うすはりグラスのできるまで

Part 2職人技

手に取ったときの軽さ、薄さによる繊細な飲み口にガラスの極限の美しさを感じるうすはり。すべての工程が職人による手仕事で行われているため、1日2000個をつくるのが限界だという。

観賞用の芸術作品ではなく、普段使いのグラスだからこそこだわる

うすはりグラスの厚さは1㎜以下、通常の約1/2だ。その薄さになると、通常のグラスでは気にならない気泡やキズが目立つようになるため、ガラスを吹く作業から口当たりを決める仕上げの作業まで、すべての工程において職人泣かせのグラスといえる。この道50年を越える名工をもってしても、「まだまだ」と言わせるガラスづくり。手の届かない観賞用の芸術作品ではなく、普段使いのグラスだからこそ、この技術がいきる。

■玉取り ―1300度の窯からタネを取る―
松徳硝子の無鉛クリスタルガラスの原料は、光化学レンズなどに使用される純度の高いもの。その材料へのこだわりから、透明度の高いうすはりが生まれる。1300~1400度で熱されたタネと呼ばれる原料を、吹きさおを使って窯から取り出す。この作業を「玉取り」という。このタネの出来によって生産性が大きく変わり、出来の悪いときは、うすはりなど高度な技術が要求されるグラスを製造できないこともあるのだとか。

玉取り1

玉取り2

■吹き ―均一な厚さに吹く―
ガラスづくりの花形ともいわれる作業。下玉のついたさおを再び窯の中に入れ、グラスの重量分のタネを巻き取る。そのさおを上に向けて回しながら息を吹き込み、ガラスを膨らませる。今度は足元にある金型へ入れ、金型に沿ってガラスを膨らませることで、グラスの形状に仕上げる。金型に張られている水には、金型を冷やすと同時にガラスの表面をつるつるに仕上げる効果があるという。うすはりの滑らかな肌のつやはここで生まれる。

吹き1

吹き2

■徐冷 ―1時間かけてゆっくり冷やす―
形になったとはいえ、まだ500度以上あるグラス。そのまま常温に置いておくと急に冷えて割れてしまうため、吹いた後のグラスは専用の徐冷炉へ入れられ、1時間以上かけてゆっくりと常温まで冷やされる。この段階でグラスの規格に合っているか、1点1点人の手によって商品を検査。規格外のグラスは細かく粉砕した後に溶かし、再び原材料としてリサイクルされる。

徐冷1

徐冷2

■火切り ―余分な部分をカット―
この時点では、グラスはまだ吹きさおについていた部分と一体で、風船のような形をしている。そのため火切りという工程で余分な部分をカットする。まずグラスの規格に合った高さに、ダイヤモンドカッターで線を引くように細くガイドをつける。ガイド部分にのみ火を当ててガラスを膨張させることにより、グラス部分と余分な部分が容易に分割。この作業によって、口のあいたグラスの形になる。

火切り1

火切り2

■摺り ―グラス断面をなめらかに―
火切りを経てできたグラスの断面を滑らかにするために、摺りを行う。まずは研磨機で粗く摺り、次に手で仕上げを行う。回転する金板の上に金剛砂(硬い微粒な砂)と水を合わせて練った研磨剤を垂らし、遠心力で薄く広げてグラスを研磨。厚さ1㎜を切るうすはりは他のグラスと比べて削れやすく、研磨のわずかな加減でも破損してしまうので、摺りの工程にも熟練の技術が必要とされる。

摺り1

摺り2

■口焼き ―口当たりを左右する工程―
研磨されたグラスの断面を1000度前後のバーナーで数秒あぶることで、グラス断面の角を溶かし、なめらかな口当たりに仕上げる。火を当てる時間や焼き加減によってグラスの要ともいえる口当たりが変わってくる。グラスの運搬に木の箱を使っているのは、グラスの熱を吸収して木自体が焦げてくれるから。金属の箱だとグラスが負けてヒビが入ってしまうし、プラスチックだとグラスの熱によって溶けてしまうのだ。

口焼き1

口焼き2

■最終検査 ―ここでも1割が除外―
グラスが規格に合った仕上がりかどうかをチェックする最終検査。素人が目にしただけではわからない筋や気泡、厚みのムラなどを検査し、合格したものだけが製品となって販売される。徐冷後の検査の段階で入念なチェックを経ているものの、最終検査でも約1割が除外されるという。そのため、吹きの職人が100個のグラスを吹いても、製品になるのはそのうちの60~65個程度なんだとか。

最終検査

■完成 ―毎日の食卓に彩りを―
こうしてさまざまな工程を経て製品となったうすはりが工場から出荷される。現在のうすはりシリーズは、タンブラー、オールド、ワイングラスなど、サイズ違いも含めて20種類以上。職人の熱い思いが込められたグラスで、いつものお酒、いつもの晩酌を、特別なひとときに変えてみては?


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