取材に応じてくれたのは、靴職人の浜野律朗さん。彼は、「縫い目のひとつを取っても、職人の個性や腕が見えてくる。細かな部分へのこだわりが、全体の佇まいを決めるんです」と語る。それゆえ、この製作所では、流れ作業ではなく、「つり込み」から「すくい縫い」までの最も重要な工程を、一人の職人が担当。より職人の技を感じることができる靴づくりを行っているという。
「職人は生涯勉強」という田中さんをはじめ、製作所で働いているのは、約15人の職人たち。彼らが1日に生み出す靴は、40足に満たないという。せわしない時代のなかで、手間をかけ、質で勝負をする職人たち。長く愛することができる上質なシューズが生み出されるのは、彼らの高い技術と靴づくりへの愛があってこそだ。