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第9回 一関アビエント オーナー 松本一晃氏 第2章 メーキャップで東北の女性たちが笑顔を取り戻した。

<店主前曰>

3・11の東日本大震災のとき一関も被害を被った。バー・アビエントでも棚に並べていた高価なウイスキーのボトルが床に落ち、その上にほかのボトルがぶつかるように落下してきて、多くのボトルが破壊された。まずマツモトは仙台に暮らしている女房と子供の安否を気遣った。オートバイに飛び乗り仙台に駆けつけた。仙台は停電で真っ暗だったが、妻と子は無事だった。それから当分店は休み一関で材料を仕入れ仙台の妻の実家で料理を作ってあげた。身内に感謝された。3・11から2ヶ月後、わたしはマツモトの運転で陸前高田を訪れた。津波の傷跡も生々しい光景にわたしは息を呑んだ。少年のとき海浜学校で泳いだあの高田松原は消えていた。ここの砂浜は遠浅で風光明媚なところだった。それが松の木がただ一本だけ残され砂浜は消えて、不気味な深い海に変形していた。あまりの残酷な風景に言葉が一言も出なかった。

シマジ マツモトは陸前高田のバーが災害後に開店するのを手伝いに行ったんだってね。

マツモト はい、知り合いが地元の人を励ますためにもバーを開いたほうがいいと考えたそうでして、わたしも手伝ってきました。これがそのとき作ったカクテルです。みんなで元気になろうと花火を上げたのですが、その花火をテーマにしたカクテルなんです。

岡元 わたしたち資生堂も亡くなられた方たちには言葉もありませんが、復興に向けて頑張っている被災者の方たちを励まそうと、自らも被災者でありながら避難所や施設で被災者をサポートする活動に従事している6人の女性をモデルにヘアメーキャップをして差しあげたのです。

シマジ みました、みました。資生堂汐留オフィスの1Fホールにその写真が飾られていましたね。

岡元 そうです。「東北のミューズ<女神>たち」と題しまして、仙台を皮切りに大阪・東京・パリを巡回しました。

立木 それはいい企画だね。女性にお化粧をしてあげると元気になっただろうね。 しかも岡元さんにメーキャップされたらなおのことだよね。

岡元 選ばれた6人の女性たちにメーキャップをしてさしあげるとみるみるお元気になり、みなさまが輝けるミューズになっていったんです。わたしはこの仕事をしてよかったと本当に思いました。

シマジ 岡元さんに魔法をかけられてモデルのようになっていく自分を発見して感激した様子が目に浮かびますね。どんな励ましの言葉よりも力強かったでしょう。

岡元 ミューズにえらばれたある方は福島県の大熊町で梨園を営んでいましたが、3月11日の夜、原子力緊急事態宣言が発令されたのをラジオで聞いて、早くお嬢さんを逃がさないとと思って家をでたそうです。そのまま一度も戻っていないといっておられました。わたしたちは被災地の女性にきれいになってもらって少しでも元気を取り戻してもらいたかったのです。メーキャップをしているうちにみなさんのお顔がみるみる明るくなっていくのをみているとわたしもうれしくなりました。ある方は被災後、いわき市の実家、会津若松の親戚の家、坂下の体育館など、6カ所も住まいを転々となさったそうです。現在は会津若松の借り上げのアパートで娘さんと暮らしていて、旦那さんとは離れ離れの生活をしているそうです。

立木 岡元さんのメーキャップで被災者の女性たちが笑顔を取り戻したんだね。「東北のミューズ<女神>たち」っていいタイトルだね。美しくメーキャップされた6人をみた人たちも元気を取り戻しただろう。

シマジ 化粧がいかに女性を元気にし内面の美しさを引き出すものか理解していただいたでしょう。それは男性にもいえますね。わたしは毎朝ヒゲを剃って歯を磨いてシャワーを浴びた後、SHISEIDO MENのシリーズを使っていますが、こんなに肌がツヤツヤしている自分をみて「ようし、今日も頑張るぞ」と元気が湧いてきます。マツモト、明日から今日いただいたSHISEIDO MENを使ってごらん。おれのように年齢不詳になってくるよ。

マツモト はい、やってみます。

シマジ それで1ヶ月後、仙台のデパートのSHISEIDOの売り場に行って再びチェックしてもらってごらん。もしかするとCにランクアップしているかもしれない。それにこのリップトリートメントもスグレモノなんだ。東北はこれから乾いた木枯らしが吹く季節だから、そんなときこれは役に立つよ。

マツモト ありがとうございます。ぼくもシマジさんを見習って年齢不詳になりたいです。

シマジ 何いっているんだ。一関の役所広司は十分年齢不詳じゃないか。

立木 もっとCMのモデルの仕事が回ってくるぞ。

シマジ 「東北のミューズ<女神>たち」展は、衣装がみんな一緒の白でしたね。

岡元 それは彼女たちは瓦礫のなかに咲く一輪の白い花のように、こころを和ませて温かい気持ちにしてくれる存在だと思ったのです。人に優しくできるのはその人が強くなければ出来ません。

立木 うん、ハードボイルド作家のレイモンド・チャンドラーもいっているね。「強くなければ生きていけない。やさしくなければ生きていく資格がない」と。

岡元 そうなんです。だからそんな東北の女性の強さとやさしさをシンプルに表現したいと思いまして、口紅をポイントにミューズのイメージの白い衣装をお一人お一人にご用意したんです。

シマジ やっぱりメーキャップのカリスマはいうことがちがうね。

マツモト モデルも被災者や被災者を支えて活躍している 6人の女性を選んだというところがいいですね。

岡元 わたし自身、人を元気に前向きにするという化粧の力を再認識しました。モデル自身も被災者で最初は戸惑いがちでしたが、メーキャップが進むにつれて次第に表情が明るくなり感極まって涙ぐむ方もいらっしゃいました。写真もスタジオでは白い衣装を着てもらいましたが、それぞれの職場や外の撮影では私服でお願いしました。

シマジ それは完璧なお膳立てですね。畏れいりました。

岡元 事実、お母さんがお化粧してきれいになると子供たちは笑顔になります。お化粧は周りの人たちをも幸せにする波及効果があるんです。

シマジ たしかモデルのなかに外国の方もいましたね。

岡元 はい、フィリピンから日本にきて31年住んでおられるその方は、宝石が大好きで働きながら少しずつ買っていたそうです。それが津波に家ごと流されてしまい悲しく悔しいけれど、近所には津波で亡くなった人がいっぱいいて、こちらのほうがもっと悲しいことだと語っていました。わたしの宝石は海のお魚たちが身につけて泳いでいるって思うようにしているんですよ、といってました。

シマジ 詩人みたいなことをいいますね。

岡元 お化粧は気負わず頑張らずです。ちょっとメーキャップして気持ちが明るくなったらいいんです。

立木 やっぱり美容の世界でトップに立つ岡元さんはいっていることがちがいます。

シマジ 岡元さんはどうしてメーキャップがうまくなったと思いますか。

岡元 わたしは子供のころ塗り絵が大好きでした。

シマジ なるほど、相手のお顔はカンバスみたいなものなんでしょう。岡元さんは絵の具の使い方が上手なんですね。マツモト、岡元さんに色味のいい美味しいカクテルを作ってくれないか。

立木 おれも飲みたい。

マツモト かしこまりました。

資生堂ビューティートップスペシャリスト 岡元美也子

98年より5年間、ニューヨークに駐在。NYやパリコレクションでは、多くのメゾンでメークチーフを務めデザイナーから厚い信頼を得ている。モードの最先端で培ってきたファッションとビューティーのセンスは、多くの女優・タレントからの評価も高く、彼女のファンは多い。
> 公式サイトはこちら

今回登場したお店

アビエント
岩手県一関市大手町7-41 1F
>公式サイトはこちら (外部サイト)

今回登場したアイテム

シマジ式SHISEIDO MENの使い方基本講座。
男に生まれて鏡で自分の顔をしげしげみることは、21世紀の男の正しい生き方である。

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