くの女性の理想像のような大草さんにとって、美しさとは何ですか?

まず、美しさの基準が多様化してきていますよね。造作の美しさ、つまり見た目ばかりをフューチャーした美しさではなくなっています。目が大きい、鼻が高いといった生まれ持ったものではないんですよね。やさしい声色、流れるような仕草、親しみやすい言葉など、こういった“形のないもの”が美しさをつくっていると思います。

たとえば肌にしても、シミの有無よりも、手入れが行き届き、慈しまれていること、そして、そんな自分の肌に満足していること。それが佇まいのきれいな人になっていきます。美しさは、もともとあるのではなく、後天的に育てていくものです。今は、自分で美しさを決める時代。誰かの基準ではなく、美しさは自分で決めていいのです。いくらでもやりようがあるんです。

大草直子さん

「自分を好きになるために、機嫌よく過ごすためにやる」

―― 大草さんにとって、毎日の中で大切にしている“Ritual(習慣)”はありますか?

できる限りのことは全部やっています。バスソルト入浴、スカルプケア、酵素パック、ピラティスなど、その日の状態で使い分けています。いつもアンテナをはって、気になったら試す。そのバジェットがあるのも、今の年齢だからですよね。すべては、自分をもっと好きになるため、今日を機嫌よく過ごすため。最近、横顔がたるんできたなと思うこともありますが、過去の自分との競争はとっくに手放しました(笑)。昨日でも明日でもない、今日の自分なんです。疲れていたらメイクは落としてお風呂は翌朝に。Ritualといっても無理はしないですね。

普段すごいせっかちなのですが、スキンケアは私にとって瞑想の時間。音楽もYouTubeも流さず、“ながら”はしないで、自分と向き合います。肌も髪もわかりやすく応えてくれるから楽しいですよね。あと、朝・晩、毎日2回は、鏡で全裸をチェックします。寝る前のストレッチでおへその位置が変わったりと、小さな変化がわかります。確かに胸の位置は下がってきたけれど、今の体が一番いいと思っています。筋が出たボディにはシャツが似合うし、ピラティスで筋肉がついて、思う通りに服を着こなせています。

大草直子さん

「人間だからお互い様。困ったときは周りに甘える」

―― 53歳を迎えられて、これまでとの変化は何かありますか?

50代になって手の血管や筋がでてきて、ジュエリーが前より似合うようになりました。ヨーロッパのマダムのように全部の指につけるのが、やっと最近できるように。髪も癖が出てきて、今が一番好きです。ただ、体力だけは間違いなく落ちています。もともと馬並みの体力があったんですけどね(笑)。今はサプリメントを摂ったり、食生活を整えたり、体を動かして代謝を上げています。フィジカルに動くと、心も上がってきますよね。

それから、周りに甘えられるようになりました。つい先日、体調不良で仕事をキャンセルさせていただくことがありました。以前の私だったら、どんなに体調がわるくても何が何でもやりきっていたはず。30代・40代の頃は、子どもが熱を出しても休むと言いにくい時代だった。でも、あとに続く人が言い出せなくなってしまうんですよね。人間だからお互い様。困ったときは周りに甘えていいんだと思えるようになりました。

大草直子さん

「疲れたよねって自分に声をかけて、まずは自分で受け止める」

―― 更年期による心身の変化を感じることもありますか?

ホルモンバランスの変化からフェムケアを始めて、洗浄ソープや専用美容液を使っています。ときには、落ち込んだり、ネガティブになったり、イライラしたりすることもありますよ。そんなとき、前は自分を鼓舞しなきゃと思っていました。でも、これも人間だから当たり前。「そうだよね、疲れたよね」って言葉をかけて、一旦、自分を抱きしめてあげるようなことをするんです。パートナーや友だち、誰かにしてもらうのではなく、自分で自分を受け止めてあげるんです。できたら声に出すのがおすすめ。お金も手間もかけず、すぐできます。私は猫に話しかけている程で、自分に言葉をかけています(笑)。

更年期は、生理と違って教育を受ける機会がなく、自分から情報収集をしていかないといけないですよね。100人いれば100通りで、同じ症状は二人といない。女性外来は都心の方が充実していることが多く、地域格差も大きいんです。そこで、適切な情報をシェアできて、みんなで話せる場所をつくろうと「ホルモンハグプロジェクト」を始めました。ホットフラッシュひとつをとっても、さまざまな対処法があります。みんなでシェアすれば、「こういうのもあるのか」と知ることができますよね。更年期は男性にもあること。怖いものではなく対処できるものなのです。いずれピンクリボンのようにバッジを作って、全国でホルモン検査が受けられるようにしたいですね。最近は生理がそうなってきたように、更年期ももっとオープンで身近なものになることを願っています。

「70歳になったら、これぞシンプルな服を着ていたい」

―― これから大草さんは、どのように歳を重ねていきたいですか。

ファッションで言うと、50代はまだ迷って、取捨選択したい。でも70代には、シャツとネイビーのジャケットとチノパン、ブラックドレスと赤リップといった、これぞシンプルな服を着ていたいです。きっとその頃には、今より人に優しくなったり、内面も成熟していると思います。だから今は、いろいろ試したい。たくさん経験していくなかで、着こなし方、物の選び方が確立されていきます。私の好きな白シャツとデニムも、30代より今のほうが断然似合っています。70代にはもっと似合っていると思います。

そして、今、編集者としての原点に立ち返ろうとしています。自分が伝えたいテーマを決めてビジュアルに落とし込む、そういう編集の仕事をして、初心に戻りたいと思っています。もともと人に伝えたいから編集者を選びました。人に伝えるのは私の活力です。インスタライブもイベントも、何よりもワクワクする。それは仕事でもプライベートでもすべての源になっています。今がとにかく楽しいんです。だから、楽しみに待っていてほしいです。人生はもっともっと面白くなりますから。