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第7回 西麻布蕎麦たじま 店主 田島基行氏 第2章 蕎麦湯を飲みながら三千盛をチビチビと。

<店主前曰>

手打ち蕎麦の名店「蕎麦たじま」は広尾のサロン・ド・シマジ本店から指呼の間にある。だから蕎麦好きのマスターは、主に昼間だが、三日にあげず顔を出す。だがいつも満員ですぐには入れないときがある。並ぶのが嫌いなマスターはあらかじめ電話で予約してから行くことにしている。昼間は一人客が多い。どこかでみたような女優が一人楚々と食べている姿をよくみかけるが、マスターには名前がわからない。ちょうど立木義浩先生とたじまに取材に行ったそのときも、綺麗な女優が昼時間の最後のお客として一人で食べていた。「やあ、お久しぶり、元気?」とタッチャンは気軽に彼女に声をかけていた。「あら、立木先生じゃないですか、ご無沙汰です」と女優は美しく通る声で応えた。
「タッチャン、きれいな女だね。彼女は誰なの」とマスターが小さな声で訊くと「シマジは知らなくてもいいの。よくテレビに出ているコだよ」とタッチャンは応えた。たしかにテレビをほとんどみていないマスターにとっては、女優の名前を知ったところで何の意味もないかもしれない。

シマジ 田島さん、そろそろおつまみを作り蕎麦を茹でてください。

田島 はいはい。わかりました。

シマジ タッチャン、今日、資生堂からきていただいた助っ人の芝﨑さんは、高校を卒業と同時に資生堂に入社して、まず最初はBC、いわゆるビューティーコンサルタントとなり、デパートの対面販売をやっていた。そして多くの月日が流れて出世して、いまは本社のデパート部の管理部門で働いているんだよ。

立木 芝﨑さん、最初に資生堂に入ったときの同期は何人くらいいたの。

芝﨑 たしか70人ほどいたように覚えております。

シマジ 資生堂のBCは美人が多いから、結婚して辞めたり、子供が出来て産休に入ったりして、女性が長く職場で働くのはけっこう大変なことなんだろうね。

芝﨑 そんなことはありません。本社には立派な託児所もあり、女性が働きやすい環境が整っております。

シマジ だからここまで思いっきり働けたんだ。

芝﨑 資生堂は社内教育が厳しく現場のBCは年に1回試験を受けます。

シマジ そうだってねえ。資生堂ではペーパーテストも実技もやるんだってね。そうして社員のレベルを維持しアップしているんだ。

立木 そうだ、この間、いまの編集者は質が落ちているから、資生堂を見習って社内テスト方式を取り入れたほうがいい、とシマジと話したばかりだったね。

シマジ 思い出した。出版社は編集者の才能でもっているんだが、その才能をテストするのが難しいという話をしたよね。それはそうと、芝﨑さんは飲める口ですか。

芝﨑 はい。多少ですが。

シマジ それでは三千盛を冷やでもらいましょうか。

立木 シマジが日本酒を飲むのは珍しいじゃないの。おれはてっきりここにもタリスカーのスパイシーハイボールがあるのかと思っていたよ。

シマジ まさか。手打ち蕎麦の玄妙で繊細な味を愉しむにはスパイシーハイボールではきつすぎる。やはりここは三千盛でしょう。あっ、そうだ。タリスカーといえば、新宿伊勢丹のサロン・ド・シマジが、なんと全国売り上げランキングで18位に入っているんだって。

立木 えっ、シマジが土日祭日午後からバーマンをやっているだけでか。

シマジ そうなんだ。まずはお客さまにタリスカーのスパイシーハイボールを一杯飲んでいただいているからね。それに、あれが大好きでタリスカーのスパイシーハイボールばかり注文する方もいらっしゃる。

立木 じゃあ訊くけど、日本でいちばんタリスカーを売っている店はどこなんだ。

シマジ それは名古屋にあるスナックで、そこにはタリスカー10年しか置いていないらしい。この、タリスカーひとつに特化したところが素晴らしいじゃないの。一度飲みに行ってみたいと思っているくらいなんだ。タッチャン、一緒に行く?

立木 いつも誘っていただきありがとうございます。はい。

芝﨑 SHISEIDOの売り上げにおいて新宿伊勢丹SHISEIDOカウンターは全国屈指の売上規模です。

シマジ SHISEIDO MENは同じサロン・ド・シマジのブティックでよく売れていますよ。リピーターがどんどん増えていますからね。

芝﨑 シマジさんのお肌はツヤツヤですものね。最高の実例としてみなさまが認めていらっしゃることでしょう。

立木 シマジはテカリすぎ。それに今日のような色の入ったメガネはやめてくれないかな。どうしてもアンマさんにみえちゃうんだ。それにお前もおれも生まれつき色黒ときている。写真になるとどぎつくなるんだ。シマジがいっぱいメガネを持っていることは知っているけど、撮影のときは素透しのレンズにしてくれないか。

シマジ なるほど。わかった。今度のときまでにこのメガネを素透しのレンズに代えておくよ。

立木 別にレンズを代えなくてもいいじゃないの。同じものを迷わず二つ買うのはシマジ哲学じゃないのか。レンズを代えるなんてみみっちいことをしちゃだめだよ。

シマジ 了解しました。これはこれとして愉しみ、同じフォルムに新しい素透しのレンズを入れてきます。

田島 お待たせしました。冷やの三千盛です。ミガキニシンの炊き込みと小エビの掻き揚げで一杯やっていてください。

シマジ ありがとう。ここの酒のつまみは格別なんですよ。まずは芝﨑さん、一杯どうですか。

芝﨑 ありがとうございます。あっ、美味しいお酒ですね。

立木 おれにも一杯飲ませろ。

シマジ まだ撮影中だけど大丈夫。

立木 シマジ、おれと何年付き合っているんだ。

シマジ 40年以上かな。

立木 この程度で酔うようなおれじゃない。

シマジ ではどうぞ。

立木 これは美味い。蕎麦に合うね。開高さんが言ってたよな。美味い酒は限りなく名水に近いと。まさにこれだね。

シマジ あと開高さんに教わった日本酒の名酒は奈良の春鹿だったね。

芝﨑 この美味しい三千盛はどちらのお酒なのですか?

立木 さすがはお酒好きの芝﨑さんらしい。鋭い質問だ。

シマジ 三千盛は岐阜の酒です。

芝﨑 本当に飲みやすいですね。今度女子会でみんなにこれを教えてあげようかしら。

シマジ ここも夜はよく女子会をやっているようですよ。芝﨑さん、ぜひ今度、いつもここにきているような顔をして自慢してください。

芝﨑 このニシンも美味しいですね。甘辛いところが三千盛に合いますね。

シマジ 小エビの掻き揚げも食べてみてください。

芝﨑 たしかに格別です。カラっと揚がっているのが上品ですね。

シマジ もうひとつ教えましょう。ここにさきほどからきている蕎麦湯を飲みながら三千盛をチビチビやると堪りませんよ。

芝﨑 さっそく挑戦させてください。うん、これは大人呑みですね。ここに呼んでいただいた今日のわたしは幸せです。

立木 うん、なるほど。この蕎麦湯は蕎麦粉を別に溶かしているんだな。美味い!高級感がいいね。

シマジ さすがはタッチャンだ。よくここの蕎麦湯の正体を解明出来たね。

立木 その辺の町の蕎麦屋の蕎麦湯は水っぽくて飲めたものではない、なんてことがよくあるからね。コクのある蕎麦湯はタレも入れずこのまま飲んだだけで滋味だよね。酒のつまみにもなる。この熱いドロっとした飲みものと冷たい酒の相性が最高だ。体のなかに入ってぬる燗になる。

シマジ これも人生の知る悲しみの一つですかね。

立木 そうだね。これは認めよう。

今回登場したお店

蕎麦たじま
東京都港区西麻布3-8-6
>公式サイトはこちら (外部サイト)

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