HAIR TOUCH YOU のばせば届く。

INTERVIEW

医療⽤ウィッグを受け取った⽅

「医療用ウィッグが自分の可能性を広げてくれた」元SKE48・矢方美紀、自身のウィッグ使用体験とヘアドネーションのあり方について語る

フィーノが医療用ウィッグをとりまくすべての方をつなぐプログラム【HAIR TOUCH YOU のばせば届く。】。インタビューを通し、医療用ウィッグを必要とする方、髪を寄付する方、支援する方など、360°の方々の想いをお届けいたします。今回は、アイドルグループ『SKE48』の元メンバーで、現在は声優・タレントとして活躍されている矢方美紀さんにお話しを聞きました。25歳の頃に乳がんがわかり、医療用ウィッグを使用していた矢方さんが語る、ご自身の「髪」に対する思い入れの変化とは?

医療用ウィッグと出会う前は“不自然さ”にとらわれていた

診断を受けたときのお気持ちや闘病時の困難について、ご無理のない範囲でお聞かせください。

25年間の人生の中で、一度も大きなケガや病気をしたことがなかったので本当に驚きました。SKE48を卒業して、ちょうど次のステップに進もうと考えていた時期だったので、そのタイミングで病気になってしまったのはつらかったです。

ネットで「がん」って調べると、ひとつスペースを空けて「余命」って出てくるんですよ。それを見たときには、本当に「どうしよう」と思いました。脱毛や不妊などといった抗がん剤治療の副作用に対する不安も大きかったです。

それでも、タイトな時間の中で胸の手術方法を選択したり、どういう道筋を選べば良い方向に進むことができるのか、考えなきゃいけないことは山積みでした。

闘病中に医療用ウィッグを使用するにあたって、大変だったことや、良かったことはありましたか?

がんになる前から、医療用ウィッグの存在は知っていました。でも、実際に病院内の販売スペースに行ったら、自分が思っていた値段よりもずっと高くて……。数十万するものもありました。

なので、最初は化学繊維のウィッグをオンラインショップで買ったのですが、脱毛した頭に被ると皮膚に毛が刺さってしまったり、肌に当てるネットの内側が粗く作られているのも多くて肌荒れしたり、悩まされていました。

そんなとき、NHKさんの特集番組を介して出会ったのが、「ふくりび」(全国福祉理美容師養成協会)さんでした。がんで見た目が変わってしまった不安を、「ふくりび」さんは温かい姿勢で受け止めてくれて。最初は少し緊張したんですけど、実際に医療用ウィッグを被ってみると「こんなにも普通のウィッグと違うんだ」と、感動したのを覚えています。

人毛で作られているので自然ですし、ネットの内側も直接肌を傷つけないように作られているので安心です。お出かけやお仕事で髪を巻きたいときも、私が使っていた化学繊維のウィッグだと、耐熱性が低くてうまくいかなかったんですけど、「ふくりび」さんの医療用ウィッグは自分の髪が長かった頃みたいに自然なアレンジができました。

それまでは、いつも“不自然さ”にとらわれていたのですが、医療用ウィッグを着け始めたら「脱毛してたかな?」と思うくらいナチュラルで、前向きな気持ちになれました。

固定観念からの解放が、オシャレを楽しもうと思ったきっかけ

医療用ウィッグを使用して、心境に変化はありましたか?

ウィッグって、本当に長さや形が色々あるんです。地毛の場合、ロングヘアにしようとすると伸ばすのに一年くらいかかっていたので、その日の気分によって髪型を自由に変えられるっていうのは、髪が抜けたことで初めて知れたオシャレでした。ウィッグに対応してくれる美容院もあるので、たとえば結婚式に行くときも、ちゃんと編み込みのヘアアレンジをしてもらったりして。

がんになって、オシャレができないとか、ずっと髪のことを気にして生活しなきゃいけないのかなとかも思っていたんですけど、そんなことは全然ありませんでした。毎日髪の長さを変えたり、ヘアアレンジを楽しんだりして、むしろ気分をリフレッシュすることができたんです。

がんになる前と今とで、ご自身の「髪」に対する思い入れはどのように変化しましたか?

抗がん剤治療で髪が抜けたとき「坊主になる機会って、人生の中でそんなにないよね」と思ったんです。そうしたら「自分にはこの髪型しか似合わない」みたいな固定観念がなくなったので、短髪の時期はハイトーンカラーにして、医療用ウィッグではロングヘアを楽しんでいました。

「私、意外とこういう髪型も似合うかも」と、ポジティブにとらえることができたんです。医療用ウィッグと出会って、できないと思っていたことが「全然できる!」に変わっていったんですよね。

病気だからと人生を諦めるんじゃなくて、「ふくりび」さんを始めとする多くの方の助けを借りながら、いろんなことを試してみて、以前よりも自分の可能性が広がったように思います。

「誰かのために行動したい」という人たちの想いが尊重される素晴らしさ

フィーノでは、寄付いただいた髪をできる限り余すことなく活用し、医療用ウィッグを必要とする方々に選択肢を提供できるよう、「ふくりび」さんと連携して、安価で販売したりレンタルしたりするなど、様々な提供方法を考えています。医療用ウィッグを使用されていたお立場として、どう思われますでしょうか?

高価な医療用ウィッグが多い中、少しでも安価に提供してくれたり、レンタルで気軽に試したりできるというのは、すごく希望が持てます。

また、寄付いただいた髪を誰かに届けるためには、きっと厳しい基準があると思うんです。髪って全てが同じ長さや太さじゃないので。でもいろんな髪が集まることで、むしろ受け取り手の皆さんの髪質もそれぞれの個性があるから、よりナチュラルなウィッグができるのかなと思ったりもします。

だから、いろんな人からいただいた髪をできる限り形にしようというのは意味のあることだし、「誰かのために行動したい」という人たちの想いが尊重されるのは、とても素敵だなと思います。

最近では「髪を切りに行くからヘアドネーションをする」みたいに、気軽に取り組まれている方も多いように思います。今までは少し特別な行いだったヘアドネーションが、だんだんと自分たちの日常生活に馴染みつつあるのはすごいことですよね。

また、私の友達でも乳がんに罹患した子がいるんですけど、その子は治療後ずっと髪を伸ばしていて、ある程度伸ばしたら寄付したいそうです。自分が過去に髪のことで悩んでいて、そこで助けてもらった経験があるからこそ「次は自分の髪が誰かのためになってくれたら」と、また新たな想いが巡っているのも素晴らしいなと思います。

相談できる美容師さんがいることの心強さ

闘病中のウィッグや髪に関する悩みは、どのように対処していましたか?

まず「ウィッグに関する相談はふくりびさんに」というのは徹底していました。定期的なトリートメントやカラーメンテナンスも「ふくりび」さんにお願いしていましたし、普段のお手入れや、洗い方、保管の仕方など、一からすべて教えていただきました。

たとえば脱毛したことで頭皮の汗が止まらない時期があったんですけど、ウィッグの内側に脇汗パッドを貼ると良いというアドバイスをいただいて、すごく助かりましたね。

地毛になった今は、がんになる前からずっと担当してくれていたお友達の美容師さんに、再びお世話になっています。脱毛すると髪質も変わりやすいのですが、そこの美容院の皆さんは、私ががんになったことでいろいろ調べてくれて、親身にサポートしてくれました。

がんについて理解のある美容師さんって、実際はまだそこまで多くないのかもしれません。でも、髪のプロが身体のことに寄り添ったアドバイスをくれたら心強いですし、「これからもこの人に頼もうかな」と思えます。美容師さんと良いコミュニケーションをとれると、自ずといろんなオシャレが楽しめるので、がんや病気にも関心を持った美容院が増えてほしいですね。

ヘアドネーションを検討する方々へ「その気持ちは間違いなく誰かに届く」

医療用ウィッグについて、世の中の人にどのようなことを知ってもらいたいですか? 矢方さんが、今後「やってみたい」と思うこともあわせて教えてください。

私が罹患した乳がんは婦人科系疾患の中では、日本だと結構上位の病気なので、抗がん剤治療の副作用で脱毛してしまうことと、医療用ウィッグのことは併せて多くの人に知ってほしいです。もし自分が乳がんになってしまったとき、医療用ウィッグの知識があれば選択肢の幅も広がると思うんです。

最近は、ナチュラルに見えるウィッグの着け方などをSNSで発信している方もいます。そういう投稿がより多くの人に届いたらいいなと思いますね。

私個人としては、自身の「声」と連動したコンテンツで、情報を届けたいです。まだ、何をやりたいかは具体的に出てこないんですけど、文字や写真で見るだけじゃわからない説明も、ナレーションがついたり、声によって導かれることで、すんなり理解できたりすると思います。今回のフィーノのプログラムでも、今後「耳で届ける」ということが、形になったら嬉しいです。

ありがとうございました。矢方さんの実体験から生まれた貴重な言葉や想いも紡いでいけるようなプログラムに育てていきたいと思います。

矢方 美紀MIKI YAKATA

1992年、大分県生まれ。2009年に名古屋を中心に活動するアイドルグループSKE48のメンバーとしてデビューし、2017年に卒業。翌年、乳がん手術を公表した。タレント活動のかたわら、講演などで治療の経験を語っている。著書に「きっと大丈夫。~私の乳がんダイアリー~」(双葉社)。

「fino ウィッグBank」について

フィーノの医療用ウィッグプログラム【HAIR TOUCH YOU のばせば届く。】の中のひとつの取り組みである「fino ウィッグBank」では、現在ヘアドネーションを募っており、31cm以上であればどのような髪の状態の方でも、また年齢や性別も問うことなくご参加いただけます。寄付いただいた髪については、NPO法人「全国福祉理美容師養成協会(ふくりび)」にサポートしていただき、医療用ウィッグの販売のみならず、レンタルウィッグや医療用ウィッグ製作技術のための講義用として寄贈するなど、髪の状態と、その時々のニーズに応じて最適な活用法にて無駄なく生かしていきます。

ヘアドネーションをご希望の⽅は
必ずfinoオリジナルドネーションキットを
お申込みください。

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